大戦末期。ハンガリー大蔵省の役人バログは、敵軍迫る首都から国有財産の退避を命じられ、ユダヤ人の没収財産を積んだ「黄金列車」の運行に携わることになり…。『文芸カドカワ』連載を加筆し単行本化。
ハンガリー王国大蔵省の役人のバログは、敵軍迫る首都から国有財産の退避を命じられ、政府がユダヤ人から没収した財産を積んだ「黄金列車」の運行にかかわることになる。バログは財宝を狙う有象無象を相手に、文官の論理と交渉術を持って渡り合っていくが、一方で、ユダヤ人の財産である物品は彼を過去の思い出へといざなう。かつて友誼を結んだユダヤ人の友人たち、妻との出会い、輝くような青春の思い出と、徐々に迫ってくる戦争の影……。ヨーロッパを疾駆する機関車のなか、現在と過去を行き来しながらバログはある決意を固める。実在した「黄金列車」の詳細な資料を元に物語を飛翔させる、佐藤亜紀の新たな代表作!
物語は、第二次世界大戦末期に、ユダヤ人からの没収財産を積み込んだ特別列車を巡るハンガリーの実話を基にした歴史小説。1944年12月にブダペストを発ち、道中、保管庫に立ち寄ってお宝をごっそり積み込んだ、通称・黄金列車の約4か月に亘る迷走劇を、積荷の管理業務を命じられた大蔵省の中年職員のバログらの奮闘を軸に描かれる作品。終戦間近の混乱ぶりなども丁寧に表現されていて、混乱を極めるなかで、様々な手を使って財産を狙う者たちから列車を守り、職務を全うしようする役人達の姿がとても印象的でした。
【満足度】 ★★★★