2024年11月30日

『谷から来た女』桜木紫乃

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谷から来た女 [ 桜木 紫乃 ]
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 アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。彼女といると、人は自分の「無意識」に気づいてしまう。自分の気持ちに、傷ついてしまう……。そして、彼女は去ってゆく。忘れられない言葉を残して。桜木紫乃の真骨頂、静かに刺してくる大人の物語。

 アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。彼女といると、人は自分の「無意識」に気づいてしまう。自分の気持ちに、傷ついてしまう…。桜木紫乃の真骨頂、静かに刺してくる大人の物語。近づかずにはいられない。知らずにはいられない。「谷から来た女」2021年。大学教授の滝沢は、番組審議会でミワに出会う。大人の恋愛を楽しむ二人だが…。「ひとり、そしてひとり」2004年。夜のすすきので、専門学校の同期生だったミワに再会した千紗は、あるお願いをする。「無事に、行きなさい」2015年。ミワと付き合い始めて2年。倫彦は、将来を信じつつもどこか遠さを感じている。他、全6編。

 本書は、アイヌ民族の女性デザイナーと、行き会う人々の人間模様を描いた連作短編集。ダムに沈んだ村からやってきたアイヌの紋様を背負った主人公の孤高な生き方に触れた者たちは、強く惹かれ、そして自らが知らずに背負っていたものに気づく姿を表現した物語でもありますが、自分との闘いを続ける主人公の毅然とした姿勢に圧倒され、淡々とした展開ではあるものの、北海道を舞台とした描写は見事でした。

【満足度】 ★★★★
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『職場の同僚のフォローに疲れたら読む本』佐藤恵美




 20年間で1万人以上の相談実績。労働者メンタルヘルスの専門家が伝える。もう限界!!!つい仕事を抱えこんでしまう人の自分をねぎらう9つの方法。

 本書は、労働者メンタルヘルスの専門家である著者が、これまで20年間で1万人以上の働く人の相談に乗ってきた経験から、「これは効果がある」と実感している方法を厳選して紹介した一冊。特別目新しいことが書かれているわけではありませんが、対人関係での基本や疲れきらない技術など、精神的な疲れを軽くする内容が分かりやすく書かれています。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月29日

『最後の甲賀忍者』土橋章宏

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最後の甲賀忍者 [ 土橋 章宏 ]
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 幕末、江戸幕府が大政奉還をし、旧幕府と薩摩・長州の間で大きな戦が起ころうとしているその時、“元”忍びの里・甲賀は揺れていた。忍びとして戦国では大いに活躍したにもかかわらず、戦がなくなると時の権力者たちは難癖をつけて身分と領地を没収。気づけば忍びの術は失われ、百姓として困窮するまでになっていた。そんな折の大戦。忍びの技を再び世に示し、甲賀忍者ここにありと知らしめれば、武士の身分に返り咲けるのでは…。

 本書は、幕末を駆け抜けた「最後の忍者」の活躍を描くノンストップ・エンターテインメント時代小説で、甲賀忍者が、長らくの戦なき世を経て失われた忍びの術を取り戻し、幕末の動乱を前に、忍者としての最後の働きを見せる物語。エンタメとしての時代小説として、テンポが良く、実際の歴史を絡めた設定など史実に基づいた物語として楽しめました。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月27日

『教養としての世界の政党』山中俊之

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教養としての世界の政党 [ 山中 俊之 ]
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 移民、貧困、分断、介入、軍事、脱炭素…。複雑化する世界のニュースを読み解く。地政学だけでは不十分!保守とリベラルとポピュリズム、自国優先と国際協調。言語、宗教、民族、歴史…。未来を読み解くキーワードが満載!

 2024年は、国際政治の転換点! 政治・政策にかかわる人はもちろん、リスクとチャンスを見極めたい投資家や海外ビジネスに携わる人にも有益な情報が満載! ニュースでよく見聞きする「保守って何? リベラルって何?」という基本のキから平易に解説しています。

 本書は、地政学が注目を集める中、それだけでは読み解けない世界の構造を、世界各国の政党にフォーカスして解説した一冊。政党とは何か、保守やリベラルとは何かを解説しながら、世界各国の政党事情を紹介し、キリスト教の理想郷の模索と個人主義の北米、戦争と合従連衡の歴史が生んだ連立政党も多い西欧、共産主義の影響が残る東欧、権威主義のロシアと旧ソ連、非西欧型政治を模索する中国とアジア、南米・アフリカ各国の状況を分かりやすく解説しています。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月26日

『紺碧の海』梶よう子

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 八丈島生まれの留吉は、大工の棟梁をしている同郷の半右衛門の誘いで横浜へ移り、奉公先で商いを覚え異国語も学ぶ。偉ぶらず、やることは大胆で、強引さのある半右衛門に憧れていた留吉は「半右衛門の役に立ちたい」と思い続け、27年後ウィリアム商館で番頭を務めるまでになっていた。「鳥島へ行かないか?」半右衛門に声をかけられ島へ渡ると驚くべき光景が広がっていた。絶海の無人島で鳥を撲殺し、金を生み出す島へと変えた男、玉置半右衛門。その壮絶な人生とは!?

 本書は、明治時代に実在した八丈島出身の実業家・玉置半右衛門の生涯を、半右衛門を支え続けた菊池留吉の視点で描いた物語。鳥島ではアホウトリを乱獲してその羽毛で巨万の富を得て羽毛長者となり、南大東島ではサトウキビ栽培を成功させた一代記ですが、時代小説にエンタメを加えた面白い作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月25日

『警官の酒場』佐々木譲

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警官の酒場 [ 佐々木 譲 ]
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 捜査の第一線から外され続けた佐伯宏一。重大事案の検挙実績で道警一だった。その佐伯は、度重なる警部昇進試験受験の説得に心が揺れていた。その頃、競走馬の育成牧場に強盗に入った四人は計画とは異なり、家人を撲殺してしまう。“強盗殺人犯”となった男たちは札幌方面に逃走を図る…。それぞれの願いや思惑がひとつに収束し、警官の酒場にある想いが満ちていく…。

 本書は、『笑う警官』から続く「道警」シリーズ最新作であり、シーズン1の完結作。物語では、古いワゴン車の盗難事件と女性支援団体への嫌がらせ、競走馬育成牧場での強盗殺人事件……など、主人公で刑事の佐伯を始め、かつて道警の不正に対峙したメンバーが事件に取り組み、それらが徐々に絡み合い、警察内部の問題だけでなく、社会のひずみを取り込みながら、メンバーの人生を描くものへと幅を広げたストーリーにもなっています。道警シリーズを通しての面白さは勿論ですが、自作からの新たな展開にも期待します。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年11月23日

『首木の民』誉田哲也

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首木の民 [ 誉田哲也 ]
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 大学の客員教授、久和が窃盗と公務執行妨害の容疑で逮捕された。運転する車の中から、血の付いた他人の財布が発見されたのだ。久和は内閣府が設置する経済財政諮問会議に参加したこともある経済政策通だが、警視庁志村署の佐久間に対し「公務員を信用していない」と言い、取調べは進まなかった。一方、財布の持ち主を捜していた志村署の中田は、フリーライターの菊池に行き着く。菊池は交通事故を探っていたが、その事故には財務省のある人物が絡んでいた。

 本書は、警察小説でありながら、読み進めていくうちに税金のこと、国債のこと、財務省のことが次々と明らかになる社会派小説。著者の作品としては異質ともいえる物語でしたが、税収と国債、復興増税のカラクリ、官僚の天下りや日本は実は借金だらけじゃなかった等、財務省批判を上手くエンタメとして描いています。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月22日

『愚か者の石』河崎秋子

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愚か者の石 [ 河崎 秋子 ]
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 明治18年初夏、瀬戸内巽は国事犯として徒刑13年の判決を受け、北海道の樺戸集治監に収監された。同房の山本大二郎は、女話や食い物の話など囚人の欲望を膨らませる、夢のような法螺ばかり吹く男だった。明治19年春、巽は硫黄採掘に従事するため相棒の大二郎とともに道東・標茶の釧路集治監へ移送されることになった。その道中で一行は四月の吹雪に遭遇する。生き延びたのは看守の中田、大二郎、巽の三人だけだった。無数の同胞を葬りながら続いた硫黄山での苦役は二年におよんだ。目を悪くしたこともあり、樺戸に戻ってきてから精彩を欠いていた大二郎は、明治22年1月末、収監されていた屏禁室の火事とともに、姿を消す。明治30年に仮放免となった巽は、大二郎の行方を、再会した看守の中田と探すことになる。山本大二郎は、かつて幼子二人を殺めていた。

 本書は、明治時代の北海道の監獄を舞台とした長編小説。政治犯として収監された主人公と同房の男の物語ですが、開拓に囚人労働を必要としていた時代背景を含め、明治14年に北海道に拓かれた「樺戸集治監」が「樺戸監獄」と名を変えて大正8年に廃監されるまでの囚人徴労の歴史は重厚な物語で読み応えもありました。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月21日

『「やさしさ」の免罪符 暴走する被害者意識と「社会正義」』林 智裕




 能登半島地震、ALPS処理水、表現キャンセル、ワクチン…「情報災害」と「風評加害」は再び繰り返される。「社会正義」を掲げる身勝手な「やさしさ」が、あらゆる社会問題を解決困難にする。不平等な正義を売りつける「正しさ」の商人は誰だ?

 能登半島地震、表現・出版へのキャンセル、ALPS処理水海洋放出、原発再稼働、ワクチン…情報災害はなぜ再び繰り返されるのか? 被害者を護る「優しさ」を掲げて行動すれば当事者の現実と乖離しても「正しい」のか? 救われるべき弱者・被害者を決めているのは誰? 身勝手な「社会正義」と安易な優しさを免罪符に掲げた風評加害者は流言蜚語は拡散を続ける。国内にはびこるメディア、活動家、政治家らデマゴーグ、中・韓・北・露など国家規模の風評加害と我々はどう闘うべきか。

 本書は、風評に特定の感情を載せることで集団的悪意を持つに至るという情報災害の現象を粛々と解き明かす一冊。暴走する「被害者意識」や身勝手な「社会正義」とどう向き合うべきかについて分かりやすく書かれています。始めにクマの駆除に反対する人達のことが書かれていましたが、クマの駆除に反対する人は、自分の価値観に合うものに対して外野から文句を言っているに過ぎず、「やさしさ」とは何かも改めて考えさせられました。そして暴走する被害者意識についても、実は身近なところにも被害者意識が多くあり、身勝手な社会正義についても見事な指摘をしており、物事の見極めの大切さを実感した一冊です。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年11月20日

『間違いだらけの電力問題』山本隆三

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間違いだらけの電力問題 [ 山本隆三 ]
価格:1,650円(税込、送料無料) (2024/11/20時点)




 再エネ賦課金の負担増。場当たり的な補助金。2024年夏、観測史上1位の暑さで上がり続ける電気代。電気は足りるのか?

 人口減少社会の中で、社会基盤であるインフラを維持することは簡単でない。行き当たりばったりでエネルギー、電力問題に取り組んでいると、ある日突然電気がこなくなるかもしれない。電気は社会を支える重要なインフラであり、さまざまな視点、角度から電力問題について考えなければならない。国内外の電力、エネルギー事情に詳しい著者が、電力にまつわるいろいろな話を分かりやすく解説する。

 本書は、どうすれば電気代が下がるのか、停電期の危機を回避するにはどうすればよいのか、温暖化対策と脱炭素の行方はどうなるのか…など、様々な角度から電力問題を考え、国内外の電力、エネルギー事情に詳しい著者が、電力にまつわるいろいろな話を分かりやすく解説した一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月19日

『まちづくりにおける「対話型市民参加」政策の見た夢と到達点』コミュニケーション政策学会・監修




 2010年代の京都でトレンドとなった「カフェ型事業」の成果と課題を振り返る。京都市では、2000年代末から2010年代にかけて、市民誰もが気軽に参加できる交流の場「カフェ型事業」を推進する政策が講じられてきた。一方で、この先駆的な政策手法が何を目指し、どこに到達したのか、ということに関する研究は、未だ十分蓄積できていない。本書は、実際に本政策の現場に携わった市民活動団体メンバー、自治体担当者、社会学者らが深く語り合い、その10年以上にわたる取り組みから明らかとなった成果と課題を振り返る。市民参加型まちづくりの新たなスタートを志向したシンポジウムの実録!
 本書は、2022年3月に開催されたコミュニティ政策学会第21回シンポジウムの記録を書籍用に編集し、刊行されたブックレット。「対話型市民参加」とは「市民誰もがフラットに参加できる交流と対話の場を自治体が用意する政策」と要約できる取り組みについて、便宜的に名付けられたものと紹介されており、市民と行政、企業などのマルチステークホルダーが共につくる対話と交流の場づくり、これからのまちづくりやコミュニティのあり方について参考となる一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月18日

『物語を継ぐ者は』実石沙枝子

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物語を継ぐ者は [ 実石沙枝子 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2024/11/18時点)




 わたしがわたしであるために、物語がつづきを書いてと叫んでいる。少女から大人への……はてしない物語。

 中学生の本村結芽は、急死した伯母の部屋で、愛読する児童書の原稿を見つけ舞い上がる。『鍵開け師ユメ』シリーズは、孤独な小学校生活を過ごした結芽にとって、唯一の友達であり、心の拠り所だった。伯母は、その作者イズミ・リラだったのだ。最新作を夢中で読むが、しかし遺稿は未完のまま。どうしても続きが読みたい結芽は、自分で物語の続きを書くことを決意する。第一巻からページを繰り、主人公ユメの魔法の呪文を唱えると、物語の中へ飛び込めた結芽。ファンタジーの世界と現実を行き来できるようになり、自らの冒険を書き記していくが、何かが足りない。物語に息吹を吹き込むには、伯母の、イズミ・リラの人生を知らなければ―。現実を生きる自分、ユメとしての自分、伯母を探す自分。結芽の本当の冒険が、はじまった!

 本書は、亡き伯母の未完の遺作を書き継ぐ14歳の少女が、現実と小説の世界を行き来しつつ、成長していく物語。急死した伯母の作品の続きを考えるうちに物語世界と現実世界の中で少しずつ成長していくストーリーで、中高生向きの作品とは思いますが、主人公の成長がよく描かれる作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月16日

『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』村瀬秀信

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虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督 [ 村瀬 秀信 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/11/16時点)




 プロ野球経験なしのジイさんが指揮官って、なんでやねん!?1955年、突然の不可解な人事でチームの何かが狂い始めた。猛虎史に残る最大のミステリー、第8代監督・岸一郎の奇っ怪な真相に迫るエンタメ・ノンフィクション!

 本書は、昭和30年にプロ野球未経験でタイガースの監督になった岸一郎にせまったノンフィクション。熱烈なファンでも知る人の少ないこの出来事が、その後のタイガースの受難の始まりと言われるのはなぜなのか? そもそも「岸一郎」とは何者で、どこから現れ、どこへ消えていったのか? 大阪、満洲、敦賀に残るかすかな痕跡と、吉田義男、小山正明、広岡達朗ら当時を知る野球人たちへの執念の取材で、秘められた球史が次々と明かされるノンフィクションは、わずか33試合の采配でグラウンドから去るもチームに暗い影を落とし続けることになるきっかけをつくった岸の実像に迫る内容は印象に残る一冊です。

【満足度】 ★★★★
ラベル:村瀬秀信 虎の血
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2024年11月15日

『ダチョウはアホだが役に立つ』塚本康浩




 ダチョウはホンマにアホな鳥。でも地球を救ってくれるんです…。家族が入れ替わったことにも気づかないほど鈍感力が高いが、卵から取り出す抗体は感染症予防やがん治療、メタンガス削減に役立つとされ、世界中の企業が熱視線を送る。「ダチョウ博士」と呼ばれる著者が面白すぎる生態から抗体の最新研究までを説く、爆笑必至の科学エッセイ!

 「情熱大陸」「ガイアの夜明け」「激レアさんを連れてきた。」出演で大反響を巻き起こした「ダチョウ博士」こと塚本康浩氏。新型コロナウイルスを不活性化する「ダチョウ抗体マスク」開発者だ。だが子ども時代は鳥の飼育と動物の解剖に熱中し、吃音にも悩まされて小学校高学年まで不登校だった。おかげでひらがなの「え」もあやしい始末……。そんな鳥好き少年はいかにして世界を驚かす研究をする「ダチョウ博士」となったのか? ダチョウ抗体の開発から最新研究のこと、ダチョウの生態、ダチョウ博士の生態まで楽しくわかる科学エッセイ!

 本書は、ダチョウの卵から抗体を取り出すことに成功した教授である著者によるダチョウやそれまでのビジネス、半生を描いた一冊。ダチョウの面白い性質の解説や、ダチョウが古代から成長してないことが現代の医療や免疫にとても大きな影響を与えており、人類にとって大変重要な生き物であることが分かる面白いエッセイでした。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月14日

『体験格差』今井悠介

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体験格差 (講談社現代新書) [ 今井 悠介 ]
価格:990円(税込、送料無料) (2024/11/14時点)




 子どもたちから何が奪われているのか?これまで見過ごされてきた日本社会の課題。日本初の全国調査が明かす「体験ゼロ」の衝撃!

 本書は、習い事などの「体験」ができる子どもとできない子どもの現状をふまえて、その格差の解決策を提案する社会論。第一部では「お金」や「放課後」、「休日」といったテーマごとに「体験格差」を取り上げ、日本で初めて実施された「子どもの体験格差に特化した全国調査」を元に、「体験」の実態を解説。第二部では小学生の子どもをもつ9人の保護者から、家庭ごとに異なる実情を聞き取りながら、それぞれの家庭における「体験」の欠如と、それに対する工夫や努力を浮き彫りに。まとめとなる第三部では、「体験格差」を社会問題として捉え、是正に必要な施策を提案するとともに、現実に行われている支援や取り組みも紹介しています。親世代の体験不足、地域格差、公共施設の活用方法、体験費用の補助や支援など複数の問題を掘り下げた内容は非常に興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月13日

『動物たちは何をしゃべっているのか?』山極寿一/鈴木俊貴

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動物たちは何をしゃべっているのか? [ 山極 寿一 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2024/11/13時点)




 つい最近まで、動物には複雑な思考はないとされ、研究もほとんどされてこなかった。ところが近年、動物の認知やコミュニケーションに関する研究が進むと、驚くべきことが分かってきた。動物たちは何を考え、どんなおしゃべりをしているのか?シジュウカラになりたくて年の半分以上を森で暮らす研究者と、ゴリラになりたくて群れの中で過ごした研究者が、最新の知見をこれでもかと語り合う。そして、その果てに見えたヒトの本質とは!?

 つい最近まで、動物には複雑な思考はないとされ、研究もほとんどされてこなかった。ところが近年、動物の認知やコミュニケーションに関する研究が進むと、驚くべきことが分かってきた。例えば、小鳥のシジュウカラは仲間にウソをついてエサを得るそうだ。ほかにも、サバンナモンキーは、見つけた天敵によって異なる鳴き声を発して警告を促すという。動物たちは何を考え、どんなおしゃべりをしているのか? シジュウカラの言葉を解明した気鋭の研究者・鈴木俊貴と、ゴリラになりたくて群れの中で過ごした霊長類学者にして京大前総長の山極寿一が、最新の知見をこれでもかと語り合う。話はヒトの言葉の起源、ヒトという生物の特徴、そして現代社会批評へと及ぶ。そして、その果てに見えた、ヒトの言語にしかない特徴は?

 本書は、野鳥のシジュウカラの言葉を解明した気鋭の研究者である鈴木俊貴氏と、ゴリラの研究で知られる著名な霊長類学者にして京大前総長の山極寿一氏が、動物のコミュニケーション、ヒトの言葉の起源などについて、最新の知見を紹介しながら語り合う一冊。ゴリラが教わった手話を使い、昔人間に捕らえられた時の様子を語り始めたり、シジュウカラの話す言葉には文法が存在していたりと動物が持つ驚くべき能力が数多く明かされ、動物の「会話」という行為を起点に、ヒトを含む動物のコミュニケーション全般にまで広がり、ヒト以外の動物も高度で複雑なコミュニケーションスキルを駆使している点、動物は概ね環境への適応でそのスキルが変容してきた点、社会構造の複雑さに比例して伝達スキルも複雑化した点など知らなかった世界を堪能しました。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年11月12日

『自民党と裏金 捜査秘話』村山 治

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自民党と裏金 捜査秘話 [ 村山 治 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2024/11/12時点)




 再注目の「金丸5億円事件」が現代に問うもの。政治とカネをめぐる腐敗は日本システムに根付いた業病だ。放置すれば、ますますこの国は活力を失う。どうすればいいのか。先例がある。金融市場の監視システムがそれである。

 久々に東京地検特捜部の本格的な動きが注目された自民党安倍派の裏金キックバック事件。しかし、立件されたのは陣笠議員3人だけ。安倍派の幹部たちは逃げ切ろうとしている。なぜ安倍派5人衆は捕まらないのか。かつて日本中を騒がせた「政界のドン」金丸信元副総裁の闇献金事件をいま一度掘り起こすことで、古くて新しいテーマ「政治とカネ」の生々しい舞台裏と捜査の限界を、検察取材の第一人者である元朝日新聞記者が鋭く描き出す。まさにタイムリーな全国の有権者必読の一冊!

 本書は、日本中を騒がせた「政界のドン」金丸信元副総裁の闇献金事件をいま一度掘り起こすことで、古くて新しいテーマ「政治とカネ」の生々しい舞台裏と捜査の限界を、検察取材の第一人者である元朝日新聞記者が鋭く描き出したルポルタージュ。金丸事件から今回の派閥裏金事件にいたる間の制度の転換と政治資金事件史に触れ、新たな政治資金監視システムを提言する終章は読みごたえがありました。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月11日

『消費される階級』酒井順子

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消費される階級 [ 酒井 順子 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2024/11/11時点)




 序列、区別、差別。表からは消え、姿を変えた「凸凹」は世の中のあちこちに。あの人より、上か、下か。日本人の階級意識をあぶり出す21の視点。

 あの人より、上か、下か…「差別や格差を無くして、様々な違いを持つ人々が全て横並びで生きていきましょう」となった昨今、表面上は序列、区別、差別は消えたものの、姿を変えた「凸凹」は、いまだ世の中のあちこちに。『負け犬の遠吠え』『下に見る人』『男尊女子』『家族終了』など、時代を切り取る名著の書き手が、日本人の根深い階級意識をあぶり出す。

 本書は、様々な格差についてをエッセイとしてまとめた一冊。学歴、容姿、デジタルへの順応度、恋愛、有名度合いなどなど、カテゴリとしては目新しいものはないが、改めて社会の価値観は変遷していると感じた内容で、独特な視点の内容は面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月09日

『資源と経済の世界地図』鈴木一人

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資源と経済の世界地図 [ 鈴木 一人 ]
価格:2,365円(税込、送料無料) (2024/11/9時点)




 複雑化するエネルギー問題を、国際情勢や地政学的要素を経済から捉え直す…。地政学×経済学の決定版。

 なぜ今、資源を知るために貿易や世界秩序への理解が必要なのか。複雑化する資源の問題。国際情勢や地政学的要素を経済からとらえ直す。

 本書は、現在の経済安全保障課題が分かりやすく解説された一冊。地政学と経済学の観点から世界で何が起きているのか、資源エネルギー問題や資源に匹敵する戦略物資と化した半導体についてや、有効な手を打てなくなりつつある国連の立ち位置なども含め、論点が上手く整理されていました。

【満足度】 ★★★★
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2024年11月08日

『教養としての西洋建築』国広ジョージ

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教養としての西洋建築 (単行本) [ 国広ジョージ ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/11/8時点)




 世界70カ国を訪れ、世界で建築文化を講義している著者が、現代建築までを5時間で153の写真とともに語る。

 本書は、世界70カ国を訪れ、世界で建築文化を講義している著者による、現代建築までの「建築の読み方」。教養という視点から建築の読み方を語り、西洋建築史を石の時代から現在まで時系列に分かりやすく、建物の写真付きで解説しており、建築様式が時代と共に変化している事が良く理解できました。

【満足度】 ★★★★
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