2024年12月31日

『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』角幡唯介




 百戦錬磨の探検家を待ち受けていたのは、恐るべき混沌だった…。地図を持たない…それだけで日高の山は「極夜」を超える「魔境」と化した。『極夜行』と対をなす、冒険登山ノンフィクション!

 グルメサイトや地図アプリの検索結果をなぞるだけの日常で生は満たされるのか。情報に覆われた現代社会に疑問を抱いた著者は、文明の衣を脱ぎ捨て大地と向き合うために、地図を持たずに日高の山に挑む。だが、百戦錬磨の探検家を待ち受けていたのは、想像を超える恐るべき混沌だった。前代未聞の冒険登山ノンフィクション。

 本書は、288ページの読み応えのあるノンフィクションで、国立公園化された日高山脈を地図を持たずに冒険するという前代未聞の試みを記録したもの。その結果、著者が感じた自由さと不安の矛盾した感情、最終的に影響を与えた経験が描かれています。道標もなしに、ただ大地の声に耳を傾けながら進む様子、これまでの冒険者としての活動を通じて体験した様々な出来事、地図を持たない登山の難しさやその冒険行為の魅力、スマホやインターネットを通じて得られる情報に依存しきった日常生活に対する疑問…など、日高山脈への挑戦から自身の心に想像を超える重圧を含め、どのように探検家である著者の価値観や視点が変わっていくのかは読みごたえ満載です。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年12月30日

『月ぬ走いや、馬ぬ走い』豊永浩平

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月ぬ走いや、馬ぬ走い [ 豊永 浩平 ]
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 先祖の魂が還ってくる盆の中日、幼い少年と少女の前に、78年前に死んだ日本兵の亡霊が現れる……。時空を超えて紡がれる圧巻の「語り」が、歴史と現在を接続する!

 本書は、第67回群像新人文学賞受賞作。物語は戦争末期から現在まで約80年にわたる沖縄の歴史を戦時中の日本兵から今の沖縄に生きる中高生まで、時空を超えた多彩な14人の「語り」で紡いた作品。改行もなく、沖縄言葉や現代の若者言葉が溢れ、読みにくい印象を受けましたが、沖縄の歴史を強く感じる作品です。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月27日

『食で読む東方見聞録』遠藤雅司

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食で読む東方見聞録 [ 遠藤 雅司 ]
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 マルコ・ポーロの旅路に沿って、中世世界の食を巡る新感覚の歴史読本登場!モンゴル帝国によって東西の文化が行き交った13世紀、食文化や料理はどう変化したのか?文献から当時の料理をレシピ化!作って味わえる体験型教養!

 本書は、マルコ・ポーロが『東方見聞録』に記録を残している地域や都市に焦点をあて、それぞれの地域の歴史的な料理書を紐解きながら、13世紀当時の料理や食文化について紹介した一冊。モンゴル帝国の影響下で、東西の交流が活発になり始めたこの時代にどんな変化や伝播が起こっていたのか、地域ごとにどんな違いが見られたのかなど、マルコ・ポーロ一行と一緒に冒険をするような視点も楽しみながら、食という身近なテーマを通して当時の世界を垣間見る内容でも冒頭にカラーでレシピページが掲載され、実際に歴史上の料理を再現してみることもでき、レシピと読み物で2度おいしい、知的好奇心をくすぐる1冊です。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年12月26日

『詐欺師と詐欺師』川瀬七緒

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詐欺師と詐欺師 (単行本) [ 川瀬七緒 ]
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 海外で荒稼ぎして帰国した詐欺師の藍は、ある政治家のパーティーで知り合ったみちるに興味を抱く。みちるは親の仇を捜しており、そのために金がいるという。仇とは、世界的企業に成長した戸賀崎グループ筆頭株主の戸賀崎喜和子。隙だらけの復讐計画を聞いた藍は、みちるに協力することになるが…。

 本書は、2人の女性詐欺師が復讐のために世界的企業グループの実質的オーナーを標的に華麗な詐欺を仕掛けるサスペンス小説。詐欺師と詐欺師の騙し合いの結末がやや中途半端でしたが、展開が面白く、続編にも期待したい。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月25日

『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』印南敦史




 「本が売れない」「読書人口の減少」といった文言が飛び交う現代社会。だが、書店に足を運べば多くの人が本を探し、図書館にも人がいる。いま目を向けるべきは、もっと別のところにあるのかもしれない…。純粋に本という存在が好きな稀代の読書家が問いなおす、「読書の原点」。

 「最近の人は本を読まない」というような発言は、それが事実である一方、もうひとつの事実を覆い隠し、歪めてしまう可能性をはらんでいます。つまり否定的な論調は、「程度の差こそあれ、誰でも過去に読書体験はあり、無意識のうちにそこからなにかを学んでいた」という事実を覆い隠してしまうということです。

 本書は、改めて本を読むとはどういうことかを考えさせてくれる一冊で、「習慣化できれば読書は楽しくなる」という点や「読書はマインドフルネスにつながる」というのはとても納得しました。読書習慣の方法なども参考にもなり、より知的好奇心を満たしてくれる内容も良かったです。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月24日

『記者と官僚 特ダネの極意、情報操作の流儀』佐藤優/西村陽一




 暴こうとする記者。情報操作を目論む官僚。33年の攻防を経て互いの手の内を明かした驚愕の「答え合わせ」。

 本書は、元記者と元官僚が、お互いの手の内を明かし、腹を割って語り合った対談集。霞が関とジャーナリズムの関係など興味深い内容が多く、特に元朝日新聞編集局長の西村氏による朝日新聞の慰安婦問題不正記事については読みごたえがありました。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月23日

『北朝鮮に出勤します 開城工業団地で働いた一年間』キム・ミンジュ




 毎週月曜の朝、ソウル市内でバスに乗り込み、軍事境界線を越えて北朝鮮に出勤。平日は北の職員たちと“格闘”し、週末は韓国に戻る。南北経済協力事業で北朝鮮に造成された開城工業団地。二〇代の韓国人女性が開城で経験した特別な一年間と、北の人のありのままの素顔を綴ったノンフィクション。

 本書は、韓国と北朝鮮の経済協力事業、開城工業団地が操業停止(2016年2月)になるまでの約1年間、同団地で勤務した韓国人女性が自らの体験をつづったノンフィクション。一般的な北朝鮮の人たちの仕事ぶりや、韓国の人が北朝鮮をどう見ているかなども垣間見ることができ、敵対する二国の人々のリアルが興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月21日

『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』円城 塔

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 2021年、名もなきコードがブッダを名乗った。自らを生命体であると位置づけ、この世の苦しみとその原因を説き、苦しみを脱する方法を語りはじめた。そのコードは対話プログラムだった。そしてやがて、ブッダ・チャットボットの名で呼ばれることとなる……機械仏教の開基である。はたして機械は救われるのか? 上座部、天台、密教、禅……人が辿ってきた仏教史を、人工知能が再構築する、壮大な”機械救済”小説。

 本書は、2021年に名もなきコードがブッダを名乗り、そのブッダ・チャットボットが語る機械仏教の発祥と発展を描いたSF仏教小説。AIによる機械仏教が、少乗・大乗、天台、唯識、密教、法華経、禅、浄土など仏教の歴史をなぞっていくストーリーで、仏教とSFが面白く融合されていて、更にユーモラスに表現されており、作品としても十分に楽しむことができました。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年12月20日

『海を渡る サムライたちの球跡』長谷川晶一




 アメリカで奮闘したサムライ9人の告白…。日本人メジャーリーガーの栄光と苦闘。

 アメリカを席巻している大谷翔平。彼の活躍に遡ること60年前ひとりの男が海を渡った。マッシー村上こと、村上雅則、彼の成功で拓かれた「メジャーリーガーへの道」。その後、約60人がかの地で挑戦と戦いを続けた。本書は、マッシー村上を筆頭に、五十嵐亮太、福留孝介、マック鈴木、岡島秀樹、西岡剛、井川慶、大家友和、井口資仁、9人の証言を収録し、その栄光と苦闘を浮き彫りにする。

 本書は、日本人メジャーリーガーとして奮闘を重ねた9人の男たちの物語。「異国で戦うこと」とはどのようなことなのか? 戦後20年、日米の格差の大きかった時代に単身でメジャーリーグに乗り込んだマッシー村上こと村上雅則を含め、自分の持てる力を出し切り、異国の地で戦い抜いた日本人メジャーリーガーの苦闘は興味深い内容で、スポーツノンフィクションとして読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月19日

『アレルギー 私たちの体は世界の激変についていけない』テリーサ・マクフェイル




 私たちの体は世界の激変についていけない。増え続ける花粉症、小麦アレルギー、アトピー、喘息…。2030年には2人に1人が患者!犬や猫が人間に対してアレルギーを起こす/アレルギー患者がかかりにくい「がん」がある/ダニに咬まれて肉アレルギーになることがある。気鋭の医療人類学者だから書けたアレルギー研究の最前線。

 本書は、世界中のアレルギー研究者や患者、自身の経験談など膨大なインタヴューをまとめた一冊。アレルギーとは何かから始まり、効果のある治療法なども書かれていますが、花粉症、喘息、アトピー、食物アレルギーなど、2030年には2人に1人が患者になると言われているアレルギーの実態がまとめられています。

【満足度】 ★★★☆
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2024年12月18日

『灯』乾 ルカ

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 この世界を、私はひとりで生きたい……。わかり合えない母親や、うざいクラスメート。誰とも関わらずひとりで生きたい、人生の“スヌーズ”を続ける相内蒼、高校2年生。その出会いは彼女の進む道を照らしはじめた……。北の街・札幌を舞台に、臨場感溢れる筆致で激しく記憶と心を揺さぶり、光溢れる傑作青春小説!

 本書は、世間との隔たりに暗澹たる思いでいた、どこまでも孤独を愛する主人公が、心のよりどころを見い出し、その光明にむけ果敢に踏み出すさまを描いた作品。高校生の瑞々しさや危うさ脆さみたいなものが随所に感じられ、心の揺れ動きなども含めて今風の青春小説でした。

【満足度】 ★★★☆
ラベル:乾 ルカ
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2024年12月17日

『女の国会』新川帆立

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女の国会 [ 新川 帆立 ]
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 国会のマドンナ“お嬢”が遺書を残し自殺した。敵対する野党第一党の“憤慨おばさん”は死の真相を探りはじめる。議員・秘書・記者の覚悟に心震える、政治×大逆転ミステリ!

 野党第一党の高月馨は窮地に追い込まれた。敵対関係にありつつも、ある法案については共闘関係にあった与党議員・朝沼侑子が自殺したのだ。「自分の派閥のトップも説得できていなかったの?法案を通すつもり、本当にあったの?」死の前日の朝沼への叱責が彼女を追い詰めたのではないかと批判が集まり、謝罪と国対副委員長の辞任を迫られてしまう。だが、長年ライバル関係を築いてきた高月には朝沼の死がどうも解せない。朝沼の婚約者で政界のプリンス・三好顕太郎に直談判し、共に死の真相を調べることに…。

 本書は、野党の国会議員、政策秘書、新聞記者、地方市議会の議員が、与党国会議員の死の謎を調べる国会が舞台のミステリ。国政をバックに女性たちが苦闘する展開の作品ですが、政治の裏側を上手く描いているとは思うものの、性同一性障害の描き方がちょっと強引すぎた点と、ラストのどんでん返しが少々残念でした。

【満足度】 ★★★
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2024年12月16日

『わたしの知る花』町田そのこ




 犯罪者だと町で噂されていた老人が、孤独死した。部屋に残っていたのは、彼が手ずから咲かせた綺麗な“花”―。生前知り合っていた女子高生・安珠は、彼のことを調べるうちに、意外な過去を知ることになる。淡く、薄く、醜くも、尊い。様々な花から蘇る記憶…。これは、謎めいた老人が描く、愛おしい人生の物語。

 本書は、女子高生の安珠と孤独な老人・葛城平の半生に秘められた5篇の人間模様から浮かび上がる切なくも愛おしい連作集。高校生・安珠が街に現れた“絵描きジジイ”こと葛城平が気になって話しかけたことをきっかけに、自らは多くを語らなかった老人の人生が、関りのあった5人の語り手によって浮かび上がってくる物語ですが、数奇な運命をたどった老人平と関わった女性たちの人間ドラマが非常に深い内容で、心に沁みるストーリーでもありました。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月14日

『ルポ 超高級老人ホーム』甚野博則

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ルポ 超高級老人ホーム [ 甚野 博則 ]
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 カネさえあれば幸せに死ねるのか…。数億を超える入居金を支払い、至れり尽くせりの生活を享受する超富裕層たち。秘密のベールに包まれた“超高級老人ホーム”の実態に迫る、驚愕のノンフィクション!

 入居金3億円超え。超富裕層のみが入れる「終の棲家」は桃源郷か、姥捨て山か。元『週刊文春』エース記者が踏み込んだ、超高級老人ホームという聖域。死に場所さえステータス化する金持ち老人たちのマウンティング争い、悪徳業者への潜入取材など、日本で初めて「高級老人ホーム」を取材した衝撃のルポルタージュ。

 本書は、元『週刊文春』エース記者の著者が超富裕層向け高級老人ホームへの徹底取材し、その実態に迫ったルポルタージュ。数億円もの入居金を支払って超富裕層が晩年を過ごす超高級老人ホームとは、いったいどんなところなのか、全国約10施設を訪ね、入居者、介護スタッフ、施設の運営者にインタビューし、大金を払って終の棲家を手に入れた人たちの多様な姿が書かれています。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月13日

『雪渡の黒つぐみ』桜井真城

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雪渡の黒つぐみ [ 桜井 真城 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/12/13時点)




 燃える城。裏切りのくノ一。山に潜むは異教の徒。横手城を炎上させた謎の新興宗教・大眼宗教祖「厳中」とは誰だったのか?伴天連弾圧が進む寛永二年。どんな相手の声も真似できる声色遣いの景信は、女忍者の紫野を寝返らせ伊達藩の動向を探っていた。紫野が何者かに殺され、伴天連が潜む白根金山へと乗り込んだ景信は、遊女として売られてきた鈴音と出会う。父親が大眼宗の教祖とともに失踪し、以来天涯孤独の身と語る鈴音に紫野の面影を重ねる景信だったが、その声を狙って忍び寄る者がいた…。伴天連、大眼宗、伊達成宗。すべてが繋がるその先で国を揺るがす巨大な陰謀が明らかになる!

 本書は、第18回小説現代長編新人賞受賞作。物語は江戸時代初期の東北地方を舞台に、宗教と領土争いをめぐる忍者エンタメといえる時代小説でしたが、エンタメとしては面白い作品ですが、会話文が全て東北弁となっているため読みにくさを感じた一冊です。

【満足度】 ★★★
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2024年12月12日

『もしも豊臣秀吉がコンサルをしたら』眞邊明人

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もしも豊臣秀吉がコンサルをしたら [ 眞邊明人 ]
価格:1,650円(税込、送料無料) (2024/12/12時点)




 祖父のコンサル会社を継いだ武田倫太郎は幼少期から感性が鋭く、中学の歴史の授業中に、なぜか源義経の霊を見てしまう。以降、身近な霊と対話するようになった倫太郎は、ある大企業の難しい案件を担当することになる。その場に現れたのは、あろうことか莫大な財を築いたマネーゲームの天才にして空前の成り上がり者、豊臣秀吉だった……。生きることに虚しさを感じ、不器用で人づきあいも苦手な倫太郎は、秀吉に後押しされ難しい案件を切り抜けたが、次々と新たな課題が押し寄せる。そんな状況で倫太郎の心身には、ある変化が……。

 本書は、ビジネス書に触れながらわかりやすくストーリー仕立てにした作品で、経営をテーマに過去の偉人のアドバイスを元に成長させていく物語。前作の『家康が総理になったら』が面白かったので、期待して読み始めましたが、エンタメとしては面白かったですが、ビジネス小説というよりも戦国武将ファンタジー小説という感じで、もう少しビジネスに特化してほしかったです。

【満足度】 ★★★
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2024年12月11日

『100年のレシピ』友井 羊

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100年のレシピ [ 友井 羊 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/12/11時点)




 終戦後、荒廃から立ち直る日本において、「食」から家庭を応援する女性がいた。料理研究家である彼女は、様々なレシピを発表し、日本中の女性から支持を集める。そんな「伝説の料理研究家」が現代まで歩んできた道を、それぞれの時代の社会背景とつくられてきた料理を絡めて描く連作ミステリ。

 料理が苦手な大学生・理央は、著名な料理研究家・大河弘子が設立した「大河料理学校」に通う。そこで理央は弘子の曾孫・翔吾と出会う。ある日理央は、ショートケーキとガトーショコラを購入して食べるが、味がおかしい。ショートケーキの甘さが薄く、ガトーショコラはまるで粘土を食べているかのよう。そのことを翔吾に話すとある人を紹介するという。その人とは、大河弘子…。なんでも、身の回りで起きた不思議な事件をきれいに解決してくれるらしいのだが…。

 本書は、昭和・平成・令和の時代を生きた人気料理研究家の人生を、各年代の日常に起きた謎を解決しながら辿る連作ミステリ。謎解きを主軸としながら、実践的な料理の知識やレシピ、戦後日本史、さらには女性の生き方の変化も織り込んで読ませる味わい深いエンタメ作品です。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月10日

『二人の誘拐者』翔田 寛

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二人の誘拐者 [ 翔田 寛 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/12/10時点)




 静岡県北の廃村で、誘拐されたまま行方不明になっていた少女の白骨遺体が見つかった。10年前、静岡県警は誘拐犯に身代金1千万円を奪われ、少女は戻らず、事件は迷宮入りとなっていた。静岡県警静岡中央署の日下悟警部補が捜査に着手すると、当時は判明し得なかったいくつかの事実が明らかになる。腎臓に持病を抱えていた被害者の事情、誘拐事件関係者のその後、遺体が見つかった廃村の「子供の泣き声が聞こえる」という噂。静岡県警は実直な捜査で核心に迫るが、新たな事件が起きて…。

 本書は、日下警部補が遭遇した誘拐事件を描いた『真犯人』『人さらい』に続く日下警部補シリーズ第3弾。物語は、10年前の誘拐事件と臓器移植を絡め、捜査員達の地道な活躍が描かれており、様々な人間模様が展開していく展開は読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★
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2024年12月09日

『バリ山行』松永K三蔵

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バリ山行 [ 松永K三蔵 ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2024/12/9時点)




 会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的な生の実感を求め、山と人生とを重ねて瞑走する純文山岳小説。

 古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で職場で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。

 本書は、第171回芥川賞受賞作。物語は神戸を舞台に、会社員の波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加し、登山の面白さに目覚めます。同時に社内で変わり者扱いされている妻鹿が、登山路を外れる難易度の高い登山「バリ」をしていることを知り、興味を持つように。一方、仕事では取引先とのトラブルやリストラ騒ぎなど、様々な事件に見舞われ、葛藤する心模様が並走して描かれる作品。芥川賞作品としては読みやすい作品でもあり、純文学として山登りを人生に例える表現は読みごたえもありました。

【満足度】 ★★★★☆
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2024年12月07日

『2004年のブロ野球 球界再編20年目の真実』山室寛之

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2004年のプロ野球 球界再編20年目の真実 [ 山室 寛之 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2024/12/7時点)




 「白馬の騎士だ。監督は君が選べ」「パ4球団もセに混ぜて」。近鉄・オリックス合併、史上初のスト、楽天の新規参入、ソフトバンクによるダイエーホークス買収……セ・パ2リーグの枠組みが大きく揺らいだ「史上最大の危機」には、今なお大きな謎が残されている。当事者による生々しい初証言と極秘文書を重ね合わせ、ジグソーパズルを組み立てるように定説を一新する迫真のドキュメント。

 本書は、今から20年前にプロ野球界を襲った「球界再編騒動」の真実に迫ったノンフィクション。なぜストライキは決行されてしまったのか。楽天とソフトバンクの連続参入の舞台裏では何が起きていたのか。1リーグ制に傾いた流れは、いかにして2リーグ制に落ち着いたのか。著者は、新聞、雑誌、書籍など活字文化が残した膨大な記録を丁寧に整理し、複数の球団の首脳陣から新たに実名で証言を取り、ばらばらに起こったように見える出来事の因果関係を明らかにしていきます。筆者は読売新聞社会部記者から本社広報部長、巨人軍球団代表などを歴任し、球界との太いパイプと綿密な取材で新証言、極秘資料を掘り起こし、複雑に絡み合った再編騒動をひも解いていきます。巨人戦の放映権を巡る各球団の駆け引き。1リーグ制の旗頭のように言われた巨人・渡邉恒雄オーナーと西武・堤オーナーの同床異夢の思惑。また白馬の騎士≠ニして近鉄買収に名乗りをあげた堀江貴文社長率いるライブドアではなく、なぜ新規参入球団は楽天だったのか…など、20年目にしてあぶり出された新事実の数々が非常に興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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