2021年02月27日

『自分の頭で考える日本の論点』出口治明




 経済成長は必要か、ネット言論は規制すべきか…。ベンチャー企業の創業者であり大学学長である著者が、私達が直面する重要な論点を紹介しながら、自分はどう判断するかの思考プロセスを解説。知識と考える力が同時に身につく。

 玉石混淆の情報があふれ、専門家の間でも意見が分かれる問題ばかりの現代社会。これらを自分で判断し、悔いのない選択ができるようになるには、どうしたらいいのか。「経済成長は必要か」「民主主義は優れた制度か」「安楽死を認めるべきか」等々。ベンチャー企業の創業者であり大学学長、そして無類の読書家である著者が、私たちが直面する重要な論点を紹介しながら、自分はどう判断するかの思考プロセスを解説。先の見えない時代を生きるのに役立つ知識が身につき、本物の思考力も鍛えられる、一石二鳥の書。

 本書は、新型コロナ、LGBT、ベーシックインカム、少子化問題、移民問題、年金問題など、日本における様々な社会問題を解説したもの。様々な社会問題を改めて自分なりに考えるポイントも分かり、問題の概要と解説がとても分かりやすい一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月26日

『新型コロナとワクチン知らないと不都合な真実』峰宗太/山中浩之




 新型コロナを冷静に、淡々と迎え撃とう。「知らないと不都合」なウイルス、ワクチンの知識に絞り、ウイルス免疫学の専門家と素人の対話を通して、自分の頭で考える手がかりを提供する。『日経ビジネス電子版』掲載を加筆。

 「新型コロナワクチン」の接種開始を前に、その効果とリスクを巡って議論が盛り上がってきました。ツイッターで5万人のフォロワーを持つ米国研究機関在籍の若手ウイルス免疫学者、峰宗太郎先生が、対話形式でとっても分かりやすく、そして時には辛辣に、新型コロナと人間の免疫系、そしてワクチンを巡るさまざまな問題について語ります。メディアやネットの情報に踊らされず、パニックを起こさず、冷静に自分の頭で判断するための科学的トピックが満載です。

 本書は、ウイルス、ワクチンの基礎から新型コロナ対策の考察、PCR検査の概要と限界、使い方に至るまで説明についてなど、新型コロナウイルスについて分かりやすく説明されています。またメディアの様々な情報とどう付き合っていくのか、自分で考える大切さについて非常に共感できましたし、ウイルスに関しての知識は読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月25日

『自衛隊は市街戦を戦えるか』二見 龍

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 戦車だけじゃ日本は守れない。「新しい戦争」に対応せよ! 時代錯誤の突撃訓練、独自の文化・銃剣道、銃の取り扱い方も知らない隊員たち…。「最強の部隊」を追求した元自衛隊幹部が明かす組織の内情と未来への提言。

 軍事費世界第8位、軍事力では世界第5位とも言われる日本。だが、陸上自衛隊の真の実力とは? サイバー戦に情報戦が加わった「ハイブリッド戦争」の時代に、自衛隊は何を目指すべきか。「最強の部隊」を追求した元自衛隊幹部が明かす組織の実情と本心からの提言。

 本書は、元陸将補の著者が、サイバー戦に情報戦が加わった「新しい戦争」の時代、主戦場は野外から市街地に移るとみて、陸自に戦法の変革を提言している一冊。著者自身が追求した、第40普通科連隊長在任時のエピソードを交えながら、自衛隊の装備・訓練、組織風土、人材育成などについて、問題点や課題を指摘し、真価を発揮する集団を作っていく道を探っていく内容で、読み手によっては意見も分かれるところとは思いますが、組織のあり方を考える内容でもあり、色々と考えさせられる一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月24日

『図解でわかる 14歳から考える資本主義』インフォビジュアル研究所




 世界の11人に1人が飢える不平等、お金を出す人と働く人、お金がお金を生むからくり、社会的共通資本という視点、貧者のための金融・グラミン銀行…。資本主義について、カラー図版を用いてわかりやすく解説する。

 本書は、「資本主義の理想と現実」「資本主義のできるまで」「資本主義を動かす8つの歯車」「資本主義は何を間違ったのか」「明日の資本主義のために」という全5章で構成された内容で、お金はどうして生まれたのか、貨幣の登場、両替ネットワークといった資本主義の原点から、金利、投資、市場原理など、最低限知っておきたい基礎知識。資本主義がもたらした地球温暖化、貧富の格差の拡大、食の不平等など、学んでおきたい諸問題。新自由主義、グローバル経済、レントシーキング、保護主義、ソーシャル・ビジネス、定常経済など、押さえておきたい単語まで、豊富な図解により分かりやすく解説しています。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月23日

『絶滅危惧個人商店』井上理津子




 個人商店は「町の宝」だ! 食料品、衣類、質屋、銭湯…。チェーン店やアウトレットに負けずに、個人で商売を続ける店を訪ね歩いた記録。店主たちのヒストリーを伝える。『ちくま』連載に加筆・編集して単行本化。

 本書は、著者が外観や客あしらいからその店と通底する心意気の店に違いないと踏んだ個人商店19店を丹念に取材し、各店と店主のヒストリーに加え、「今」の店模様が綴られた一冊。大型店や通販に押され、苦境に立つ街の個人商店を取り上げ、商店街が寂しくなるのは全国どこでも見られる光景ではありますが、大型店や量販店にも負けず、元気を個人店で商売をする店主の矜持と背負った歳月の厚みがしっかりと紹介され、今の商売を語る生き生きとした店主と家族の姿は、読んでいても元気をもらえます。地域に根差した商売を長年続ける個人商店を訪ね歩き、店の来歴や店主の人柄、客との交流を細やかに記録していますが、町の歴史も文章から感じられ、それぞれのお店に訪ねたくなりますし、それぞれのお店の価値も伝わり、感動も覚える内容でした。

【満足度】 ★★★★☆
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2021年02月22日

『純喫茶パオーン』椰月美智子

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 創業約50年の「純喫茶パオーン」。その店主の孫である「ぼく」が、小学5年・中学1年・大学1年の頃にそれぞれ出会った不思議な事件と温かな日々を描く。表題作のほか、『静岡新聞』掲載作品や書き下ろしを加えて書籍化。

 創業50年の喫茶店「純喫茶パオーン」。トレイを持つ手がいつも小刻みに震えているのに、グラスにたっぷり、表面張力ギリギリで運ぶ「おじいちゃんの特製ミルクセーキ」と、どんなにお腹がいっぱいでも食べたくなっちゃう「おばあちゃんの魔法のナポリタン」が看板メニューだ。その店主の孫である「ぼく」が小学5年・中学1年・大学1年の頃にそれぞれ出会う不思議な事件と、人生のちょっとした真実。心地の好さに、きっとあなたも通いたくなる。

 本書は、喫茶店「純喫茶パオーン」のマスターの孫である来人の視点を軸に、美味しい料理と不思議な事件を描いたハートウォーミング。ミステリではあるものの、主人公の成長物語でもあり、読後は昔ながらのナポリタンとミルクセーキが味わいたくなります。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月20日

『競馬の“言葉力” 時代を超えた“競馬”伝説の名言・金言』関口隆哉/宮崎聡史

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 ダービー馬のオーナーになることは、一国の宰相になることよりも難しい(ウィンストン・チャーチル)。ヘミングウェイ、菊池寛、武豊など、古今東西、各界の著名人の名言・金言で競馬の魅力と深淵を紹介する。

 本書は、サラブレッドが誕生してから、およそ300年間に渡る「世界競馬史」のなかで紡がれてきた“言葉力”に溢れた名言、金言を紹介したもの。政治家・文化人、生産者、騎手、レース実況……など、競馬ファンなら知る名言が書かれ、その名言の背景を競馬コラムとしてまとめています。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月19日

『競馬にみる日本文化』石川 肇

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 菊池寛、舟橋聖一、井上靖、遠藤周作…。馬と文士の群像劇が織りなす、知られざる競馬文壇史。また、大連や台湾など、今はなき戦時下の競馬場を吉田初三郎のカラー鳥瞰図で巡る。『週刊Gallop』連載等を書籍化。

 舟橋聖一、菊池寛、井上靖、遠藤周作、吉川英治、吉屋信子、寺山修司などの馬主文士たち。樺太、平壌、大連、台湾など、戦時下の東アジアに作られた、今はなき競馬場。馬が登場する文学作品を紹介しながら、大正の広重とうたわれた吉田初三郎の美しい鳥瞰図で旅する、馬と文学の極上エッセイ。

 本書は、文豪達の競馬にまつわるエピソードをまとめたエッセイ集。舟橋聖一、菊池寛、吉屋信子、吉川英治ら作家たちがどのように競馬と親しんだのか、そのエピソードが数多く取り上げられていて、第2部で紹介される「競馬場の地図絵巻」も含めて、まさにタイトルでもある「競馬にみる日本文化」が分かる一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月18日

『コロナ後の世界を語る 現代の知性たちの視線』養老孟司ほか




 新型コロナウイルスは瞬く間に地球上に広まり、多くの生命と日常を奪った。この危機にどう向き合えばよいのか。各界で活躍する精鋭たちの知見を提示し、アフターコロナの新たな世界を問う。『朝日新聞デジタル』連載を書籍化。

 日本の未来はどうなるか……? 養老孟司 ユヴァル・ノア・ハラリ ジャレド・ダイアモンド 福岡伸一 ブレイディみかこ 角幡唯介 東畑開人etc. 22人の論客が示すアフターコロナの針路! 朝日新聞大反響連載を書籍化新型コロナウイルスは瞬く間に地球上に広まり多くの命と日常を奪った。すべての人に平等に降りかかるこの感染症によって、社会は様変わりしてしまった。第2波の懸念も高まり、感染への恐怖が消えない中、私たちは大きく変容する世界をどう捉え、どのように考えればよいのか。現代の知性たちのパースペクティブを通し「コロナ後」を思考する糧を届ける。

 本書は、各界で活躍する精鋭たちの知見を提示し、アフターコロナの新たな世界を問う論考・インタビュー集。様々な立場やジャンルの人達22人がコロナ後の世界を語っており、政治の重要性も強調しています。気づかなかった視点や共感できる視点がありましたが、自分なりの意見をしっかりと持つことの大切さも感じました。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月17日

『患者になった名医たちの選択』塚崎朝子

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 命の限りを知ったあとの人生は輝く…。がん、脳卒中からアルコール依存症まで、さまざまな重い病気にかかった名医18人が選んだ「病気との向き合い方」をベテラン医療ライターがルポ。

 がん、脳卒中からアルコール依存症まで、さまざまな重い病気にかかった名医たちが選んだ「病気との向き合い方」をベテラン医療ライターがルポ。名医たちの闘病法の中に必ず読者が「これだ!」と思う療養のヒントがある。帚木蓬生氏(精神科)や『「空腹」こそ最強のクスリ』の青木厚氏も登場。

 本書は、重い病で死線をさまよった医師たちの闘病体験記。病気を治療する医師が病気療養を行う時にそれぞれが下した選択は様々ですが、いずれも考えさせられるものが多く、他の医師が行う治療に真摯に治療を受け入れる姿勢に感銘を受けました。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月16日

『暗闇にレンズ』高山羽根子

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暗闇にレンズ [ 高山 羽根子 ]
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 高校生のわたしは、親友と監視カメラだらけの街を歩き、携帯端末の小さなレンズをかざして世界を切り取る。かつて母や、祖母や、曾祖母がしてきたように…。時代に翻弄されつつもレンズから世界をのぞき続けた“一族”の物語。

 高校生の「わたし」は親友の「彼女」と監視カメラだらけの街を歩き、携帯端末の小さなレンズをかざして世界を切り取る。かつて「わたし」の母や、祖母や、曾祖母たちがしてきたのと同じように。そうして切り取られた世界の一部は、あるときには教育や娯楽のために、またあるときには兵器として戦争や紛争、弾圧のために用いられた……映画と映像にまつわる壮大な偽史と、時代に翻弄されつつもレンズをのぞき続けた”一族”の物語。

 本書は、『首里の馬』で芥川賞受賞した著者の受賞後の書き下ろし長編作品。物語は、監視カメラがあふれる街角でスマホを操る2人の少女が主役のサイドAと、19世紀末の横浜で娼館・夢幻楼を営む嘉納家に連なる女性達の歴史をたどるサイドBに分かれ、Bの時代が少しずつAに近づいていくという展開となっています。映画と映像にまつわる壮大な偽史と、時代に翻弄されつつもレンズをのぞき続けた一族の物語で、戦争時代の歴史、海外の舞台、女性の4代に繋がる歴史など、永く複雑な物語を紡いでおり、壮大なドラマを見たような感覚の作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月15日

『兄の終い』村井理子

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兄の終い [ 村井理子 ]
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 警察署からの電話で兄の死を知った。周りに迷惑ばかりかける人だった。体を壊し、職を失い、貧困から這いあがることなく死んだ兄を弔うために、元妻、息子、妹である私が集まり…。怒り、泣き、ちょっと笑った5日間の実話。

 本書は、疎遠だった兄の遺体を引き取り、後始末をした怒濤の5日間を克明に綴ったもの。兄の死によって波が立ち、揺れ、溢れそうになる著者の感情が、徐々に平穏を取り戻していく過程を追った、鮮やかで生々しい5日間の記録でもありますが、複雑な家庭事情と兄の子供、地域の人の優しさなど人間模様が本書に詰め込まれています。音信不通の兄に死後整理が書かれており、重いテーマではあるものの、身内の死の対処や処分問題、そして兄の子どもの今後を考え奔走する姿に引き込まれると同時に、人の人生の深さというものも感じさせられました。兄に長年悩まされてきた妹のつらい思いと、それでも捨てきれない兄への情が痛いほど伝わってきました。

【満足度】 ★★★★☆
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2021年02月13日

『明智光秀 織田政権の司令塔』福島克彦




 織田家随一と称されながら、本能寺で主君を討ち、山崎合戦で敗れ去った名将、明智光秀。謀反に至る以前、光秀はどのような活動をしていたのかを通史的に検討し、その歴史的位置について考察。光秀の後半生をたどる。

 織田信長は版図拡大に伴い、柴田勝家、羽柴秀吉ら有力部将に大幅な権限を与え、前線に送り出した。だが明智光秀の地位はそれらとは一線を画す。一貫して京都とその周辺を任されて安土城の信長から近く、政権の司令塔ともいえる役割を果たした。検地による領国掌握、軍法の制定などの先進的な施策は、後年の秀吉が発展的に継承している。織田家随一と称されながら、本能寺の変で主君を討ち、山崎合戦で敗れ去った名将の軌跡。

 本書は、明智光秀の事績を史料をもとに細かく分析した一冊。明智光秀の築いた城郭についても詳しく書かれており、統治の実態に迫る内容になっているのが興味深いです。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月12日

『イノセンス』小林由香

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イノセンス [ 小林 由香 ]
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 中学時代、不良に絡まれた星吾は、彼を助けようとして刺された青年を見捨てて逃げてしまう。青年は死亡し、星吾は世間から集中砲火を浴びた。大学入学後、星吾の周囲で不審な出来事が…。『カドブンノベル』掲載を単行本化。

 音海星吾は美術サークルに所属する大学生。中学生時代、不良に絡まれた星吾は、彼を助けようとして身代わりに刺された青年を見捨てて逃げてしまう。青年はその後死亡したため、星吾はネット社会を中心とした世間の誹謗中傷を浴び続ける。大学入学後も星吾は心を閉ざして生きていたが、ある日、ホームから飛び降りようとした中年男性に「そんなに死にたいなら、夜にやってよ。朝やられると迷惑なんだ」と心無い言葉をぶつけてしまう。現場を目撃していた同じ大学の学生・紗椰にその言葉を批判されるが、それがきっかけで星吾は彼女と交流を持つようになる。星吾は心惹かれるようになった紗椰に思いを告げようとするが、自らの過去の重みのため、踏み出すことができない。コンビニのバイト仲間の吉田光輝、美術サークルの顧問・宇佐美ら周囲の人間との交流を通して、徐々に人間らしい心を取り戻しかける星吾。そんななか、星吾を狙うように美術室の花瓶が投げ落とされ、さらに信号待ちの際、車道に突き飛ばされるという事件が起こる。星吾を襲う犯人の正体は? そして星吾の選択とは……。

 本書は、自分を助けてくれた青年を見殺しにした事をネットで叩かれ、以来全てに怯え頑なに自分の殻に引きこもってしまった主人公が、同じように心に傷を抱えた友や先生と出会い、少しずつ少しずつ心を解放していく物語。過去の過ちによる罪に意識についてをミステリとしてよく表現した作品でもあり、主人公の心の変化は読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月11日

『五つ星をつけてよ』奥田亜希子

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五つ星をつけてよ (新潮文庫) [ 奥田 亜希子 ]
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 既読スルーなんて友達じゃない、と思ってた…。手のひらサイズのインターネットで、知らず知らずに伸び縮みする、心と心の距離をかろやかに描く物語。『小説新潮』他掲載を書籍化。

 既読スルーなんて、友達じゃないと思ってた。ディスプレイに輝く口コミの星に「いいね!」の親指。その光をたよりに、私は服や家電を、そして人を選ぶ。だけど誰かの意見で何でも決めてしまって、本当に大丈夫なんだろうか……? ブログ、SNS、写真共有サイト。手のひらサイズのインターネットで知らず知らずに伸び縮みする、心と心の距離に翻弄される人々を活写した連作集。

 本書は、インターネットが舞台となり、様々な人々の日常が描かれる6編からなる短編集。SNSに振り回される人々など、口コミサイトやSNSでの評価について改めて考えさせられましたし、周囲の反応に振り回される人々が描かれますが、自分自身で考えることの大切さを感じる一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月10日

『猿神』太田忠司

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猿神 [ 太田 忠司 ]
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 自動車関連工場で、突如1人の社員による暴行事件が発生。彼は犯行後、失踪し行方不明に。同じ頃、工場内で奇妙な音が聞こえ始め、多くの社員が何かの姿を見て…。狂乱のバブル時代と自動車関連工場の絶望的狂気を描くホラー。

 1989年S県。飯野(飯野)電気喜里(きさと)工場は、日本を代表する自動車会社の最新フラッグシップモデルSB9(エスビーナイン)、その照明部品(ライト)の製造を受注。品質管理課の塚田は連日、深夜までの残業と休日出勤を繰り返し、身も心も疲弊していた。が、塚田だけではない、897名の社員全員が厳しい納期と品質管理に汲々としていた。そんな中、突如1人の工員による工場内での暴行事件が発生。被疑者は犯行後、失踪し行方不明に。同時に聞こえ始めた奇妙な音。機械の轟音による耳鳴りか、それとも得体の知れない動物の鳴き声か。その後さらに社内で連鎖する暴行事件、製造事故、自殺、突然死、そして殺人。多くの社員が工場内で得体の知れない何物かの影を見る。なにかがおかしい。狂っている。それでも取引先の製造ラインを止めないため最優先される納期。みな無言で勤務を続ける。ある日、気がつけば工場の内外、至るところ隈笹が繁茂している……。太田忠司が自身の体験を元にバブル時代の自動車関連工場の狂気とカタストロフを描いた傑作モダンホラー。

 物語は、1989年の自動車製造工場が舞台のサスペンスホラー。バブルの時代に工期に追われて過剰労働を強いられる工場で次々に起こる事件について描かれており、事件が続くも製造ラインを止められない狂気について、サスペンスホラーとして読み応えある作品です。

【満足度】 ★★★★
ラベル:太田忠司 猿神
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2021年02月09日

『ルポ車上生活 駐車場の片隅で』NHKスペシャル取材班




 老い、病気、失業、肉親からの虐待、配偶者との死別、人間関係のつまずき…。車しか行き場がなかった。貧困だけではない“漂流の理由”とは? 話題のNHKスペシャルが待望の書籍化!

 本書は、全国に1160ある「道の駅」すべてを初調査し、現場を駆けずり回って取材を重ねたディレクター、記者、カメラマンたちが書き下ろした渾身のルポルタージュ。それぞれの理由、それぞれの事情を抱え、「車上で生活する人々」がこの日本社会には存在しますが、その車上生活者たちり実態に迫った一冊でもあり、様々な事情で車上生活をする人々に光を当て、孤立や貧困などこの国が抱える闇を浮き彫りにしています。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月08日

『やばいデジタル “現実”が飲み込まれる日』NHKスペシャル取材班




 「フェイク」は私たち一人ひとりに対して、どのような影響をもたらしているのか。NHKスペシャル「デジタルVSリアル」シリーズでは伝えきれなかった取材内容をふんだんに盛り込み、現代のデジタル世界を紐解く。

 デジタルは、私たちの社会をさらに自由に、豊かにしてくれる……。しかし、それが実にはかない願望であったことを、私たちはいま実感させられている。SNSの広がりは「真実」と「フェイク」の境界をあいまいにし、私たちは「フェイク」に踊らされるようになった。文脈を失い、断片化された情報は、それがデマであってもまるで真実であるかのように、「いいね」がつけられ、世界中に拡散されていく。ビッグデータに蓄えられた検索履歴は、私たち以上に私たちのことを知り尽くしたデータ=「デジタルツイン」となり、私たちのプライバシーを丸裸になりつつある。にもかかわらず、私たちは、デジタルの恩恵から逃れられない。フェイクが横行し、プライバシーが剥奪され、リアルはデジタルに侵食される……。不自由で非民主主義的な世界を、私たちはどう生きるべきか?

 本書は、NHKスペシャル「デジタルVSリアル」で放送されたものを新書に編集したもの。デジタルツインやフェイクニュースなど、身近にあるデジタルの問題点を様々な取材から浮き彫りにした内容で、人によっては本書で書かれるデジタル世界の様々な問題点からは目を背けたくなるものが多いでしょう。個人のデーターはグーグルやアマゾンにビッグデータとして蓄積され、そこから本人に成りすます偽物が登場し、様々なセキュリティ問題を引き起こし、フェイクも横行。デジタルには多くの恩恵がある一方で、フェイクが横行し、プライバシーが剥奪される現代のデジタル世界を紐解く一冊です。

【満足度】 ★★★★☆
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2021年02月06日

『野菜の栄養素まるごと便利帳』吉田企世子

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野菜の栄養素まるごと便利帳
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 野菜との上手なつき合い方を知ろう! 野菜を50音順に掲載し、選び方から保存の仕方、洗い方、切り方、相性のいい組み合わせまでを写真とともに紹介。からだにいい栄養素を逃さない、野菜のいちばんいいとり方がわかる。

 ビタミンACEがそろったかぼちゃは免疫力アップに最適。紫がかったブロッコリーは抗酸化作用が高い。レタスの保存はレタスの外葉で包む。カット白菜は内側から食べるとおいしさが長持ち。きゅうりの皮にはがん抑制効果が期待できる…からだにいい栄養素を逃さない、野菜のいちばんいいとり方。ちょっとした工夫でからだが変わる野菜との上手なつき合い方。選び方、保存の仕方、洗い方、切り方から相性のいい組み合わせまで、あいうえお順なのですぐ引ける!

 本書は、季節の野菜の栄養素を50音順に紹介したもの。野菜の選び方や保存方法なども分かりやすく紹介しているので、とても食生活の参考になる内容です。

【満足度】 ★★★★
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2021年02月05日

『民主主義とは何か』宇野重規

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民主主義とは何か (講談社現代新書) [ 宇野 重規 ]
価格:1034円(税込、送料無料) (2021/2/5時点)




 今や危機に瀕した民主主義に、まだ可能性はあるのか? 民主主義の歴史をたどり、その本質と「あるべき」姿を根本から考える。民主主義を巡る諸問題とその解決の方向性を凝縮した一冊。

 本書は、ギリシア・アテナイにおける民主主義思想の誕生から、現代まで、民主主義という制度・思想の誕生以来、起こった様々な矛盾、それを巡って交わされた様々な思想家達の議論の跡をたどり、様々な問題や民主主義の本質や特質や問題点を分析したもの。民主主義とは、そもそもどのような制度なのかを正しく知るためにわかりやすくまとめた内容で、本書の中での「民主主義は参加と責任のシステム」という内容が非常に納得しました。

【満足度】 ★★★★☆
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