あの子は死んだ。大量のドーナツに囲まれて。他人の視線と自分の理想。少女の心を追いつめたものとは? 「美容整形」をテーマに、容姿をめぐる固定観念をあぶりだす心理ミステリ。『小説すばる』連載を加筆修正し、単行本化。
美容クリニックに勤める医師の橘久乃は、久しぶりに訪ねてきた幼なじみから「やせたい」という相談を受ける。カウンセリングをしていると、小学校時代の同級生・横網八重子の思い出話になった。幼なじみいわく、八重子には娘がいて、その娘は、高校二年から徐々に学校に行かなくなり、卒業後、ドーナツがばらまかれた部屋で亡くなっているのが見つかったという。母が揚げるドーナツが大好物で、それが激太りの原因とも言われていた。もともと明るく運動神経もよかったというその少女は、なぜ死を選んだのか……? 「美容整形」をテーマに、外見にまつわる自意識や、人の幸せのありかを見つめる、心理ミステリ長編。
本書は、美容整形をテーマに、人の心に潜む容姿への思い込みを描きだし、一人の少女の自殺の謎を追う心理ミステリ。美容整形をテーマに人間、特に女性の容姿をめぐる固定観念を炙りだした、著者らしい作品です。
【満足度】 ★★★★