2020年07月09日

『海底の支配者 底生生物』清家弘治




 地球の表面の7割を占める海底に穴を掘って暮らす底生生物。波乗りして移動する底生生物とは? 東日本大震災前後で三陸の海底生態系に何が起きた? 巣穴研究の最前線に立つ著者が、底生生物の生態と海底の神秘を綴る。

 地表の7割を占める海底に穴を掘って暮らすのがゴカイやユムシなどの底生生物だ。そして近年まで謎につつまれてきた彼らの生態を「巣穴」を解析することで明らかにしてきたのが著者である。サーフィンのごとく波乗りして移動する底生生物とは? 水深1000mを超える海底の巣穴に樹脂を流し込んで判明した事実とは? 東日本大震災前後で三陸の海底生態系に何が起きた? 世界初となる発見を重ね、文部科学大臣表彰・若手科学者賞を受賞した著者が驚くべき、そしてどこかユーモラスな底生生物の生態と海底の神秘を綴る。この世界は、彼らの巣穴で満ちている!

 本書は、海底生物の研究者による、波打ち際から深海まで、海の底の更に下で暮らす、カニ、エビ、ウニなどの海底に生息している底生生物のユニークな生態を紹介した一冊。海底生物と海底地質学を専門とし、巣穴研究の最前線に立つ著者が、自身の研究の成果、研究の過程で経験したことなどと共に、底生生物の謎と魅力に迫っています。

【満足度】 ★★★★
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2020年07月08日

『喫茶店の時代 あのときこんな店があった』林 哲夫




 作家・芸術家たちが集った喫茶店。そのはじまりから、明治、大正、昭和の変遷と、時代を彩ったカフェーを、さまざまな資料とともにふり返る。時代と喫茶店文化のコレクション。

 本書は、カフェー、ミルクホール、喫茶店……時代の片隅で、つねに芸術家や作家たちを魅了してきたそうした店々の記憶を、小説や随想、詩のなかにみつけては丹念につなぎあわせた、時空を超えた喫茶店コレクション。喫茶店文化の歴史と、その歴史を作った数々の店が語られますが、喫茶店文化の歴史は興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2020年07月07日

『古関裕而の昭和史 国民を背負った作曲家』辻田真佐憲




 日本人の欲望に応え続けた昭和のヒットメーカー・古関裕而。彼はいかなる人物だったのか、その作品は昭和史にいかなる役割を果たしたのか。古関裕而の生涯と激動の昭和を気鋭のメディア研究者が描きつくす。

 軍歌「露営の歌」、早稲田大学の「紺碧の空」、読売ジャイアンツの「闘魂こめて」、怪獣映画の「モスラの歌」、原爆鎮魂の歌「長崎の鐘」―ジャンルを超えていまも愛唱される5000曲はどのようにして生まれたのか。日本人の欲望に応え続けたヒットメーカー。連続テレビ小説「エール」のモデルになった80年の生涯。

 本書は、NHK連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルとなった、昭和を代表する大作曲家である古関裕而氏の評伝本。古関裕而氏を通して、昭和史としても書かれており、「六甲おろし」「モスラの歌」「オリンピック・マーチ」などはもちろん、社歌や校歌など、その団体に所属する人たち以外にはほぼ知られることのない曲を手がけていた事実にもちゃんとページを割いていて、興味深い一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2020年07月06日

『クスノキの番人』東野圭吾

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 解雇された職場に盗みに入り逮捕された直井玲斗は、弁護士費用を支払ってくれた伯母から、クスノキの番人をするように命じられる。そのクスノキに祈れば、願いが叶うと言われていて…。

 本書は、クスノキを巡る家族愛、そして認知症が縦糸として描かれる作品。工場の非正規労働者だった主人公・玲斗が、クビになった工場に盗みに入るも逮捕され、会ったこともない伯母・千舟に引き取られ、玲斗は千舟から「願い事が叶う」と言われているパワースポット・月郷神社の「クスノキ」の番人をしろと命じられる。どうもこのクスノキには隠された秘密、超常的な力が本当にあるようで、新月と満月の夜を中心に、夜な夜な人が「予約制」で訪れる。クスノキの持つ力とはいったいどんなものなのか、なぜ玲斗はクスノキの番人を託されたのか、フラフラと生きてきた玲斗は自分の生きる道を見つけることができるのだろうか……。クスノキの前で交錯する様々な人生は読み応えある作品で、個人的には映画化しても面白いと思う物語でした。

【満足度】 ★★★★☆
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2020年07月04日

『告解』薬丸 岳

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 飲酒運転中、1人の老女の命を奪ってしまった大学生の籬翔太。懲役4年を超える実刑を下された翔太を、被害者の夫は「ある思い」を胸に待ち続け…。贖罪の在り方を問う物語。『小説現代』掲載を大幅に加筆・修正し単行本化。

 飲酒運転中、何かに乗り上げた衝撃を受けるも、恐怖のあまり走り去ってしまった大学生の籬翔太。翌日、一人の老女の命を奪ってしまったことを知る。自分の未来、家族の幸せ、恋人の笑顔…。失うものの大きさに、罪から目をそらし続ける翔太に下されたのは、懲役4年を超える実刑だった。一方、被害者の夫である法輪二三久は、“ある思い”を胸に翔太の出所を待ち続けていた。贖罪の在り方を問う、慟哭の傑作長編。

 本書は、罪を犯した青年の葛藤と再生の物語。交通事故によってある日突然加害者となってしまった青年と、突然大切な人の命を奪われた被害者家族についてが描かれ、現代社会特有ともいえるSNSの問題や認知症も絡み、リアルで読み応えがありました。著者らしい作品です。

【満足度】 ★★★★
ラベル:告解 薬丸 岳
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2020年07月03日

『紅蓮館の殺人』阿津川辰海

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 高校の合宿をぬけ出し、隠棲した文豪の館を訪れた田所と葛城。館で仲良くなった少女が死体で発見され、葛城は真相を推理しようとするが、館には山火事が迫る。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ。

 山中に隠棲した文豪に会うため、高松の合宿をぬけ出した僕と友人の葛城は、落雷による山火事に遭遇。救助を待つうち、館に住むつばさと仲良くなる。だが翌朝、吊り天井で圧死した彼女が発見された。これは事故か、殺人か。葛城は真相を推理しようとするが、住人と他の避難者は脱出を優先するべきだと語り…。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ。

 物語は、山奥の推理作家の館を目指し山を登り始めた高校生2人組が山火事に会い、逃げ込んだ館には昏睡状態の作家と息子家族、そして同じく逃げてきた数名が集まり、殺人事件が起こる…というストーリー。謎解きは論理的かつ伏線も良かったですが、様々な要素が詰め込まれすぎていて、それが逆にマイナスとなっていたのがもったいないと感じるミステリでした。

【満足度】 ★★★
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2020年07月02日

『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない!』菊地高弘




 地元の冷ややかな視線や心ない声を浴びせられながら、奮闘する彼らは、どのような日々を過ごしているのか。地元の高校生と何が違うのか。高校野球界で「ガイジン部隊」と呼ばれる越境入学者たちの実態を伝える。

 15歳にして親元を離れ、甲子園を目指す野球留学生たち。強豪校ゆえの激しいポジション争いや、慣れない土地での寮生活に悪戦苦闘しながら過ごす日々。郷土を思う一部の過度なファンから、気持ちよく応援してもらえないこともあるが、そんな地域文化とも向き合いながら、やがて人間としても成長していく……。『野球部あるある』『下剋上球児』で高校球児をハートフルに描いてきた菊地高弘氏が、野球留学生の奮闘の日々を、愛情を込めてお届けする青春物語。

 本書は、野球留学生の奮闘の日々を、愛情を込めてお届けする青春物語。全国の強豪校の中で、野球留学生を多く抱える高校を中心に全8章で構成されており、八戸学院光星(青森)、盛岡大付(岩手)、健大高崎(群馬)、帝京(東東京)、滋賀学園(滋賀)、石見智翠館(島根)、明徳義塾(高知)、創成館(長崎)の順に、指導者や選手・OBに取材し、その日常や暮らしぶりを、イラストを交えながらコミカルに紹介されています。

【満足度】 ★★★★
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2020年07月01日

『エンジョイ!クラフトビール 人生最高の一杯を求めて』スコット・マーフィー




 いつものビールから飛び出して飲んだことのないスタイルのクラフトビールを飲んでみよう! スタイル、歴史や原料、造り方や楽しみ方、料理とのペアリングまで、クラフトビールの情報が満載。全国のブルワリーリストも収録。

 本書は、クラフトビールについてイラストを中心に、分かりやすく紹介した一冊。世界のクラフトビールを飲み歩いた著者のクラフトビール愛を強く感じますし、スタイル、歴史や原料、造り方や楽しみ方、料理とのペアリングまで、ビールをとことん知りたい、楽しみたい方にはオススメのクラフトビール本です。

【満足度】 ★★★★
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2020年06月30日

『暗黒残酷監獄』城戸喜由

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 人妻との不倫に暗い愉しみを見いだす高校生・椿太郎。ある日、姉が十字架に磔となって死んだ。彼女が遺した「この家には悪魔がいる」というメモの真意を探るべく、家族を調べ始めた椿太郎は、彼らの残酷な秘密を知ることに…。

 同級生の女子から絶えず言い寄られ、人妻との不倫に暗い愉しみを見いだし、友人は皆無の高校生・清家椿太郎。ある日、姉の御鍬が十字架に磔となって死んだ。彼女が遺した「この家には悪魔がいる」というメモの真意を探るべく、椿太郎は家族の身辺調査を始める。明らかとなるのは数多の秘密。父は誘拐事件に関わり、新聞で事故死と報道された母は存命中、自殺した兄は不可解な小説を書いていた。そして、椿太郎が辿り着く残酷な真実とは。

 本書は、第23回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。友人は皆無の高校生の清家椿太郎が主人公。ある日、姉の御鍬が十字架に磔となって死んでしまい、彼女が遺した「この家には悪魔がいる」というメモの真意を探るべく、椿太郎は家族の身辺調査を始める……ミステリですが、様々な要素が詰め込まれすぎていて、伏線や謎解きは楽しめるものの、強烈すぎるキャラクターの独特すぎる言い回しが好き嫌いが分かれるとは思いますが、次作も読んでみたい作家です。

【満足度】 ★★★☆
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2020年06月29日

『わたしはナチスに盗まれた子ども 隠蔽された〈レーベンスボルン〉計画』イングリット・フォン・エールハーフェン/ティム・テイト




 ナチスが純血アーリア人の子どもを生産するべく作った組織〈レーベンスボルン〉。自分がそこからもらわれてきた里子だと知った著者は、自分のルーツをたどる旅に出る…。〈レーベンスボルン〉の全貌と出自の真相を綴る。

 終戦後のドイツ。少女イングリットは両親から冷遇されてきた理由が、自分の素性にあると知る。彼女は里子…それもただの里子ではなく、ナチスが純血アーリア人の子どもを“生産”するべく作った組織“レーベンスボルン”からもらわれてきた子どもだったのだ。本当の名前はエリカ・マトコ。しかしそれ以外に、自分についてわかることは一つもなかった。やがて60歳を目前にしたイングリットは、ドイツ赤十字や歴史学者の協力を得て、自分のルーツをたどる旅に出る。謎多き“レーベンスボルン”の全貌と、筆舌につくしがたい出自の真相が明らかに。

 本書は、著者自らが長年にわたり自らの出自の真相を辿ったノンフィクション。ナチスドイツが推進したレーベンスボルン計画によって幼いころに拉致された外国出身者の著者が、どこで生まれ、どういう経緯でドイツに来ることになったのか、そして実の両親や家族はその後どうなったのかを、20年にわたって著者が探し続けた記録でもありますが、ナチスドイツの負の歴史や出生の秘密は、悲劇でもあり、数多くの謎と歴史の事実が印象に残る一冊です。

【満足度】 ★★★★☆
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