一級建築士の青瀬が設計した新築の家。しかし、Y邸に越してきたはずの家族の姿はなく、一脚の「タウトの椅子」だけが浅間山を望むように残されていた。Y邸で何が起きたのか? 一家の行方は…。『旅』連載を単行本化。
横山ミステリー史上、最も美しい謎。熱く心揺さぶる結末。『64』から6年。平成最後を飾る長編、遂に登場。一級建築士の青瀬は、信濃追分に向かっていた。たっての希望で設計した新築の家。しかし、越してきたはずの家族の姿はなく、ただ一脚の古い椅子だけが浅間山を望むように残されていた。一家はどこへ消えたのか? 伝説の建築家タウトと椅子の関係は? 事務所の命運を懸けたコンペの成り行きは? 待望の新作長編ミステリー。
物語は、建築士の主人公を通して、住むとは何か、家族とは何かという身近なテーマで三つの家族の心の機微を描いた作品。著者ならではの警察小説ではありませんが、「貴方の住みたいと思う家を建ててください」とクライアントから理想的な注文を受け、思うままに作った北からの採光が特徴である屋敷は「平成の200邸」に選ばれるも、竣工した屋敷には誰も住んでいる気配がなく、その謎に迫る物語ですが、派手さはないものの独特の臨場感で、改めて家とは何か、家族とは何かを考えさせられた作品です。
【満足度】 ★★★★