横浜の女学校に学ぶ鈴木カネ。兄の銃太郎は北海道開拓について考え、渡辺勝、依田勉三と「晩成社」を興した。女学校を卒業したカネは渡辺勝と結婚、オベリベリとよばれた帯広へ行くことを決意し…。『群像』連載を改稿。
私たちの代が、捨て石になるつもりでやっていかなければ、この土地は、私たちを容易に受け入れてはくれない…。宣教師たちが開いた横浜の共立女学校に学ぶ鈴木カネは、父や兄にならって聖書の教えを受け、勉学に励んでいた。兄の銃太郎は、神学校で一緒だった渡辺勝、依田勉三と北海道開拓について考え始めている。彼らは勉三を中心に「晩成社」を興し、新天地へ向かう準備を進める。明治15年、23歳になったカネは女学校を卒業し、渡辺勝との結婚、そしてオベリベリとよばれる帯広へ行くことを決意する。
本書は、史実に基づき、明治維新後の激動の時代に北海道・帯広の開拓に身を投じた渡辺カネの人生を描いた物語。約140年前に北海道十勝の原野へ渡った主人公らが、厳寒の帯広(オベリベリ)で自然と闘い開墾を進めるもののうまくいかず、絶望の中でも信仰を支えに立ち上がっていく姿が書かれていますが、開拓の困難さは勿論のこと、どのような境遇でも教育がいかに重要であるかについても物語として骨太の作品として描かれています。
【満足度】 ★★★★☆