2025年02月28日

『ポップ・フィクション』堂場瞬一

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ポップ・フィクション [ 堂場 瞬一 ]
価格:2,090円(税込、送料無料) (2025/2/28時点)




 大正時代、出版華やかなりし頃。「市民公論」編集部の松川は、窮地に立たされていた。担当した企画のせいで、筆者が大学を追われることになったのだ。奔走する松川に、主幹は驚きの決断を下す。同じころ、当代きっての人気作家・菊谷は、「書きたいものを書く」ための雑誌を立ち上げようとして…。「100万部突破の常勝雑誌を作る」宿願は叶うのか?エンタメ界のトップランナーが送る、出版お仕事小説。

 本書は、大正から昭和初期にかけての華やかだった出版界を舞台に描いた伝説の雑誌の編集者の奮闘物語。『中央公論』『文藝春秋』『キング』をモデルに、3誌を渡り歩くことになる編集者・松川というキャラクターを主人公に、当時の出版界や文壇の雰囲気を映していて、時代背景と共に楽しめました。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月27日

『二人一組になってください』木爾チレン

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二人一組になってください [ 木爾チレン ]
価格:1,815円(税込、送料無料) (2025/2/27時点)




 卒業式直前に始まったデスゲーム(特別授業)あなたに本当の友達はいる?誰かと手を繋がないと死ぬ……。女子高のクラス内カーストが崩壊し、裏切り、嫉妬、憧れ、真実が手を取り合う。『みんな蛍を殺したかった』の著者が青春と友情の極致を描く最高傑作!

 「このクラスには『いじめ』がありました。それは赦されるべきことではないし、いじめをした人間は死刑になるべきです」とある女子高の卒業式直前、担任教師による“特別授業”が始まった。突如開始されたデスゲームに27人全員が半信半疑だったが、余った生徒は左胸のコサージュの仕掛けにより無惨な死を遂げる。自分が生き残る存在だと疑わない一軍、虚実の友情が入り混じる二軍、教室の最下層に生息し発言権のない三軍―。生き残って卒業できるのは、果たして誰か?

 物語は、女子高の卒業式に二人一組になって余った人が死んでいくデスゲームを描いた作品。女子高生たちのスクールカーストはリアルで、読みやすく一気に読み進みましたが、『バトルロワイヤル』のような迫力と緊迫感は薄く、設定は良かったものの、物足りなさも感じました。

【満足度】 ★★★☆
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2025年02月26日

『不夜島(ナイトランド)』荻堂 顕




 「架空の戦後沖縄の混沌としたエネルギーに、ただただ茫然自失した。まさか、サイバーパンクに涙する日が来るとは。疾走するストーリーの中、本物の魂が燦めいている」作家 貴志祐介氏、絶賛。『ループ・オブ・ザ・コード」の著者が紡ぐ、未体験ゾーン突入の歴史ハードボイルド超大作。

 第二次世界大戦終結後、米軍占領下の琉球。その最西端の与那国島では、一本の煙草から最新鋭の義肢まで、ありとあらゆるものが売買される密貿易が行なわれていた!腕利きのサイボーグ密貿易人・武庭純は、ある日顔馴染みの警官からとんでもない話を耳にする。終戦とともに殺人鬼と化した元憲兵が島に上陸したというのだ。元憲兵探しに乗り出した武だったが、時を同じくして、謎のアメリカ人女性から「姿も形も知れない“含光”なる代物を手に入れろ」という奇妙な依頼が舞い込んでくる。相棒の島人とともに奔走する武は、やがて、世界を巻き込む壮絶な陰謀に巻き込まれていく…。琉球と台湾の史実をもとに描き出す、サイバーパンク巨編!

 本書は、第77回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門受賞作。第二次世界大戦後の米軍占領下にある琉球・与那国島を舞台に、機械の身体を持つ男が二つのミッションに挑戦するサイバーパンク。戦争がもたらした支配・被支配の構図、アイデンティティと居場所の簒奪、機械の身体を持つ人間というフィクションの背後にある史実…と展開での緊張感はエンタメとしてとても面白く、近未来的な要素と沖縄・台湾の文化、言語がまじりあった独特の世界観は読みごたえも存分にありました。

【満足度】 ★★★★
ラベル:荻堂 顕 不夜島
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2025年02月25日

『図書館を建てる、図書館で暮らす 本のための家づくり』橋本麻里/山本貴光




 書物と暮らす。デジタルだけでは実現できない「本のある空間」の効用とは?蔵書と家と人との関係に悩むすべての人へ。

 図書館に住みたい! 2019年末に建ちあがった、膨大な蔵書を収める家〈森の図書館〉。2人の施主が、普請のプロセスや、そこで過ごすなかで考えたことをつづり、デジタルだけでは実現できない、「本のある空間」の効用をさぐる。書架の写真はもちろん、建築家の寄稿や図面類も多数収録。蔵書と家と人との関係をめぐる実践的ドキュメント。

 著者は、学芸プロデューサーであり美術にまつわる執筆・監修を幅広く手掛ける橋本麻里さんと、文筆家・ゲーム作家の山本貴光さんで、仕事柄膨大な蔵書を抱えた二人が、「本と暮らす」を最優先にした家づくりに取り組んだプロジェクトを追ったドキュメンタリーが本書。設計を担当した建築家の三井嶺さんと共に、「森の図書館」と名付けられた自宅兼仕事場を建てるまでが三人それぞれの文章で綴られており、多くの写真と共に紹介されるこのユニークな建築プロジェクトは興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月24日

『地方消滅2 加速する少子化と新たな人口ビジョン』人口戦略会議編




 2014年刊行の『地方消滅』は、人口減少が引き起こす現実を私たちに突きつけるものであった。本書は、それ以降の変化を踏まえ、この国の課題を照らす。

 2014年刊行の『地方消滅』と、そこで示した896の「消滅可能性都市」リストは、衝撃をもたらした。そらから10年を経て、東京の出生率は0.99になるなど、なお少子化は加速する。このままだと2100年に人口は6300万人、高齢者が4割の国になりかねない。本書は、全国1729自治体を9つに分類。「ブラックホール型自治体」の特性なども分析し、持続可能な社会へ向かうための戦略とビジョンを打ち出す。

 本書は、2014年刊行の『地方消滅』以降の変化を踏まえ、最新のデータから、各界の有識者の知見を踏まえ、超少子化や自治体が抱える困難などを論じた一冊。政府の対応、自治体の動きは勿論ですが、国民一人一人の意識改革も必要であり、持続可能な地域の活性化と再生に向けて取り組みが大きな課題であるとも思います

【満足度】 ★★★★☆
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2025年02月22日

『対馬の海に沈む』窪田新之助




 JAで「神様」と呼ばれた男の溺死。執拗な取材の果て、辿り着いたのは、国境の島に蠢く人間の、深い闇だった。2024年第22回開高健ノンフィクション賞受賞作。

 人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………? 職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。

 本書は、第22回開高健ノンフィクション賞受賞作。長崎県対馬市の対馬農業協同組合(JA対馬)を舞台にした共済金不正流用問題を題材に、疑惑の渦中に運転する車ごと海に転落、溺死した元職員の男性の軌跡を追い、JAの構造上の問題や人間の業を描いたノンフィクションですが、会社という組織、ムラ社会の仲間意識、嫉妬と欲望…など、ずる賢い人間社会の縮図からの事件は、地方にとっての地域独特の閉鎖性を強く感じましたし、関係者への丁寧な取材で導き出された事件の背景と被害者・加害者に、暗澹たる気持ちになります。著者のジャーナリズム精神を強く感じたノンフィクションでもあり、事件の真相の闇の深さを問題の奥深さを見事に追及しています。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月21日

『データ・ボール アナリストは野球をどう変えたのか』広尾 晃




 今やプロ野球の現場では、あらゆることがデータで分析されている。選手の評価軸も変わり、打率や打点、投手の勝利数といった従来型の指標は、MLBではもはや重視されていない。野球は、従来とは違うスポーツに進化したのだ。こうした「データ・ボール革命」の担い手となったのがアナリストたちだ。プロ野球の現場の隅々にまで入り込んだ彼らによって、野球はどう変わってきたのか。その深層をレポートする。

 本書は、野球のデータ革命を担ったアナリスト達に直接取材すると共に、著者の独自の考察も加え、近年の野球を席巻する「データ化」の流れを振り返る一冊。野球界におけるデータの重要性の歴史と本当に重要な指標の現状に加え、野球におけるデータ提供・分析が一つの巨大な産業になっている実例を多数挙げていますが、日本とMLBのデータに関する違いや野球におけるデジタル技術活用の事例は興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月20日

『ソース焼きそばの謎』塩崎省吾

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ソース焼きそばの謎 (ハヤカワ新書) [ 塩崎 省吾 ]
価格:1,100円(税込、送料無料) (2025/2/20時点)




 なぜ醤油ではなくソースだったのか? 発祥はいつどこで? 謎を解くカギは「関税自主権」と「東武鉄道」にあった! 全国1000軒以上の焼きそばを食べ歩いてきた男が、多数の史料・取材と無限の焼きそば愛でソース焼きそばのルーツに迫る興奮の歴史ミステリー。

 本書は、ソース焼きそばのルーツを追った一冊。「戦後の大阪発祥」という通説もありますが、著者は史料をひもとき、大正時代の初期にすでにソース焼きそばが提供されていた可能性を検討し、誕生の謎を解くカギの材料となる小麦粉から関税自主権、東武鉄道といった意外なキーワードが浮かばせます。なぜしょうゆではなくソースが使われたのか、という素朴な疑問も掘り下げ、ソース焼きそばのルーツに迫ります。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月19日

『サラブレッドはどこへ行くのか 「引退馬」から見る日本競馬』平林健一




 ターフを去った競走馬は、その後どこへ行くのか―。世界で最も馬券が売れる国、日本が抱える「引退馬」という産業課題。我々にとって馬とはどのような存在であるべきか?引退馬を追った映画「今日もどこかで馬は生まれる」を企画・監督した、競馬を愛してやまない著者が、誕生から現役生活、セカンド・サードキャリア、肥育の現場まで、サラブレッドの命懸けの一生を、現場関係者への綿密な取材を通して明かす。繊細で複雑な課題の核心を丹念に、かつ情熱をもって世に問うノンフィクション。

 本書は、経済動物である競走馬の行く末を作者が徹底的に取材し、競馬ファンの間でも知られていない「引退馬問題」の核心に迫るノンフィクション。競走馬になれなかった馬たちや、引退した元競走馬たちは、一体どこへ行くのか?…サラブレッドの命懸けの一生を、現場関係者への綿密な取材を通して明かしています。サラブレッドという動物がどう生まれトレーニングされ、アスリートとしてどんな現役生活を送り、その後どういうキャリアを進むのかという、馬の一生をたどる構成になっており、競馬ファン以外にもぜひ読んでほしい一冊です。

【満足度】 ★★★★☆
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2025年02月18日

『「気づき」の快感』齋藤 孝

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「気づき」の快感 (幻冬舎新書) [ 齋藤孝 ]
価格:1,056円(税込、送料無料) (2025/2/18時点)




 「あなたは気づきが多いほうか?」と聞かれて「多いほう」といえる人は、この本を読む必要はない。なぜなら次々と「気づき」が訪れるときの“快感”を知っているはずだからだ。一方で「少ないほう」という人は本書を読むと、とんでもない「気づき」が得られるだろう。「気づき」とは周りの状況に対して、新たな理解や洞察を得てハッとすること。歴史上の偉大な発明や発見も小さな気づきから生まれたものである。そこで本書ではどうすれば「気づきの多い人」になれるのかを解説。気づきが多くなると仕事で結果が出るだけでなく、人生も楽しくなる!

 本書は、気付きから得られる発見や人生の楽しみ方を分かりやすく解説した一冊。好奇心をもって行動して気付くことの大切さを再確認し、当たり前ではなく深く追求し、再発見することで新たな理解をして楽しむポイントが書かれており、自分自身の学びの一冊にもなりました。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月17日

『婚活マエストロ』宮島未奈

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婚活マエストロ [ 宮島 未奈 ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2025/2/17時点)




 40歳のこたつ記事ライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を引き受ける。安っぽいホームページ、雑居ビルの小さな事務所…手作り感あふれる地味なパーティーに現れたのは、生真面目にマイクを握るスーツ姿の美女・鏡原奈緒子。彼女は脅威のカップル成立率を誇る伝説の司会者“婚活マエストロ”だという。その見事な進行で、参加者は完全に鏡原の掌の上。シニア向け婚活パーティーから、琵琶湖に向かう婚活バスツアーまで、いつだってマエストロは絶好調だ。気付けば事業を手伝うことになった猪名川だが、鏡原への謎は深まるばかりで…。

 本書は、40歳の男性を主人公に、婚活パーティーをきっかけにした大人の出会いを描いた物語。『成瀬は天下を取りにいく』で2024年の本屋大賞に輝いた著者の受賞後第一作ですが、『成瀬は天下を取りにいく』のインパクトが強かったこともあり、多少の物足りなさを感じる作品ではありましたが、テンポがよく、エンタメとして面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月15日

『孤城 春たり』澤田瞳子

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孤城 春たり [ 澤田瞳子 ]
価格:2,420円(税込、送料無料) (2025/2/15時点)




 借財10万両から蓄財10万両へ…。わずか7年で財政を建て直した備中松山藩の改革。「財政再建の神様」と呼ばれ、藩の要職として、また儒学者として有為の人材を多く育てた山田方谷を筆頭に、時代の波に揉まれながら懸命に生きる人々を描く直木賞作家初の幕末群像劇。

 備中松山藩(現・岡山県高梁市)にて藩校・有終館の学頭(校長)を務めるかたわら私塾「牛麓舎」を開き、弟子たちの指導に当たっていた陽明学者・山田方谷は、借財10万両を抱える藩の財政を司る元締役とその補佐役である吟味役の兼務を命じられる。倹約令、殖産興業、藩札刷新などの改革により、備中松山藩はわずか7年で借財を返済、さらに10万両の蓄財を作るまでになった。だが幕末の激動の波は地方の小藩にも押し寄せる。尊皇攘夷の声が高まるなか、藩主・板倉勝静が老中筆頭だったことから、朝敵として備中松山藩に追討令が出され……。時代の波に揉まれながら懸命に生きる人びとを描いた、直木賞作家初の幕末群像劇。

 本書は、わずか7年で財政を建て直した備中松山藩の改革を幕末群像劇として描いた時代小説。著名な英雄ではなく、激動の時代を懸命に生きた普通の人々に光を当てた群像劇での人間描写が読み応えもあり、経済と思想の観点から楽しむ藩財政再建の物語は、歴史の裏側に隠された新たなドラマを楽しめる作品です。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月14日

『この村にとどまる』マルコ・バルツァーノ




 独伊のはざまでダム湖に沈んだ村。ファシズム、失われた母語、環境破壊…。母から娘へ、忘れてはいけない村の歴史。世界35ヵ国以上で翻訳。50万部超のベストセラー。

 この美しいダム湖の底に、忘れてはいけない村の歴史が沈んでいる。北イタリアチロル地方、ドイツ語圏の一帯はムッソリーニの台頭によりイタリア語を強制され、ヒトラーの移住政策によって村は分断された。母語を愛し、言葉の力を信じるトリーナは、地下で子どもたちにドイツ語を教え、ダム建設に反対する夫とともに生きてゆくのだが……。イタリア文学界の最高峰、ストレーガ賞の最終候補作。

 本書は、北イタリアのチロル地方に、かつてクロン村という小さな村があり、現在はダム湖に沈み、教会の鐘楼が見えるのみのクロン村を舞台に、クロン村に生まれ育った主人公トリーナが、生き別れの娘に向けて綴った手紙の形をとっている物語。イタリアに属しながらドイツ語圏であるクロン村は、ムッソリーニによるイタリア語強制策、ナチスによる移住計画によって相次いで引き裂かれます。過酷な戦争をどうにか凌ぎ、村に平穏が訪れたのも束の間、今度はダム計画が容赦なく実行に移されることになります。故郷が無くなる中での歴史を語り続ける主人公に心が打たれた作品です。

【満足度】 ★★★★☆
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2025年02月13日

『お城の値打ち』香原斗志

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お城の値打ち (新潮新書) [ 香原 斗志 ]
価格:990円(税込、送料無料) (2025/2/13時点)




 「本物の城」は12しかない!?近年の「城ブーム」のおかげで、全国各地で名所・史跡として人気を集める城の数々。だが、中には史実とはおよそ異なる姿がまかり通っている例もある。そもそも、かつて数万あったという日本の城郭はなぜ激減してしまったのか。「現存天守」「復元天守」「復興天守」「模擬天守」の違いとは―文化財、史跡としての城の値打ちと、その歴史と未来を問う。

 本書はタイトルにもあるように史跡としてのお城の値打ちを問う一冊。日本各地には90を超える天守が建っていますが、そのうち「ホンモノ」と呼べるものは3分の1にも満たず、歴史的価値がない『エセ天守』が多数存在し、歴史を無視したものだとも指摘されています。1960年代から1970年代にかけて、全国各地で鉄筋コンクリート造の模擬天守が建てられ、国指定の史跡においては、天守の建設が控えられるようになりましたが、それ以外の場所では引き続き「なんでもあり」の状況が続いており、その値打ちについて考えさせられる内容でした。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月12日

『あんかけ焼きそばの謎』塩崎省吾




 大好評『ソース焼きそばの謎』、待望の続篇!蒸し麺や揚げ麺に熱々の餡をかけて食べる「あんかけ焼きそば」。食卓ではマイナーな存在だが、その発祥はソース焼きそば以上に謎に満ちている! 探求の旅は戦前の東京、横浜・長崎を経てアメリカへ……。世界屈指の焼きそば通が解く、濃厚歴史ミステリ第二弾。

 カリッと焼いた中華麺や揚げ麺に、具材豊かな熱々の餡を絡めて食す「あんかけ焼きそば」。その発祥と伝播はソース焼きそば以上に謎に満ちている。中国に麺を揚げた炒麺は存在しない?カタ焼きそばと細麺皿うどんの関係は?探究の旅は戦前の東京から横浜・長崎を経てアメリカへ。ゴールドラッシュと黄禍論、ペリー来航、日清戦争、そして…近代食文化史のミッシングリンクを埋める、ひとつの事実が浮かび上がる。世界屈指の「焼きそば探偵」が最高熱度で放つ、濃厚歴史ミステリ第二弾!

 本書は、あんかけ焼きそばの種類と成り立ち、更に堅焼き麺に餡のかかったあんかけ焼きそばのルーツを探る一冊。あんかけ焼きそばだけではなく、ちゃんぽんや皿うどんの話、神保町にある中華料理店の話など、深堀りの内容も興味深かったです。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月11日

『いわゆる「サザン」について』小貫信昭

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いわゆる「サザン」について [ 小貫 信昭 ]
価格:2,090円(税込、送料無料) (2025/2/11時点)




 サザンオールスターズの止めそびれた歴史と、その真実。

 2023年にデビュー45周年を迎え、2024年には新作オリジナル・アルバムの制作を発表するなど今もなお精力的な活動を続け、その名曲の数々で常に日本のミュージックシーンを牽引し続けている唯一無二のバンド、サザンオールスターズ。そんなサザンの誕生から国民的アーティストになるまで、そして無期限活動休止を経て現在に至るまでの軌跡を、音楽評論家・小貫信昭氏が余すところなく克明に綴りました。40年以上にわたり、ことあるごとに取材をし、唯一その言葉を聞き続けた小貫氏だからこそ書けた、「サザンオールスターズについて」の決定版。サザンの歴史を振り返りながら彼らの楽曲や音楽人としての魅力、そしてこれからを紐解く、音楽ファン必読の一冊です。

 本書は、40年以上にわたり、ことあるごとに取材をし、唯一その言葉を聞き続けた音楽評論家の著者だからこそ書けた、知られざるサザンヒストリーを赤裸々に綴るノンフィクション。サザンが結成されるまでの経緯、デビュー、曲の紹介が書かれており、長い歴史を音楽活動を中心に端的にまとめています。読み進めていくうちに、曲に纏わるエピソードとともに様々なその時々の記憶が蘇ってきて、懐かしさと共に楽しく読めました。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月10日

『イッツ・ダ・ボム』井上先斗

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イッツ・ダ・ボム [ 井上 先斗 ]
価格:1,650円(税込、送料無料) (2025/2/10時点)




 「日本のバンクシー」と耳目を集める新鋭“ブラックロータス”。彼の正体を熱心に追うウェブライター。ストリートにこだわり続けるグラフィティライター“TEEL”。そして「落書きなんて流行らない時代」に落書きを始めた青年。「俺はここにいるぞ」と叫ぶ声が響く、新世代のクライム・ノヴェル!

 本書は、第31回松本清張賞受賞作。街中にスプレーなどで書かれた名前や絵を「グラフィティ」と呼び、それを無断で書くことを「ボム」と言いますが、本書は、フリーライターが「日本のバンクシー」と称される謎の人物を追う第1部と、長年グラフィティを書いている男性TEEL(テエル)が、その謎の人物と対決する第2部で構成された物語。グラフィティと呼ばれる軽犯罪についてをルポルタージュ形式のミステリとしており、前半の仕掛けや、後半のバトルは面白かったです。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月08日

『「わかりやすさ」を疑え』飯田浩司

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「わかりやすさ」を疑え (SB新書) [ 飯田 浩司 ]
価格:1,045円(税込、送料無料) (2025/2/8時点)




 平日朝のラジオ人気ニュース番組『飯田浩司のOK!Cozy up!』キャスターが明かす、世の中の情報との向き合い方。

 陰謀論、フェイクニュースから真実を見抜け。「安易なレッテル張り」で、見えなくなるものがある。「円安は“国力の低下”」「就職氷河期世代は“老害”」「神宮外苑再開発は“破壊”」「首相暗殺犯は“悲劇の主人公”」……巷で「正しい」と信じられているその情報は、真実なのか? ニッポン放送の平日朝のラジオ人気ニュース番組『飯田浩司のOK!Cozy up!』キャスターが教える、ニセ情報を鵜呑みにしないための作法。

 本書は、巷で「正しい」と信じられているその情報は真実なのか、ニセ情報を鵜呑みにしないための作法について書かれた一冊。内容としては8つの章に分けて『「見出し」で歪められる科学的根拠』『一貫性のない情報が、真実を見えなくさせる』『民意を分断させるダブルスタンダード』『政府への批判は正論なのか』『誇張なしに事実を伝えることはできるか』『表面的な理解の罠』『日本のニュースとかけ離れた世界の現実』『偽の「正しさ」が分断を生む』について問題点が分かりやすく書かれています。

【満足度】 ★★★★
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2025年02月07日

『私の馬』川村元気

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私の馬 [ 川村 元気 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2025/2/7時点)




 「ストラーダ、一緒に逃げよう」。共に駆けるだけで、目と目を合わせるだけで、私たちはわかり合える。造船所で働く事務員、瀬戸口優子は一頭の元競走馬と運命の出会いを果たす。情熱も金も、持てるすべてを「彼」に注ぎ込んだ優子が行きついた奈落とは?

 造船所で事務員として働く瀬戸口優子は、通勤途中の国道で、馬運車から逃げ出した元競走馬と運命的な出会いを果たす。「彼」の名はストラーダ。街のはずれにある乗馬クラブで「彼」に跨った優子は、誰よりも「彼」と心を通わせる感覚を味わい、その馬にのめり込んでいく。ストラーダの栄光の復活のため、優子は組合の金に手をつけ始める。帳簿を改ざんして「一時的に借りるだけ」だったはずの横領額は、気づけば億を超えていた…。言葉があふれる世界で、言葉のない愛に生きる。感動の疾走エンタテインメント!

 本書は、一人暮らし独身女性が、運命的に出会う馬(競走馬引退後乗馬用となった)に入れ込み、会社の労働組合のお金を横領していく様を描いた作品。実在の事件をモチーフとした物語ではありますが、競馬ファンとしては横領犯罪と元競走馬を舞台にしてほしくなかったですし、物語としてもイマイチでした。

【満足度】 ★★★
ラベル:川村元気 私の馬
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2025年02月06日

『臨床のスピカ』前川ほまれ

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臨床のスピカ [ 前川 ほまれ ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/2/6時点)




 動物介在療法に携わるDI犬のスピカと、そのハンドラーの凪川遙が、様々な患者と家族に向き合う。それは、凪川自身の内面にも変化を起こし、やがて大きな決断をすることに。動物介在療法を知るきっかけとなった同期との出会いとその後、育児放棄をした母とのこれから。犬と人との関係を通じ、人と人との心地よい距離と自分自身のありようを見つめ直していく。命の現場を舞台に、現役看護師の著者が描く希望の物語。

 本書は、医療現場において動物、特に犬が医療従事者として治療計画の一部(例えば、投薬の場面、終末期の患者のケアなど)を担う動物介在療法をテーマに、現役看護師の著者が描いた物語。動物介護療法に携わるハンドラーと介助犬をテーマにした物語で、ハンドラーの今日に至るまでの境遇、経緯について上手く表現されています。盲導犬や介助犬、アニマルセラピーなどとは違う役割を持つ犬がいるということを知ることができ、命の現場も丁寧に描かれています。

【満足度】 ★★★★
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