両親を事故で失い、喪失感の中にあった大学生の霜介は、バイト先で水墨画の巨匠・篠田湖山と出逢った。なぜか湖山に気に入られた彼はその場で内弟子にされてしまうが、湖山の孫・千瑛は、それに反発し…。
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気にいられ、その場で内弟子にされてしまう霜介。反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけての勝負を宣言する。水墨画とは筆先から生み出される「線」の芸術。描くのは「命」。はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで回復していく。そして1年後、千瑛との勝負の行方は。
本書は、第59回メフィスト賞受賞作。物語は、大学一年生の青山霜介が、アルバイト先でたまたま遭遇した水墨画の巨匠・篠田湖山に見初められ、内弟子となるところからスタートしますが、水墨画の世界と奥深さが見事に表現されていて、主人公の成長物語でもありますが、展開を読み進むにつれて、水墨画の奥深さに触れることができます。水墨画の魅力が主人公の繊細さと相まってとても素敵な作品でした。
【満足度】 ★★★★☆