解雇された職場に盗みに入り逮捕された直井玲斗は、弁護士費用を支払ってくれた伯母から、クスノキの番人をするように命じられる。そのクスノキに祈れば、願いが叶うと言われていて…。
本書は、クスノキを巡る家族愛、そして認知症が縦糸として描かれる作品。工場の非正規労働者だった主人公・玲斗が、クビになった工場に盗みに入るも逮捕され、会ったこともない伯母・千舟に引き取られ、玲斗は千舟から「願い事が叶う」と言われているパワースポット・月郷神社の「クスノキ」の番人をしろと命じられる。どうもこのクスノキには隠された秘密、超常的な力が本当にあるようで、新月と満月の夜を中心に、夜な夜な人が「予約制」で訪れる。クスノキの持つ力とはいったいどんなものなのか、なぜ玲斗はクスノキの番人を託されたのか、フラフラと生きてきた玲斗は自分の生きる道を見つけることができるのだろうか……。クスノキの前で交錯する様々な人生は読み応えある作品で、個人的には映画化しても面白いと思う物語でした。
【満足度】 ★★★★☆