2018年10月02日

『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』ロブ・ダン




 人間が生きる上で欠かすことのできない主食作物が、同時多発的な病原菌や害虫の猛威に襲われたとき、食卓はどうなってしまうのか。大規模なアグリビジネスがもたらした悲劇、作物壊滅の危機に立ち向かう科学者の軌跡をたどる。

 米、小麦、砂糖、トウモロコシ、豆、ジャガイモ、ヤシ油、大麦、キャッサバ、ピーナッツ……人間が生きるうえで欠かすことのできない主食作物が、同時多発的な病原菌や害虫の猛威に襲われたとき、わたしたちの食卓はどうなってしまうのか。大規模なアグリビジネスがもたらした悲劇、作物壊滅の危機に立ち向かう科学者の軌跡をたどりながら、いまわたしたちにできることは何か、考える。

 本書は「世界中で摂取されているカロリーの80%は、たった12種類の植物から得られている」……という驚きのデータから始まります。昔からヒトは野生の植物を採取し、それを栽培する術を開発し、農業として育ててきました。その方法は地域ごとに異なり、それに合わせて品種も各地域で独自の発展を遂げてきましたが、産業革命以降、農業の工業化が進み、育てる品種を絞り込んで、肥料や殺虫剤を使いながら最大効率で栽培する手法が主流になっていきます。それが、あらゆる品種で限られた品種を効率的に育てる農業が中心となり、それに合わせて、真菌やウイルス、害虫等による被害がでると広範囲で一気に広がる事にもなりました。その意味で、現代の農業は短期的な効率性・生産性が最大化されている一方で、一度被害が出たときのインパクトが非常に大きくなるという意味での脆弱性を抱えており、機械化し、化学肥料、殺虫剤、除草剤を用いて資本を集中し、遺伝的に均質で多様性のない作物を大規模栽培する農業は危機にあると著者は本書で切実に問いかけてます。生産性向上が叫ばれるこの世の中で、品種絞込みの流れが進んでおり、これまで日本の多様な品種を守ってきた「種子法」が廃止され、日本の農業も大きな転換点に差しかかっています。本書のタイトルにもありますが、多くの人は「世界からバナナがなくなる…」ということはありえないと思っているだろうし、世界的な農業の危機が現実に起きているということも知らないでしょうし、日本の種子法廃止がどれたけの影響となるのか他人事として関心すら持てないでしょうが、農業の様々な現実問題が本書では指摘されており、これは我々の食と生命にも大きく関わることでもあるだけら、多くの人に本書を読んでもらいたいと思います。

【満足度】 ★★★★★(文句なし!)
posted by babiru_22 at 19:43| Comment(0) | 今日の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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