懐かしいメロディにのせて描かれる、「おひとり様」世津子と女たちの人生の軌跡。TVドラマ「ウバステ」の関係者のひとりが不審死を遂げた。世津子は、その謎を探るうち自身の出生の秘密に触れ…。
逗子の実家に独りで暮らす駒田世津子は小説家。20年前、自身の作品『ウバステ』がTVドラマ化された縁で、元TV局プロデューサーの小野坂哲子、シナリオライターの舘川信代、女優の千田友枝、監督の妻だった谷崎寿々の5人で食事会を続けている。世津子の還暦パーティから3年たった冬、寿々が千駄木のアパートで孤独死したという知らせが入った。謎多き死に一同は憶測をめぐらす。年が明けると、寿々の元夫である梶谷も不審死を遂げた。食事会のメンバーにはそれぞれ、2人から遺書めいた年賀状が届いていた。2人の死に疑問を覚えた世津子は、ほかの仲間に引きずられるように、寿々のアパートに向かう。そこは、世津子が若かりしころ付き合っていた梶谷が住んでいた部屋だった。過去の記憶がフラッシュバックする。そのときから世津子の体調は異変を示し始めた。やがて真相に迫るうち、『ウバステ』のモデルとなった高級老人ホーム「ユートピア逗子」と、世津子自身の出生の秘密に触れることに…
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本書は、おひとりさまの老後や終活に焦点をあてたミステリ。各章のストーリーに昭和の名曲が絡められ、小説家でおひとりさまの世津子をはじめ、プロデューサー、俳優など5人の女性たちが抱える終活、お金、住まい、介護をめぐる問題はリアルで、終活について考えさせられる作品です。
【満足度】 ★★★★