2023年06月03日

『特殊清掃人』中山七里

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特殊清掃人 [ 中山七里 ]
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 誰もいない部屋にこそ、嘘のない生きざまが現れる…。特殊清掃業者に日々、押し寄せる様々な依頼。彼らの仕事をとおして、孤独死した人々が抱えていた事情が浮かび上がる。『web TRIPPER』連載を大幅に加筆修正。

 誰もいない部屋にこそ、嘘のない生きざまが現れる。20代無職の男性、30代独身女性、40代ベンチャー企業家、80代の資産家。孤独死した人々が抱えていた様々な事情が浮かび上がる…『護られなかった者たちへ』の著者が贈るヒューマン・ミステリー。

 本書は、特殊清掃人の仕事を通して、死者が生前に抱えていた状況が見えてくるヒューマンミステリ。亡くなった人の部屋の掃除をする仕事を題材に、4つのケースが描かれる連作集でもありますが、清掃後に事象からそれぞれの事情を浮かび上がらせる展開も興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2023年06月02日

『独占告白 渡辺恒雄 戦後政治はこうして作られた』安井浩一郎




 総理大臣禅譲密約書の真相、日韓国交正常化交渉と「極秘合意メモ」スクープ、沖縄返還の裏側、歴代総理の素顔…。権力の中枢を目の当たりにした「最後の証人」渡辺恒雄が戦後日本の内幕を語る。NHKスペシャル番組を書籍化。

 1945年、19歳で学徒出陣により徴兵され、戦争と軍隊を嫌悪した渡辺。政治記者となって目にしたのは、嫉妬が渦巻き、カネが飛び交う永田町政治の現実だった……。「総理大臣禅譲密約書」の真相、日韓国交正常化交渉と沖縄返還の裏側、歴代総理大臣の素顔。戦後日本が生んだ稀代のリアリストが、縦横無尽に語り尽くす。

 本書は、BS1スペシャル『独占告白 渡辺恒雄〜戦後政治はこうして作られた〜昭和編』と、NHKスペシャル『渡辺恒雄 戦争と政治〜戦後日本の自画像〜』を元に、両番組をディレクターとして制作した著者が書き下ろしたノンフィクション。歴代総理の素顔、日本外交の裏側、政治家たちの密約と裏切り…など、権力の中枢を目の当たりにした最後の証人が語る戦後日本の内幕は興味深く、昭和時代の政局や自民党中枢の権力争いは読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★☆
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2023年06月01日

『新聞は偉そうに嘘をつく』高山正之




 茶番劇と化した記者会見。外国紙を翻訳するだけの特派員。失言や言葉尻を追い回して「権力の監視」とは笑止千万。『週刊新潮』連載コラムから30本を厳選し、その姑息な欺瞞を暴く。

 茶番劇と化した記者会見。民主主義に反してでも自らの利益を守ろうとする二枚舌。事実を隠蔽し、美談をでっち上げるこの業界には倫理規定が必要だ。凶弾に倒れた元首相への下衆の勘繰りから「性教育」の歪め方、記者の指詰め伝説まで。20年間、1000回超の名物連載から、厳選した30本で新聞が隠す欺瞞を暴く!!

 本書は、元産経新聞記者で、中東・アジアでの豊富な経験を始め、多様な見識を併せ持つ著者が「週刊新潮」で書いたコラム「変見自在」を再編集したもの。朝日新聞への批判内容が多かったですが、興味深いコラムでもありました。

【満足度】 ★★★★
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2023年05月31日

『世界インフレと日本経済の未来 超円安時代を生き抜く経済学講義』伊藤元重




 「安い日本」で経済活性化する秘策、日本人の賃金を上げるために必要なこと、グリーン投資の重要性…。加速・複雑化する現代経済の要点を整理し、平易に解説する。『日経MJ』『静岡新聞』連載に加筆・修正。

 世界インフレ、日本の円安・物価高、ウクライナ危機…経済学者の伊藤元重氏は、これら既存の常識では予測できない現代の社会情勢を「事実は小説より奇なり」と表現する。だが同時に「予測不可能な未来を見通すためには、経済学の力が必要だ」とも語り、本書ではさまざまな経済学の視点から、これら「難問」の解明に挑む。読めば加速・複雑化する社会情勢が理解でき、日本再興の「勝機」が見えてくる!

 本書は、経済の現場を知る東京大名誉教授でもある著者が、動揺する世界経済と日本の進む道をマクロ経済の視点から解説したもの。背景にある円安やサプライチェーンリスクなどの問題を、世界情勢とともに分析しており、その上で、日本は新産業への投資が必要になると指摘しており、日本経済の現状が分かりやすく書かれています。

【満足度】 ★★★★
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2023年05月30日

『数学の女王』伏尾美紀

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 博士号を持つ警察官・沢村依理子は、道警本部の警務部に異動となる。新札幌の新設大学で爆破事件が発生し、沢村は突然捜査一課配属に。公安との駆け引きの中で進めていく捜査。しかも沢村は班長を任されることに…。

 博士号を持つ警察官・沢村依理子は、道警本部の警務部に異動となる。監察官室に目をつけられていた沢村は、報復人事を疑う。そんな中、新札幌の新設大学で爆破事件が発生し、沢村は突然捜査一課配属となるが、ただし警務部付。この人事の意味とは。いつまで経っても進展がない爆破事件。公安との駆け引きの中で進めていく捜査。しかも沢村は班長を任されることに。新天地でまだぎこちない中、新参者の班長に対して心中複雑な班員たちをまとめられるのか。爆破事件の犯人の目的―それは、女性研究者として博士課程まで進み、アカハラによって恋人を亡くすという経験をした沢村だからこそたどり着けるものだった。

 本書は、第67回江戸川乱歩賞受賞作『北緯43度のコールドケース』のシリーズ2作目。新設の大学で発生した爆破事件に、主人公で博士号を持つ異色の警察官・沢村依理子が挑む物語ですが、警察と公安との確執やジェンダーバランスの問題なども展開に絡め、ドラマを見ているようなサスペンスです。

【満足度】 ★★★★
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2023年05月29日

『裂けた明日』佐々木譲

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裂けた明日 [ 佐々木 譲 ]
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 内戦下の日本。追われる母娘に出会った元公務員の信也は、2人を安全圏まで送り届けようと決断。役所勤めの経験を生かし、意外なルートで軍事境界線を突破し…。『Foresight』連載を単行本化。

 定年後の嘱託も辞め、独り暮らしの沖本信也。そこに幼い少女を連れた女性が現れた。逃避行をしている、という。テロと銃撃が頻発する日本で、信也は二人を守り抜くと決断した。役所勤めの経験を生かし、意外なルートで軍事境界線を突破、あらゆる危機を回避していく―。なぜそこまで身をかけるのか? 銃撃音の真っ只中で絞り出した言葉が、嗚咽と血とともにほとばしる!圧巻の幕切れに心が震える、ベテランの新たなる高み。

 本書は、南北に分断して内戦状態の近未来の日本を舞台に、昔の恋人の娘とその子供を避難させる元市役所職員を描いた作品。物語では、淡々と逃避行が描かれますが、背景描写が少なく、物足りなさを感じました。

【満足度】 ★★★
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2023年05月27日

『猿と人間』増田俊也

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 狂暴化した850頭の猿が襲いかかる!!凶悪な人喰い猿の群れを前に、鴨猟にやってきた父子が立ち向かう術は……。戦慄の超パニック・サバイバル長編!

 ジビエレストランを経営する父・誠一郎に連れられ、人里離れた集落に狩猟にやってきた高校一年生の加藤英輔。両親は離婚しており、母親は来月再婚する。離れて暮らしている父と、最後の親子水入らずの時間を過ごすなか、英輔は森に何か不穏な影を感じていた。やがて忍び寄る猿・猿・猿!ひときわ体の大きい、顔の黒い猿をボスとした百匹以上の群れは狂暴化し、二人に襲いかかり……!

 本書は、狂暴化した850頭の猿が人間に襲いかかるサスペンス。ページをめくるたびに人間と猿の戦いの緊迫度が高まり、手に汗握る展開は迫力満載です。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、猿軍団の襲撃を、どういうふうに防ぎ、どういうふうに戦ったかは読み応えがあり、面白さで一気に読まされた作品です。

【満足度】 ★★★★
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2023年05月26日

『切腹屋』岩井三四二

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 江戸時代の裁判「公事」。その当事者に手と知恵を貸す商売・公事師の駆け出しの辰次は、松代藩山手村から江戸に公事に来た村人代表の3人に、負けたら切腹してみせると大見得を切り、大金30両の仕事を引き受けるが…。

 江戸時代に裁判は公事とよばれた。公事の当事者に手と知恵を貸す商売・公事師の駆け出し・辰次は、松代藩山手村から江戸に公事に来た村人代表の伊左衛門、三平、善六に、負けたら切腹してみせる、と大見得を切り、大金三十両の仕事を引き受ける。辰次が事情をよく聞けば形勢は山手村に圧倒的に不利で、しかも相手方の坂田町には謎の凄腕公事師・唐物屋がついているという。このままじゃ公事に負けて本当に切腹だ!世話焼きの昔馴染み・おつうに尻を叩かれたり、元大奥の奥女中のばあさん・藤波の手を借りたり、あの手この手で必死になる辰次に逆転の目はあるのか?

 本書は、公事宿を舞台に描くエンタメ時代小説。物語は今で言う弁護士ともいえる公事師が、負けたら切腹する約束をさせられて奮闘する姿が面白く描かれた作品。テンポの良い展開で登場人物のキャラ設定もストーリも良くできていて楽しめました。

【満足度】 ★★★★
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2023年05月25日

『看護師に「生活」は許されますか 東京のコロナ病床からの手記』木村映里




 「Covid-19、通称新型コロナウイルス感染症という言葉をはじめて耳にしたのは、2019年の年末くらい、テレビのニュース番組を眺めている時でした」平穏だった日常はやがて逼迫する医療現場に押し流される。混乱する現場、そして新興感染症には常につきまとう医療従事者への差別、自分自身も感染……。Covid-19、通称新型コロナウイルス感染症、その最前線を経験した医療従事者が思いを綴った手記!

 「新興感染症はいつも、医療従事者への差別とセットだ」平穏だった日常はやがて逼迫する状況に押し流される……ささくれ立つ心、SNSや報道へのとまどいと動揺、恋人や家族への不安、医療現場の崩壊、そして自身も感染。新型コロナウイルス感染症、その最前線を経験した現役の医療従事者が思いを綴った手記!

 本書は、コロナ禍の最中に看護師として医療に従事していた著者による手記。コロナ禍初期、世間の人々から受けた差別、家族に保菌者(注:コロナウイルスは菌ではない)扱いされて看護師を辞めさせられてしまった同僚、次第に形成されていった医療関係者への重すぎる賛辞や過度な期待、そして、SNSで形成されていった共感の輪と、影のようにまとわりついてくる、反医療的なスタンスを持った人々の姿……。これらの現実が、現役看護師としての歩みと共に真摯に綴られ、発言のニュアンス一つで一般の人たちに誤解を与えてしまう恐れや、コロナ禍という未曾有の事態をどのように伝えていくべきかという著者の葛藤が吐露され、コロナ禍の看護師のリアルな心情が綴られています。

【満足度】 ★★★★☆
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2023年05月24日

『君に光射す』小野寺史宜

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君に光射す [ 小野寺 史宜 ]
価格:1,815円(税込、送料無料) (2023/5/24時点)




 僕は3年前に小学校の教師を辞めた。昼の世界から逃げ込むようにして選んだ仕事は夜勤の警備員。他人と深く関わらずに生きようと決めていたはずだった。でも、勤務先で置引未遂を犯した10歳の少女との出会いが、立ち止まっていた僕を動かして……。自分を犠牲にしてまで誰かを助けることは愚かなことだろうか?

 教師をやめ夜勤の警備員になってから3年。立ち止まっていた僕を動かしたのは、空腹から置引未遂を犯した10歳の少女との出会いだった。挫折を知った青年の新たな一歩を描く心あたたまる感動長編。

 物語は、ショッピングモールで警備員をしている元小学校教師の主人公が、勤務先で置引未遂を犯した10歳の少女との出会いから、本来の自分を取り戻していくストーリー。主人公の再生物語でもありますが、教師を退職した理由などが曖昧で、淡々と描かれているところが物足りなさを感じました。

【満足度】 ★★★
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