東京の救命救急センターで働いていた62歳の医師・咲和子は、故郷の金沢に戻り訪問診療医になり、現場での様々な涙や喜びを通して在宅医療を学んでいく。一方、家庭では、自宅で死を待つだけとなった父から安楽死を望まれ…。
東京の救急救命センターで働いていた、62歳の医師・白石咲和子は、あることの責任をとって退職し、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療の医師になる。これまで「命を助ける」現場で戦ってきた咲和子にとって、「命を送る」現場は戸惑う事ばかり。咲和子はスタッフたちに支えられ、老老介護、半身麻痺のIT社長、6歳の小児癌の少女……様々な現場を経験し、学んでいく。家庭では、老いた父親が骨折の手術で入院し、誤嚥性肺炎、脳梗塞を経て、脳卒中後疼痛という激しい痛みに襲われ、「これ以上生きていたくない」と言うようになる。「積極的安楽死」という父の望みを叶えるべきなのか。咲和子は医師として、娘として、悩む。
本書は、現役医師でもある著者が、現代医療制度の問題点や、尊厳死や安楽死などのタブーに切りこんだ作品で、日本の長寿社会にスポットを当て、現代医療制度の問題点やタブーに正面から向き合う医師や患者、その家族の姿を描き出した物語。東京の救命救急センターで働いていた62歳の女医・白石咲和子が故郷の金沢で法門診療医になり、現場での様々な涙や喜びを通して在宅医療の在り方を模索していきますが、在宅医療の大変さ、安楽死問題、家族の精神面でのサポートなど、現実の終末医療が描かれ、色々と考えさせられる作品でもありました。
【満足度】 ★★★★☆