2024年09月30日

『ハードクレームから従業員・組織を守る本 カスハラ、悪意クレームなど』津田卓也




 現場の従業員を疲弊させないためには、ハードクレームへの対応方針を企業・組織が明確に打ち出すことが必要です。「こんなとき、どう行動すればいいの?」と従業員が悩むことのなくなるマニュアルとクレーム対応をバックアップする仕組みのつくり方が分かれば、クレームを劇的に減らすことができます。実際に起きた事例をもとに、ハードクレームを見極め、毅然とした態度で「断る」ためのテクニックを多数紹介!

 本書は、お客様の要望を真摯に受け止めるべき「一般クレーム」と、避けるべき「ハードクレーム」とを区別し、それぞれの対応法を事例とともに詳しく解説した一冊。カスタマ―ハラスメント対応を扱う第5章では、一般クレームとの対応の違いや危険性を解説し、クレーム対応にあたる従業員・組織を守るための具体的な方法を紹介しています。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月28日

『ひとつの祖国』貫井徳郎

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 第二次大戦後に分断され、再びひとつの国に統一された日本。だが東西の格差は埋まらず、東日本の独立を目指すテロ組織が暗躍し……。意図せずテロ組織と関わることになった一条昇と、その幼馴染で自衛隊特務連隊に所属する辺見公佑の二人。社会派エンターテインメント巨編。

 人々が幸せに生きている国など、この世のどこかにあるのだろうか。第二次大戦後、日本は大日本国(西日本)と日本人民共和国(東日本)に分断された。ベルリンの壁が崩壊する頃、日本もひとつの国に統一された。だが四半世紀を過ぎても格差は埋まらず、再度、東日本の独立を目指すテロ組織が暗躍しており…。最高のエンターテインメントにして、重厚な社会派巨編。

 本書は、格差が固定したディストピア的な社会で、テロ組織と自衛隊との暗闘を描いたクライムサスペンス。第二次世界大戦の敗戦により東西日本は分断され、東日本には共産主義国家、西日本には民主主義国家が設立されているという歴史改変モノではありますが、壮大な設定の物語でしたが、やや粗削りの印象があったものの、今の日本の問題点をうまく織り込んでいて、読み応えはある作品です。

【満足度】 ★★★☆
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2024年09月27日

『2040年 半導体の未来』小柴満信

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2040年 半導体の未来 [ 小柴 満信 ]
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 半導体(b)+量子(q)=次世代計算基盤で日本経済は再び成長する。キーマン中のキーマンが提言、「半導体再生戦略」。なぜいま、2ナノ半導体なのか?

 本書は、「なぜ半導体が注目されるようになったのか」「その背景にある世界を巻き込む事情とは何か」「その中にあって、日本はどう進むべきか」「半導体開発競争の先にある未来のテクノロジーとは何か」についてをまとめた一冊。最先端半導体について分かりやすく紹介されており、今後の半導体戦略など興味深い内容でした。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月26日

『日本鉄道廃線史 消えた鉄路の跡を行く』小牟田哲彦




 野ざらしの廃車両、ぽっかりと闇をのぞかせる廃トンネル……全国に散在する廃線にも、かつては活気に満ちた時代があった。なぜこれらは廃止されてしまったのか。戦中の「不要不急路線」にはじまり、モータリゼーションや国鉄再建に伴う大量の廃止、近年の自然災害による廃線などを時代別・種類別に紹介する。そして現在、新たに巻き起こっている廃線論議の解決策はどこにあるのか。廃線からたどる日本交通史。

 本書は、鉄道開業以降の旧国鉄・民鉄を問わず廃止になった鉄道線について概観し、なぜ廃止になったのかを考察した一冊。鉄道廃線の歴史と共に、廃線跡の実態調査も行った内容ですが、公共交通の在り方についてなど、改めて廃線問題を考えさせられる内容です。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月25日

『22歳の扉』青羽 悠

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22歳の扉 [ 青羽 悠 ]
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 京都の大学に入学した数学好きの田辺朔。大学生活に馴染めず、漫然と授業を受け、バイトをしているうちに一回生前期は終わってしまった。後期に入り、旧文学部棟の地下、通称「キューチカ」でひっそりと営業されているバーのマスター夷川と出会い、朔の大学生活は一変した…。まぶしくて、切ない。20代の日々。

 三重で育ち、京都の大学に入学した数学好きの田辺朔。大学生活に馴染めず、漫然と授業に出て、バイトをしているうちに一回生前期は終わってしまった。後期に入り、旧文学部棟の地下、通称「キューチカ」でひっそりと経営されているバーのマスターである先輩の夷川と出会い、朔の大学生活は一変した。夷川につれられ、初めてのウイスキー、タバコ、そしてバーやクラブなど、これまで見たこともない世界を知っていく。しかし、ある日をさかいに、何の前触れもなく夷川はナイジェリアへ留学に行ってしまった。「バー・ディアハンツはお前に任せる!」の一言を残して。そこからマスターとしてバーに立つことになった朔は、その大学内の不思議なバーで数々の出会いと別れを経験する――。自由奔放な女の子に振り回されたり、学生運動紛いに巻き込まれたり、自分の行く末に悩んだり……二十代前半の「不変」と「今」が詰まった圧倒的青春小説!

 物語は、京都を舞台に主人公が京都市の大学に入学する19歳から卒業する22歳までの4年間を描いた作品で、大学生活の出会いや別れ、恋、成長がリアルに綴られています。どこかノスタルチックな作品でもありましたが、青春の一時期をうまく表現した物語でした。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月24日

『脱毛のすべてをするっと教えてください!』林 隆洋




 美容意識の高まりにより、脱毛ケアは一般化および低年齢化が進んでいます。最近では小学生を対象とした医療脱毛や脱毛エステ、身だしなみとしてのメンズ脱毛や高齢層による介護脱毛も増えていますが、その一方で、施術後のやけどやサロンの倒産など、トラブルも後を絶ちません。医療脱毛とサロン脱毛の違いは? 脱毛は何歳からできる? 適正な料金は? 初めて脱毛をする女性の疑問や不安、トラブル回避の予防策を、10万件以上の施術実績を持つ皮膚科医が解説します。

 本書は、自身もムダ毛に悩み、学生時代に医療脱毛と出会って救われたと語る皮膚科医の著者が、美容クリニックの広告やホームページ、ネット記事ではわからない、悩める女子が本当に知りたい脱毛の真実を解説した一冊。医療脱毛の施術実績10万人超の美容皮膚科医が初めての脱毛で失敗しないためのポイントをQ&A形式でわかりやすくまとめており、素朴な疑問や不安を解消し、トラブルを回避するために必要な予防策についても解説しています。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月23日

『奪還 日本人難民6万人を救った男』城内康伸




 太平洋戦争の敗戦で朝鮮半島北部の邦人は難民に。飢餓や伝染病で斃れゆく老若男女の前に忽然と現れ、ソ連軍の監視をかいくぐり、母国へと導く男……彼はかつて国家から断罪されたアウトサイダーだった。時間も資金も情報もない中で、頭脳と度胸を駆使した決死の闘いが始まる。見返りを求めない「究極の利他」が胸を打つ実話。

 第二次大戦後、朝鮮半島。頭脳と度胸で38度線を突破し、「集団脱出工作」を成功させたのは、名もなき“アウトサイダー”だった…。知られざるもう一人の杉原千畝、感動の実話!

 本書は、敗戦直後の朝鮮半島でおよそ6万人もの日本人難民の命を救い「引き揚げの神様」とまで呼ばれた松村義士男について、歴史に埋もれた英雄の姿を蘇らせた一冊。知られざる第二次大戦後の朝鮮半島北部の様子を、元中日新聞記者でソウル支局長も経験した著者が、知られざる歴史を丹念に解きほぐし、38度線を越えて南側に送り届けることに尽力した男・松村義士男が、朝鮮人やソ連人との人脈を活用し、孤軍奮闘して数万もの日本人を祖国に帰した実話をまとめています。

【満足度】 ★★★★☆
ラベル:城内康伸 奪還
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2024年09月21日

『魂の歌が聞こえるか』真保裕一

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魂の歌が聞こえるか [ 真保 裕一 ]
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 新人バンドのデビューに奔走するレコード会社、契約を勝ち取り、狙うはアニメの主題歌次々と難題がふりかかり、予想外の事態に。え…?彼らは何かを隠してる!迫真の音楽業界ミステリ!

 本書は、音楽業界を舞台に音楽事務所が抱える期待の新人バンドの背景に迫る物語。サイドストーリーも面白く、バンドが隠している秘密や業界内の駆け引きもリアルで、エンタメとして楽しめた作品です。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月20日

『虎と兎』吉川永青

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虎と兎 [ 吉川永青 ]
価格:2,090円(税込、送料無料) (2024/9/20時点)




 幕末。アメリカへ渡った白虎隊の生き残りの少年虎太郎は、インディアンの少女ルルを助ける。虎太郎は南北戦争の英雄カスターに追われるルルを助けながら、アメリカ縦断の旅へ出るが……。歴史の敗者たちを書き続けてきた著者が送る、新世代侍ウエスタン!

 幕末。会津白虎隊でただひとり生き残った少年・三村虎太郎は維新後、新政府のもとで生きることを拒み、新天地アメリカへの移民へ参加した。異国での過酷な暮らしが続く中、ある日、虎太郎は行き倒れているシャイアン族の少女を助ける。一族を虐殺されひとり生き残った少女はカスター将軍の“ある秘密”を握っているため追われているという。似た運命を背負ったふたりは、時に反発し、時に支えあいながら、暴虐非道の第7騎兵隊へと立ち向かうこととなるが…。歴史の敗者に光を当て続けてきた著者が、米史の闇・インディアン戦争に挑む!

 本書は、アメリカに渡った白虎隊の生き残りの少年・虎太郎が先住民の少女・ルルと出会い、彼女の命を狙うカスター将軍に立ち向かう物語で、サムライとアメリカ先住民コンビによる異色西部劇であり、広義の歴史小説。ゴールドラッシュに沸くアメリカ西部を舞台に、アメリカに新天地を求めた白虎隊の生き残りの少年が成長していく姿が描かれますが、史実をベースにした先住民とアメリカ軍の戦いに白虎隊の生き残りを絡めて、面白い作品となっています。

【満足度】 ★★★★
ラベル:吉川永青 虎と兎
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2024年09月19日

『ジオパーク・国立公園でぐぐっとわかる日本列島』川上紳一




 “日本”はどこからやってきた?日本列島誕生の歴史を探求。最新の地球科学による列島形成の歴史を写真やイラストでわかりやすく解説。

 地球の誕生から、琉球列島、北海道の誕生、2020年に地質年代として認められた「チバニアン」、そして、人間活動による環境の変化まで、日本列島が今に至るまでの歴史を手軽に学び直しできる一冊です。豊富な図版や写真を交えたわかりやすい解説ページではプレートの移動、火山が発生する理由、恐竜の繁栄と絶滅など、知っておきたい地学のテーマを掲載。また、実際に訪れることができるジオパーク、国立公園、そのほかジオサイトを掲載し、実際に足を運んだ時に、風景が持つ意味をより一層読み解くことができるようになります。この一冊で、日本列島の歴史への理解がぐぐっと深まります!

 本書は、日本列島の歴史を探求した一冊で、5つの章として「地球科学とは」「日本列島の成り立ち」「地表の変化」「日本列島の生命の痕跡をたどる」「人新世の日本」と分けられた内容は、イラストや図解を交えて分かりやすく解説されていて、ジオパークや国立公園などのスポットガイドも地形が分かる写真が多数掲載されています。日本列島史の知識や雑学も多く、興味深い一冊でした。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月18日

『死んだ動物の体の中で起こっていたこと』中村進一




 動物園で起きた謎の連続死、庭先で変死した正体不明の野生動物、かわいがっていたペットとの突然の別れ…。この子は最期に苦しみましたか?物言わぬ動物たちの声なき声を聴く獣医病理医による命のエッセイ。

 本書は、「死んだ動物を診る」病理学専門の獣医が、遺体と向き合う日々の中で学んだこと、感じたこと、最後の診断で聴いた動物たちからのラストメッセージを綴ったエッセイ。無知のまま動物を飼養することの罪深さなど、興味深い内容にもなっており、動物の死に真摯に向き合う著者の姿勢も印象深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月17日

『シン・防災論 「政治の人災」を繰り返さないための完全マニュアル』鈴木哲夫




 2024年元日に起こった能登半島地震は甚大な被害を生んだが、政府による被害者救済、支援策の遅れがあわらになった。日本では地震災害は避けられないものの、被害をどう食い止め、被災者を支え、復興を牽引するか、それは政治の責任である。長年、最前衛のジャーナリストとして、歴代政権の災害対策を取材し、報じてきた著者は、能登半島地震において過去の教訓が生かされていないことに断腸の思いを抱き、防災論と防災マニュアルの決定版たる本書を書き下ろした。首都圏直下地震、南海トラフ地震を含む、迫り来る巨大災害に備えて……。

 本書は、能登半島地震での地震災害を徹底取材し、日本災害史をたどり直し、防災論と防災マニュアルをまとめた一冊。能登半島地震の推移をつぶさに振り返りつつ、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、そして1995年の阪神淡路大震災など、過去の災害で得たはずの多くの教訓が「いかに活かされなかったか」を検証し、災害対応において、政府や首相がするべきこと、するべきではないことは何か。どのように被災地・被災者と向き合うべきか。どんな覚悟と視野をもって復旧事業に取り組むべきか。そのために必要な制度や法律とは何か。天災による被害(二次被害を含む)を最小限に抑えるために、どんな備えが必要で、どこに予算を投じるべきか…など、災害時の現実対応と災害対応の在り方を浮き彫りにしていきます。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年09月16日

『貨物列車で行こう!』長田昭二

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貨物列車で行こう! [ 長田 昭二 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/9/16時点)




 お金さえ払えば月にも行けるご時世に、札束を積んでも乗れないものがある。それが、貨物列車だ。貨物列車に乗りたい…少年時代から貨物列車に魅せられた筆者は、五十歳を過ぎてから、ついにその夢をかなえた。しかも四度も!奇跡とも言える貨物列車添乗記と貨物駅、車両所の探訪記。ここには貨物鉄道ファンの夢の国がある!

 本書は、少年時代から貨物鉄道に魅せられた筆者が、50歳を超えてから貨物列車に添乗することが出来、普通なら訪ねることが出来ない貨物駅を隅々まで探訪した内容をまとめた乗車ルポ。東京都の新小岩駅と金町駅との間を結ぶ総武線の貨物線、通称「新金線」の沿線巡りに始まり、常磐線や東海道線、山陽線、青函トンネルを行く貨物列車の機関車に搭乗した模様が楽しく記されており、JR貨物社長を始めとする同社の担当者へのインタビューからは、貨物列車を動かす苦しさ、そこから得られる幸福感も伝わってきます。念願の貨物列車に乗ることができ、広大な貨物ターミナルの施設に入って見学できるなど、やや興奮気味のレポートではあるものの、多くの人たちが携わる物流システムで貨物が届けられていることを思うと、その凄さとありがたみを感じる一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月14日

『あきらめる』山崎ナオコーラ

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あきらめる [ 山崎 ナオコーラ ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/9/14時点)




 近所の川沿いを散歩するのが日課の早乙女雄大。入院中の愛する人との残り少ない日々の過ごし方や、ある告白をきっかけに家を出てしまった家族のこと、あれこれ思い悩みながら歩いていると、親子風の二人組に出会う。親に見える人は何やら思い詰めた表情で「自分の人生をあきらめたい」と言う…。

 近所の川沿いを散歩するのが日課の早乙女雄大。入院中の愛する人との残り少ない日々の過ごし方や、ある告白をきっかけに家を出てしまった家族のこと、あれこれと思い悩みながら歩いていると、親子風の二人組に出会う。親に見える人は何やら思い詰めた表情で「自分の人生をあきらめたい」と言う…。ふとしたきっかけで生まれた縁だったが、やがて雄大は彼らと火星に移住し、「オリンポス山」に登ることを決意する…!?

 本書は、火星移住が始まっている近未来を舞台に、ごく普通の人達が、良い意味で自分をあきらめて自分を明らかにしていく物語。多様性を問う展開に、火星移住をかけ合わせる不思議な感覚の作品でしたが、タイトルの「あきらめる」は「あきらめる」ことから始める前向きな意識について表現されていて、あきらめることで自由を得る必要性をうまく物語にしています。

【満足度】 ★★★☆
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2024年09月13日

『1947』長浦 京

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1947 [ 長浦京 ]
価格:2,750円(税込、送料無料) (2024/9/13時点)




 敗戦直後の東京に、若き英国軍人が降り立つ。GHQ、日本警察、ヤクザ…様々な妨害を受けながら、戦場で捕虜となった兄を不当に殺害した日本兵の行方を追うが…。『ジャーロ』連載に加筆・修正し単行本化。

 1947年。英国軍人のイアンは、戦場で不当に斬首された兄の仇を討つため来日する。駐日英国連絡公館の協力を得つつ少ない手掛かりを追うが、英経済界の重鎮である父親ゆずりの人種差別主義者でプライドの高いイアンは、各所と軋轢を生む。GHQ、日本人ヤクザ、戦犯将校…さまざまな思惑が入り乱れ、多くの障害が立ちふさがる中、次第に協力者も現れるが日本人もアメリカ人も信用できない。イアンの復讐は果たされるのか?

 本書は、1947(昭和22)年に敗戦国となった日本が連合国軍総司令部(GHQ)によって支配された占領期を舞台に、GHQが内部対立し、利権を奪い合う暴力団、そして警察、在日外国人らが入り乱れ、戦争による荒廃と復興が混在した東京が、戦勝国としては存在感の薄い英国の軍人の目を通して描かれた作品。約600ページの大作でしたが、分厚さのボリユームを感じさせず、一気に物語に引き込まれました。占領期の僅か2週間の物語ですが、中身の濃い展開が続き、最後まで緊張感を保ったまま楽しめました。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年09月12日

『殺める女神の島』秋吉理香子

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殺める女神の島 [ 秋吉 理香子 ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2024/9/12時点)




 孤島に集められた7人のミスコン最終候補者。以後2週間、互いを高め合いながら最終審査の準備を行う。だが主催者が瀕死で見つかり、やがて次々と殺人が。参加者の嘘も明らかになっていき…。『小説野性時代』連載を加筆修正。

 リゾートアイランドに集められた、外見と内面の美を競うコンテストの最終候補者。メンバーは女子高生モデル、経営者、小説家、医師、シェフ、インフルエンサー、大学院生の七人。これから二週間、互いを高め合いながら、最終審査の準備を行う。だが、その日々を見守る立場の主催者が瀕死の状態で見つかり、やがて、もう一人…。不穏な空気が漂うなか、参加者の巧妙に隠された嘘も明らかになっていく。驚愕の結末が待ち受ける、著者渾身の長編ミステリ!

 本書は、美女コンテストのファイナルステージで外部との連絡が取れない無人島に集められた7人の女性達の連続殺人事件が起きるミステリ。クローズドサークルでのミステリとしては物足りなかったですが、エンタメとしては良かったです。

【満足度】 ★★★☆
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2024年09月11日

『令和元年の人生ゲーム』麻布競馬場

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令和元年の人生ゲーム [ 麻布競馬場 ]
価格:1,650円(税込、送料無料) (2024/9/11時点)




 “意識の高い”若者たちのなかにいて、ひとり「何もしない」沼田くん。彼はなぜ、22歳にして窓際族を決め込んでいるのか? 自分の可能性を知りすぎてしまった「賢すぎる」若者たちを描く。『別冊文藝春秋』掲載を書籍化。

 「まだ人生に、本気になってるんですか?」平成の落ちこぼれか、令和の革命家か。自分の可能性を知りすぎてしまった“賢すぎる”新人たち。“何を考えているのかわからない”Z世代の取扱説明書。

 本書は、現代を生きる「意識高い系」の若者たちの群像をつづった連作集。物語は、ビジネスコンテストを主催する「意識高い系」の学生サークルを描く「平成28年」と題した作品から始まる。その後、「平成31年」「令和4年」と続き、文化的感度の高い新しいタイプの銭湯を舞台とした「令和5年」まで計4編を通し、現代の若い男女の内面を映し出した作品。Z世代がリアルに描かれており、中々シニカルな作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月10日

『山よりほかに友はなし マヌス監獄を生きたあるクルド難民の物語』ベフルーズ・ブチャーニー




 これまで18の言語に翻訳され、オーストラリを越えて、世界の難民が置かれた現状、さらには植民地主義への考察をめぐり、様々な領域横断的研究や実践への扉を開く一冊。
 イラン生まれのクルド人ジャーナリストで難民となったベフルーズ・ブチャニーが、オーストラリアの悪名高いマヌス島の難民収容所に6年にわたって収容された実体験をもとに書かれた物語。本書は収容施設の監視の目を掻い潜って携帯電話のテキストメッセージとして書かれ、支援者の手によって出版された。国家権力による恐怖と支配にさらされた人々の生を、鋭い観察眼と洞察力をもって克明につづったモノグラフでもあり、あらゆる抑圧に抗う究極の反戦文学、ポストコロニアル文学、そして収容所文学ともいえる。

 本書は、クルド人ジャーナリストで難民となった著者が、オーストラリアのマヌス島の難民収容所に6年以上にわたって収容された実体験をもとに書かれた一冊。国家権力による恐怖と支配、人間の尊厳を奪う無期限の拘留の問題性と、肉体と精神を蝕むような難民収容施設での生活内容なども含め、難民問題を考えさせられる内容です。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月09日

『室町ワンダーランド』清水克行




 都の路上でバクチに乱闘。殺人事件が起きても、お上はスルー。ホームパーティーの費用はワリカン…。室町〜戦国時代の専門家が、500年前の日本と現代社会の違いと共通点をやさしく解説。『週刊文春』連載を書籍化。

 500年前の日本は何でもあり!都の路上でバクチに乱闘、琵琶湖に海賊。目からウロコの日本史エッセイ。

 本書は、室町〜戦国時代の専門家が、500年前の日本と現代社会の違いと共通点をやさしく解説した一冊。足利義満の意外な素顔、家康が隠しておきたかったルーツ、伊達政宗「ずんだ餅伝説」の虚実など、知られざる日本史エッセイとして面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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2024年09月07日

『満腹の惑星 誰が飯にありつけるのか』木村 聡

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満腹の惑星 誰が飯にありつけるのか [ 木村聡 ]
価格:2,310円(税込、送料無料) (2024/9/7時点)




 西アフリカのリベリア難民、エジプト国内の少数派民族コプト教徒たち、バルカン諸国から東欧を漂流し続けるアフガニスタン・パキスタン・イラク・シリア難民や「ロマ」(ジプシー)、バングラディシュのロヒンギャ難民、ベトナムの旅芸人一座、日本近海の漁師たち……地球という惑星で必死に食い続ける人間たちがいる。そして腹を満たそうとする彼らの「御馳走」風景を各地に訪ねたフードドキュメンタリー。迫力のある写真からも味と香りが伝わってくる。

 人は生きるために「美味い」を追い求める。難民キャンプ、内戦が続く町、ゴミの町、川が汚染された町…世界各地の問題を抱える場所で、腹を満たそうと必死に生きる人々の「ご馳走」風景。まず、食べて考えたフードドキュメンタリー!

 本書は、内戦で故郷を追われたリベリア難民。宗教的なマイノリティであることからエジプト最大のスラムのさらにその一画、「ゴミの町」と称される地区に追いやられ生活する人々。あたかも「留置場」と化したバルカン半島の難民キャンプ。ミャンマー軍の攻撃から逃れるためにバングラデシュに避難してきたロヒンギャたち……のルポルタージュ。食べ物から見える世界を写真と共に紹介した一冊で、難民キャンプや内戦の続く場所、ゴミの町など問題を抱える地域の「ごちそう」を訪ね歩いたフードドキュメンタリーとして、読み応えある内容です。

【満足度】 ★★★★☆
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