アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。彼女といると、人は自分の「無意識」に気づいてしまう。自分の気持ちに、傷ついてしまう……。そして、彼女は去ってゆく。忘れられない言葉を残して。桜木紫乃の真骨頂、静かに刺してくる大人の物語。
アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。彼女といると、人は自分の「無意識」に気づいてしまう。自分の気持ちに、傷ついてしまう…。桜木紫乃の真骨頂、静かに刺してくる大人の物語。近づかずにはいられない。知らずにはいられない。「谷から来た女」2021年。大学教授の滝沢は、番組審議会でミワに出会う。大人の恋愛を楽しむ二人だが…。「ひとり、そしてひとり」2004年。夜のすすきので、専門学校の同期生だったミワに再会した千紗は、あるお願いをする。「無事に、行きなさい」2015年。ミワと付き合い始めて2年。倫彦は、将来を信じつつもどこか遠さを感じている。他、全6編。
本書は、アイヌ民族の女性デザイナーと、行き会う人々の人間模様を描いた連作短編集。ダムに沈んだ村からやってきたアイヌの紋様を背負った主人公の孤高な生き方に触れた者たちは、強く惹かれ、そして自らが知らずに背負っていたものに気づく姿を表現した物語でもありますが、自分との闘いを続ける主人公の毅然とした姿勢に圧倒され、淡々とした展開ではあるものの、北海道を舞台とした描写は見事でした。
【満足度】 ★★★★