2023年12月30日

『訂正する力』東 浩紀

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訂正する力 (朝日新書926) [ 東浩紀 ]
価格:935円(税込、送料無料) (2023/12/30時点)




 ひとは誤ったことを訂正しながら生きていく。哲学の魅力を支える「時事」「理論」「実存」の三つの視点から、現代日本で「誤る」こと、「訂正」することの意味を問い、この国の自画像をアップデートする。

 保守とリベラルの対話、成熟した国のありかたや老いの肯定、さらにはビジネスにおける組織論、日本の思想や歴史理解にも役立つ、隠れた力を解き明かす。それは過去との一貫性を主張しながら、実際には過去の解釈を変え、現実に合わせて変化する力―過去と現在をつなげる力です。持続する力であり、聞く力であり、記憶する力であり、読み替える力であり、「正しさ」を変えていく力でもあります。そして、分断とAIの時代にこそ、ひとが固有の「生」を肯定的に生きるために必要な力でもあるのです。

 本書は、現代日本で「誤る」こと、「訂正」することの意味を問い、この国の自画像をアップデートする必要性をまとめたもの。硬直化した保守とリベラル、ダイパ、コスパばかり持て囃される風潮に一石を投じる論考であり、内容は多岐に渡って深く考えさせられた一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月29日

『トコトンやさしい画像認識の本』笠原亮介




 日常生活から産業活動まで、多くの場面で私たちの生活を支えている画像認識。その技術の全体像を把握できるように、画像認識のデータの基本や具体的な画像処理方法、活用場面について解説する。

 画像認識について初めて学ぶ人でも全体像が把握できるよう、データの基礎的な知識や撮影方法から具体的な画像処理手法、さらに画像認識の進化に欠かせない機械学習や深層学習と画像認識の関係なども含め、ポイントをまとめて解説する。

 本書は、日常生活から産業活動まで、多くの場面で私たちの生活を支えている画像認識のデータの基本、具体的な画像処理手法、そして活用場面までを紹介した一冊。スマートフォンの顔認証機能によるロック解除、自動車の自動ブレーキなど、画像認識の利用範囲は広がっていますが、画像認識技術の用途、画像認識に使用される処理手法、画像認識で使用される機械学習など、多岐にわたる範囲をポイントを絞って解説しており、画像認識技術の全体像がつかめ、わかりやすくまとめています。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月28日

『地図は意外とウソつき』遠藤宏之




 地図の道路幅は実際と違う? GPSで測った標高は正確じゃない? じつは案外ざっくりと描かれている地図。いっけん不自然な表現になった事情や隠れたメッセージの意味など、地図の読み方・楽しみ方を紹介する。

 国の地形図や、ネットのデジタル地図はじつは案外“ざっくり”と描かれている。いっけん不自然な表現になった事情や隠れたメッセージの意味を知れば地図の読み方・楽しみ方が一変する!

 本書は、誇張に省略、描き換えなど、地図に潜んでいる「ワナ」や意外な「ウソ」を取り上げ、地図の読み方や楽しみ方を紹介したもの。地図の裏読みが今後楽しくなりそうで、興味深い一冊でした。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月27日

『たった1日でわかる46億年の地球史』アンドルー・H.ノール




 山や海、動植物、資源、空気や水は、いったいいつ、どのように誕生したのか。地質学、自然史学的な視点で、奇跡の惑星「地球」の46億年にわたる営みを超圧縮して解説する。

 私たちの身の回りにある山や海、動植物、資源、空気や水はいったいいつ、どのように誕生したのか? ハーバード大学の名誉教授(自然史学)で、NASAの火星探索ミッションにも参加している著者が、地球という奇跡の星の誕生から現在に至るまでを、地質学、自然史学的な視点でエキサイティングに読み解く一冊。

 本書は、ハーバード大学名誉教授の著者が地球の全歴史を240ページに超圧縮して解説した一冊。地球は何からできているかを始め、恐竜、三葉虫、始祖鳥、雷がもたらした生命誕生、ツングースカの大爆発、シーラカンスに海底山脈…など、地球という奇跡の星の誕生から現在に至るまでを、地質学、自然史学的な視点で分かりやすく解説しています。

【満足度】 ★★★★☆
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2023年12月26日

『作業療法士が伝えたいケガをしない家づくり』満元貴治




 転倒、転落…。家の中でたくさん事故が起こっているのを知っていましたか? 作業療法士としてリハビリに携わった著者が、住宅内事故を防ぐためにどうすればよいのかを、「50の方法」として提唱します。

 住宅内で「転倒・転落」してケガをするケースは非常に多く、東京消防庁のデータによると、高齢者で転倒・転落にて救急搬送された人の約60%は住宅で発生している。また、高齢者に限らず子供なども、住宅内の段差、階段、玄関だけでなく、高い場所の物を取り出そうと椅子から転落し、重傷になるケースもある。どのような家ならケガをしにくく、安全に暮らすことができるのか。作業療法士としてリハビリに10年以上携わり、また、約100棟の住宅の調査・改修にも関わった著者がその経験から、誰もが安全に住み続けられる家の方法「安全持続性能」を提唱。新築時、リノベーション時に役立つ、具体的な家づくりガイドライン。

 本書は、誰もが安全に住み続けられる住宅の「安全持続性能」を提唱する著者が、新築・リノベーション時に役立つ、ケガをしない家づくりの具体的なガイドラインを解説した一冊。玄関、階段、リビング、洗面室、トイレなどの間取りそれぞれで住宅内事故を予防し、長く暮らすための設計の方法が50個記載されています。それぞれイラストも踏まえて解説しており、住宅実務者や医療関係者にとっても参考になる内容です。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月25日

『世界を変える100の技術』日経BP編




 日本語LLM、宇宙建設、次世代パワー半導体、ドローン配送、介護ロボット…。日経の専門誌編集長・ラボ所長50人が、今後ビジネスに大きなインパクトを与えるテクノロジーを100件選び、わかりやすく解説する。

 ChatGPTなどの生成AI、核融合などカーボンニュートラルを目指すエネルギー関連技術、老化を抑える健康・医療技術、エアタクシーやドローン配送といったモビリティー技術など、今知っておくべき最先端技術を取り上げます。

 本書は、日経の専門誌編集長、ラボ所長が有望技術100件を厳選して解説したもの。最新テクノロジーの技術の進化も改めて考えさせられ、非常に興味深い技術革新が紹介されています。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月23日

『世界を変えたすごい数式 東大・京大生が基礎として学ぶ』冨島佑允




 数学が苦手でも「数式読解力」を持つ人は創造性を発揮できる。本書で紹介するのは、AIやVR、行動経済学、宇宙計画、投資やアートに至るまで、人類に大変革をもたらす発明を生んだ偉大な数式の物語。自ずと数式を”読める”ようになるはず!

 見た目の複雑さにひるむことはありません。数式のささやきに耳を傾ければ、物事の本質が見えてきます。一緒に、クリエイティブな数式の世界へ旅を始めましょう。

 本書は、数式が今の世の中に変化を起こしている事例を紹介していたもので、AI、アート、太陽光発電、お金の運用、宇宙など様々な分野にわたり、使われている数式を通して物事の本質を紹介しています。私たちの生活の中で使われている事象や身の回りの現象が、どのような数式から生まれているのかを事例を挙げて解説しており、人類に大変革をもたらす発明を生んだ偉大な数式の物語は面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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『恐い食べ物』松原タニシ

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恐い食べ物 [ 松原タニシ ]
価格:1,650円(税込、送料無料) (2023/12/22時点)




 事故物件から生まれたサラダ、死を招くオムライス、災いの寿司、集まってくる大根、ピザと怪音…。すべての不思議が食からはじまる…。「恐い食べ物」をテーマにした、全41篇の実話怪談集。

 本書は、食べ物が引き起こす恐ろしい話、著者が得意とする旅先での恐怖体験や歴史的奇譚まで、様々なな恐怖が納められた実話怪談集。食が引き起こす怪談、また秋田・奈良・屋久島など各地に伝わる食奇譚を巡る旅行記などバラエティ豊かな「恐い食べ物」のエピソードをすべて書き下ろしで41篇収録している他、「夢に見ると死ぬ」伝説がある洞窟で悪夢を見ると言われるチーズを食べて寝てみるなど著者が体当たりで調査を試みた体験も多数収録しています。

【満足度】 ★★★☆
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2023年12月21日

『海賊たちは黄金を目指す』キース・トムスン




 数か月も身体を洗えない海賊船での生活とは? どのくらいの収入があったのか? いかなる戦法で敵と戦ったのか? 7人の海賊が書き残した日誌をもとに、カリブの海賊のリアルな姿を描く。

 一攫千金を夢見て、血で血を洗う戦闘に明け暮れ、金銀財宝を略奪。その一方で、航海中は数か月も身体を洗えず、水と食料が徐々に減っていく恐怖と隣り合わせの生活を送る……。17世紀後半、カリブ海でスペインの植民地や商船を襲撃してまわった海賊たち。「短いながらも愉快な人生」をモットーとした男たちは、いかなる戦法で敵と闘い、どのような日常生活を過ごしていたのか?『最新世界周航記』のウィリアム・ダンピアなど、7人の海賊が書き残した日誌をもとにして描く、カリブの海賊のリアルな姿とは?

 本書は、1600年代後半にカリブ海で大暴れした海賊が残した7人の日誌から、そのリアルな様子を浮き彫りにするノンフィクション。船内では仲間割れや叛乱が日常茶飯事で、様々な逸話も興味深く、我々が持つ海賊像の正誤や当時の中米に関する記述にも好奇心を刺激されました。ジャングルでの苦行ともいえる踏破や航行中の飢えや争いなど、当時のリアルな海賊活動は知識としても面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月20日

『顔面放談』姫野カオルコ

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顔面放談 [ 姫野 カオルコ ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2023/12/20時点)




 独自の小説世界を織り成しつづける姫野カオルコは稀代の「顔マニア」でもあった! 姫野カオルコの並々ならぬ観察眼が炸裂する捧腹絶倒のマニアック・エッセイ。『青春と読書』連載を加筆修正。

 あなた、本当に「顔」見てますか? 著名人の顔を凝視しつづけて半世紀……直木賞作家・姫野カオルコの並々ならぬ観察眼が炸裂する、捧腹絶倒のマニアック・エッセイ!

 本書は、著者の“顔”への偏愛が爆発したエッセイ集。著者の独断と偏見で顔面比較論についてや誰に似ているかなどが書かれていますが、それなりには面白かったですが、著者の顔マニアぶりに圧倒されました。

【満足度】 ★★★
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2023年12月19日

『「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと』村田慎二郎




 一度しかない人生、自分の限りある命を使って、どのように生き、どのように死ぬのか。国際人道援助の最前線で目の当たりにした紛争地のエピソードを多数紹介しながら、生きる上で重要な「命の使い方」について語る。

 一度きりの人生、夢をもたないのはモッタイナイ!スーダン、シリア、イラク、イエメン…世界の紛争地で考えた限りある命の使い方。人道支援現場10年。ハーバード大学の大学院で学んだ著者による人生でいちばん大切な話。

 本書は、世界一過酷な場所で、生き抜いている人々を目の当たりにしてきた国境なき医師団の事務局長である著者が実体験をもとに「命の使い方」を記した一冊。生きる上では命の使い方こそが重要だとし、ポイントごとに国際人道援助の最前線で著者が目の当たりにしてきた紛争地でのエピソードと、学んだ教えの一部を紹介しながら、生きる上で重要な命の使い方について解説しています。

【満足度】 ★★★★☆
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2023年12月18日

『からさんの家 まひろの章』小路幸也

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からさんの家 まひろの章 [ 小路幸也 ]
価格:2,200円(税込、送料無料) (2023/12/18時点)




 高校を卒業したばかりのまひろは、血の繋がらない祖母と暮らすことになった! 自分に正直に生きてきた70代の女性と、彼女の家に下宿する個性的な面々との生活を描く家族小説。『読楽』連載を加筆修正。

 まひろの家族事情は、ちょっと複雑。実の両親は幼い頃に離婚。父親は再婚した母親とともに事故で死亡。義母の妹に引き取られるも、彼女が結婚した相手の転勤で北海道へ行くことになるが、高校卒業間近だったので、同行せず、新しい父親の母が住む家に引っ越すことになった。義理の祖母となった三原伽羅は、詩人で小説家で画家で、女優だったうこともある多才な女性。彼女が住む東京の下町にある古い洋館には、新進の芸術家、建築家志望の学生、バーを営む歌手の女性といった個性的な面々が住んでいる。新しい環境の中、ユニークな同居人たちとともに暮らすまひろの日常を描く。

 本書は、家族事情がちょっと複雑な高校卒業したばかりのまひろが、東京の下町にある古い洋館に住む義理の祖母とそこに住む個性的な同居人たちとの暮らし日々を描いた物語。老若男女を問わず人柄も良く才能に溢れる登場人物たちと主人公まひろとの生活は淡々とした中にも、成長を見守る登場人物たちの優しさが描かれていて、面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月16日

『馬の言葉に耳を傾けて 続・「馬楽のすすめ」極上の乗馬指導術』三木田照明




 初心者〜上級者向けに、馬との接し方、育て方、乗り方の基本方針と、技術向上のためのコツを習熟度に合わせて解説。国内外で高く評価されている名手が、馬を愛し、理解し、乗馬を楽しむために必要なノウハウを伝える。

 『馬を楽しむ乗馬術』『馬楽のすすめ』に続く、三木田馬術の決定版。馬との接し方、育て方、乗り方の基本方針と、技術向上のためのコツを習熟度に合わせて解説。初心者から上級者まで必読の書。

 本書は、様々なきっかけで乗馬を始めた人が馬を愛し、理解し、乗馬を楽しむために必要なノウハウを、馬歴70年、乗馬指導歴50年、母校・帯広畜産大学馬術部を全日本学生総合馬術大会優勝に導き、後輩たちも毎年のように上位の成績をあげている指導力、JRAからも指導を依頼される総合力で国内外で高く評価されている名手が惜しみなく公開した一冊。新ひだか町の乗馬施設・ライディングヒルズ静内をメインとして指導されている著者の乗馬術は興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月15日

『ウクライナのサイバー戦争』松原実穂子




 IT人材受刑者を活用するロシアと、「サイバー義勇兵」が結集するウクライナ。元々は「サイバー意識低い系」だったウクライナが、なぜロシアと互角以上に戦っているのか。サイバー専門家による、リアルタイムの戦況分析。

 ウクライナは、国内で人気のSNSがロシアのサーバーにホストされているほど「サイバー意識低い系」だったが、2014年にクリミアを奪取され、その後もロシアによる攻撃が止まない現実を前に徐々に覚醒していった。政府データのクラウド化など防御策と、米軍や大手IT企業との連携、IT軍の創設などの攻撃策を組み合わせ、ロシアと互角以上に戦っている。サイバー専門家によるリアルタイムの戦況分析。

 本書は、ウクライナ戦争でのサイバー戦の様子をまとめたもの。DDoS、ランサムウェア、ワイパー攻撃の応酬について、国内の通信企業、多国籍企業等民間セクターを巻き込みながら、デジタル時代の「総力戦」の現実が書かれていますが、サイバーセキュリティ対策の重要性を強く感じると共に、日本全体でのサイバーセキュリティ対策についてが非常に気になりました。

【満足度】 ★★★★☆
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2023年12月14日

『禍』小田雅久仁

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禍 [ 小田 雅久仁 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2023/12/14時点)




 壊れかけた人生を生きてきた女は、報酬金に目が眩み、とある宗教団体が執り行う〈髪譲りの儀〉にサクラとして参加するが…。「髪禍」など、恍惚の淵に待ち受ける破局と創生を描く全7編を収録。『小説新潮』掲載を単行本化。

 「俺はここにいると言ってるんだ。いないことになんかできねえよ」。恋人の百合子が失踪した。彼女が住むアパートを訪れた私は、“隣人”を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技“耳もぐり”と、一体(「耳もぐり」)。「壊れかけた人生」を生きてきた女は、10万円の報酬金に目が眩み、とある宗教団体が執りおこなう“髪譲りの儀”にサクラとして参加する。身の毛もよだつ悪夢が待っているとも知らず(「髪禍」)。ほか、小説という名の七の熱塊。

 本書は、口、耳、目、肉、鼻、髪、肌……と、ヒトの“からだ”をモチーフに、様々な技巧でありとあらゆる恐怖と驚愕を紡ぎ、豊穣な想像力と巧みな文章力で描かれる7つの作品が収録される幻想短編集。日常から幻想へ移行し、破局と創生が表現されていますが、独特の歪んだ世界観はインパクトがありました。

【満足度】 ★★★★
ラベル:小田雅久仁
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2023年12月13日

『リスペクト』ブレイディみかこ




 ホームレス・シェルターに住んでいたシングルマザーたちが理不尽な理由で退去を迫られた。女性たちは連帯して立ち上がり…。2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件をモデルとした小説。『ちくま』連載に加筆。

 2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件をモデルとした小説。ホームレス・シェルターに住んでいたシングルマザーたちが、地方自治体の予算削減のために退去を迫られる。人種や世代を超えて女性たちが連帯して立ち上がり、公営住宅を占拠。一方、日本の新聞社ロンドン支局記者の史奈子がふと占拠地を訪れ、元恋人でアナキストの幸太もロンドンに来て現地の人々とどんどん交流し…。「自分たちでやってやれ」という精神(DIY)と、相互扶助(助け合い)と、シスターフッドの物語。

 本書は、ロンドン五輪の後の再開発の下町を舞台に、公営住宅を追い出されそうになったシングルマザー達の抗議活動の様子を物語としたもの。住居問題をだけでなく人権、性別、格差や都市の在り方など、様々な社会問題についても取り上げていて、読み応えある作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月12日

『ヨモツイクサ』知念実希人

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ヨモツイクサ [ 知念実希人 ]
価格:1,848円(税込、送料無料) (2023/12/12時点)




 その森に足を踏み入れると《ヨモツイクサ》の生け贄となる。北海道旭川に《黄泉の森》と呼ばれ、地元の人々が決して踏み入れない山があった。そこを大手ホテル会社が開発しようとするのだが、作業員が行方不明になってしまう。道央大病院の外科医・佐原茜の実家はその森のそばにあり、7年前に家族が突然消える神隠し事件にあっていた。2つの事件は繋がっているのか。もしかして、ヨモツイクサの仕業なのか。『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』を超える衝撃作。医療ミステリーのトップランナーが初めて挑む戦慄のバイオ・ホラー!

 北海道旭川に《黄泉の森》と呼ばれ、アイヌの人々が怖れてきた禁域があった。その禁域を大手ホテル会社が開発しようとするのだが、作業員が行方不明になってしまう。現場には《何か》に蹂躙された痕跡だけが残されてた。そして、作業員は死ぬ前に神秘的な蒼い光を見たという。地元の道央大病院に勤める外科医・佐原茜の実家は黄泉の森のそばにあり、7年前に家族が忽然と消える神隠し事件に遭っていて、今も家族を捜していた。この2つの事件は繋がっているのか。もしかして、ヨモツイクサの仕業なのか……。

 本書は、医療×ホラー×ミステリの要素が詰まった作品で、アイヌの人々が恐れる禁域の森で発生した殺戮はヒグマによるものなのか?別の物なのか?をバイオホラーとして描いていますが、ホラー要素がかなり強く、印象に残る作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月11日

『無限の月』須藤古都離

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無限の月 [ 須藤 古都離 ]
価格:1,925円(税込、送料無料) (2023/12/11時点)




 真夜中の中国のある町で、パソコンのディスプレイに「誰かたすけて」の文字がいくつも表示された。日本では、IT経営者の妻が階段から転げ落ちて大怪我を負い…。中国と日本を舞台に描くノンストップエンターテインメント。

 中国のある町で起こった奇妙な出来事。町の半分が大停電をおこし、停電の前には、パソコンのディスプレイに「誰かたすけて」の文字が、いくつも表示された。何者かによるハッキングが原因かと思われたが、犯人はわからない。日本では、脳科学をテクノロジーに昇華させ時代を作ったやり手のIT経営者の妻が、階段からころげ落ち、大怪我を追った。別居をしていた夫と、妻は久しぶりに会った。そして、気づく。この人は、あの人じゃない、別人だ……。中国と日本を舞台に、「私」とは何か?を根源までつきつめたノンストップエンターテインメント!

 本書は、ITベンチャー企業の社長が自社で開発したデバイスを頭に装着して、中国の女の子との「同期」を切り返し、囚われの身の女の子を助けに中国に渡り…という日本と中国を舞台とした物語ですが、作品の説明が難しいですが、脳科学とテクノロジーの融合をうまくエンタメ作品としており、面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月09日

『前の家族』青山七恵

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前の家族 [ 青山 七恵 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2023/12/9時点)




 中古マンションの購入を決断した、37歳・独身・小説家の猪瀬藍。理想的な物件で始まった新生活に心躍らすが、その先に思いもかけない展開が待ち受けていた…。異色のマイホームミステリー。『WEBきらら』連載に加筆改稿。

 猪瀬藍・37歳・女性・独身。「借金をして家を買おう」そう思いついたのは6年前のことだった。果たして、その物件に手をだしてはいけなかったのか…。予想外の展開に背筋が凍る…異色のマイホームミステリ。

 本書は、少しネタバレで紹介すると、自立して生きているつもりの主人公が家を買い、前の持ち主と仲良くなるうちに、段々と依存し、ほぼもう一人の家族のつもりでいたところが、気がついたらその家族の家に取り残されて自分の家は占拠されていた…というホラーミステリともいえる物語。現実的にはありえない展開でもありますが、ある意味交流の奥に潜む怖さというのも感じた作品で、展開に引き込まれました。

【満足度】 ★★★★
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2023年12月08日

『文豪、社長になる』門井慶喜

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文豪、社長になる [ 門井 慶喜 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2023/12/8時点)




 1923年、大ベストセラー作家・菊池寛によって、文春は産声をあげたが…。激動の時代に翻弄されながらも、文豪、社長として、波乱に満ちた生涯を送った男の、史実に基づいた物語。『オール讀物』掲載を書籍化。

 芥川龍之介や直木三十五などの協力を得、菊池寛が発行した「文藝春秋」創刊号はたちまち完売する。時代が求めた雑誌は部数を伸ばし、会社も順風満帆の成長を遂げていく。しかし次第に、社業や寛自身にも暗い影が。芥川、直木という親友たちとの早すぎる死別、社員の裏切り、戦争協力による公職追放、会社解散の危機…。激動の時代に翻弄されながらも、文豪、社長として、波乱に満ちた生涯を送った寛が、最後まで決して見失わなかったものとは…。

 本書は、ベストセラー作家にして文藝春秋創業者・菊池寛を主人公とした物語。作家に憧れた四国の少年が、いかにしてベストセラー作家となり、文藝春秋を創ったのかについて、そして稀有な文化人であり、実業家であった男の一生を、膨大な資料と確かな取材により見事に描いています。直木三十五や芥川龍之介ら、著名な作家たちも登場し、友情物語としての側面も興味深かったです。

【満足度】 ★★★★

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