2014年07月17日

『戦場に散った野球人たち』早坂 隆



 墓碑に刻まれた「G」の文字・沢村栄治、戦前のタイガースを支えた元祖スラッガー・景浦將…。大東亜戦争(太平洋戦争)で戦死したプロ野球選手の壮絶な生涯を紹介。学生野球で活躍した「伝説の大投手」嶋清一も取り上げる。

 東京ドームの脇に「鎮魂の碑」という名の石碑が建っていることをご存知だろうか。昭和56年(1981年)、後楽園球場の時代に造られ、東京ドームの完成に伴って今の場所に移築されたこの碑は、先の大戦で戦死したプロ野球(職業野球)の選手たちの御霊を鎮めることを目的として建立されたものである。「建立の趣旨」として、次のような言葉が刻まれている。〈第二次世界大戦に出陣し、プロ野球の未来に永遠の夢を託しつつ、戦塵に散華した選手諸君の霊を慰めるため、われら有志あいはかりてこれを建つ〉 この碑には、計69名の選手が祀られている。名前の列記の中には、沢村栄治のように一般的に知られている著名な選手の名前もあれば、殆ど無名の方もいる。本書では、この碑に名前の刻まれている野球人たちの中から6名を選び、その生涯を紹介する。更に、一口に「戦場に散った野球人」と言っても、それはプロ野球の選手だけではなく、学生野球で活躍した者たちも少なくなかったことを踏まえ、「伝説の大投手」こと嶋清一についての章を加えており、計7名の生涯の記録ということになる。この石碑に内包されている血と涙の記憶とは、どのようなものだったのか。時代の不条理とは常に単層構造ではありえず、その実相を描くには百万言あっても足りないが、僅かなりとも鎮魂の一助とすることを目的に著者が精魂こめて書き下ろしたノンフィクションです。

 本書は、漫画「あぶさん」のモデルにもなった景浦將、川上哲治とのバッテリーで有名な吉原正喜、「伝説の大投手」嶋清一。そして、沢村栄治など、若くして戦場で散った野球選手7名の生い立ちから最期までを描いたノンフィクション。国のためという思いと、野球がしたいという思いに揺れる野球選手達の心の葛藤がしっかりと書かれており、こうした偉大なる野球人がいたからこそ、今のプロ野球に繋がっていることを感じる一冊です。

【満足度】 ★★★★
posted by babiru_22 at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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