2025年04月09日

『ウバステ』真梨幸子

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ウバステ [ 真梨 幸子 ]
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 懐かしいメロディにのせて描かれる、「おひとり様」世津子と女たちの人生の軌跡。TVドラマ「ウバステ」の関係者のひとりが不審死を遂げた。世津子は、その謎を探るうち自身の出生の秘密に触れ…。

 逗子の実家に独りで暮らす駒田世津子は小説家。20年前、自身の作品『ウバステ』がTVドラマ化された縁で、元TV局プロデューサーの小野坂哲子、シナリオライターの舘川信代、女優の千田友枝、監督の妻だった谷崎寿々の5人で食事会を続けている。世津子の還暦パーティから3年たった冬、寿々が千駄木のアパートで孤独死したという知らせが入った。謎多き死に一同は憶測をめぐらす。年が明けると、寿々の元夫である梶谷も不審死を遂げた。食事会のメンバーにはそれぞれ、2人から遺書めいた年賀状が届いていた。2人の死に疑問を覚えた世津子は、ほかの仲間に引きずられるように、寿々のアパートに向かう。そこは、世津子が若かりしころ付き合っていた梶谷が住んでいた部屋だった。過去の記憶がフラッシュバックする。そのときから世津子の体調は異変を示し始めた。やがて真相に迫るうち、『ウバステ』のモデルとなった高級老人ホーム「ユートピア逗子」と、世津子自身の出生の秘密に触れることに…
…。

 本書は、おひとりさまの老後や終活に焦点をあてたミステリ。各章のストーリーに昭和の名曲が絡められ、小説家でおひとりさまの世津子をはじめ、プロデューサー、俳優など5人の女性たちが抱える終活、お金、住まい、介護をめぐる問題はリアルで、終活について考えさせられる作品です。

【満足度】 ★★★★
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2025年04月08日

『あの日の風を描く』愛野史香

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あの日の風を描く [ 愛野 史香 ]
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 京都市にある美大の油画科を休学中の稲葉真は、従兄の凜太郎の声かけで狩野探幽の血縁であり、父が狩野派を破門された清原雪信の娘・平野雪香が描いた襖絵の復元模写制作を手伝うことになった。チームメンバーは修士二年・土師俊介と修士一年・蔡麗華。襖絵は、十二面の花鳥図だが、現存するのは九面と切り貼りされた一部のみ。果たして三人は復元模写を完成させることができるのか?

 京都市にある美大の油絵科を休学中の稲葉真は、バンド『Pintas』のPainterだったが、メジャー・デビューの時にメンバーから外されてしまった。それ以降、鬱屈して自宅に引き籠もっていた。そんな時、真は従兄の稲葉凛太郎の声がけで、狩野探幽の血縁であり、狩野派を破門された清原雪信の娘・平野雪香が描いた襖絵の想定復元模写制作を手伝うことに。チームメンバーは保存修復研究領域・修士二年・土師俊介と留学生で修士一年・蔡麗華。襖絵は、十二面の花鳥図だが、現存するのは九面と切り貼りされた一部のみ。果たして三人は、復元模写を完成させることができるのか?

 本書は、狩野派の血縁である絵師が描いた襖絵の復元模写に関わることになった美大生の物語。日本画,保存修復の知識が興味深く、復元を担当した美大生3人の葛藤や完成までの手探り状態の中から描かれた本質を見極める努力は読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★
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2025年04月07日

『私の最後の羊が死んだ』河崎秋子

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私の最後の羊が死んだ [ 河崎 秋子 ]
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 どうして羊飼いという職業に就き、順調に美味しい肉を生産していたのに、やめる決断をしたのか。「小説家前夜」の日々を綴る。直木賞作家の自伝的初エッセイ。

 酪農家の娘として生まれたからこそ、その過酷さは身にしみており、大学卒業後も農業に関わるつもりはなかった。だが大学時代に教授宅で催されたバーベキューで出逢ってしまったのだ、美味しい羊肉と……。「自分でも生産してみたい」との思いから一念発起しニュージーランド実習へ。さまざまな縁にも助けられながら、勉強を重ね、日々実直に羊を育て、出荷し、羊飼いとして収入を得られるようになった。やがてお得意先のレストランシェフに「河崎さんとこの肉はお客さんに出すのが勿体ないほど美味しい」と言われるまでに。順調に回り始めた羊飼い生活を、それでもなぜやめる決断をしたか、そしていかにして小説を書き始めたのか。「小説家前夜」の日々を綴る。

 本書は、文壇初の羊飼い兼業作家としても知られた著者がなぜ羊飼いを志し、なぜその生活にピリオドを打ったのかを、作家となるまでの経緯も含めて綴った自身初の自伝的エッセイ。作家になるまでのバックグラウンドがしっかり理解でき、作家として独立するまでの羊飼い人生に誇りを持っていることなど、今後も道内作家として活躍されること期待します。

【満足度】 ★★★★
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2025年04月05日

『歪曲済アイラービュ』住野よる

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歪曲済アイラービュ [ 住野 よる ]
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 「お前ら愛する人に気持ちは伝えたかい?」……底辺YouTuberの生配信「こなるんの予言ちゃんねる」で告げられたのは、世界の滅亡。嘘か真か一切不明、だが同じように終末を確信した者たちは最後の行動に出る。驚きと企みに満ちたクライマックスへ向け疾走する、常識も正論もぶっ飛ばすジェットコースターエンタメ。

 お前ら愛する人に気持ちは伝えたかい?底辺YouTuberが生配信「こなるんの予言ちゃんねる」で予告したのは「世界滅亡」。嘘か真か一切不明、だが同じように終末を確信した者たちは、最後の行動に出る。ずっと「いい子」だった女子高生も、本当は悪魔な先生も、幼馴染の前で精神的自傷行為を続ける大学生も、職場の先輩に料理を習う会社員も、妻に愛の音楽を奏でる青年も、獣のように無垢な少女も。彼らがなりふり構わず向かった先は―驚きと企みに満ちた衝撃の展開!超弩級のジェットコースターエンタメ、開幕。

 本書は、世界が滅ぶと自分にしか見えない何かから伝えられて翻弄される人と周りの人を描いた11編の短編集。勢いはあるものの、読み難く、読み解くのが難しい物語でもありました。世界の滅亡を信じて、ある種の無敵の人になった人達が、終わりを感じて初めて世間とか社会のルールとかから解き放たれた本当の自分の望みに気づくストーリーですが、読み手によって評価が分かれる作品とも思います。

【満足度】 ★★★
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2025年04月04日

『リンダを殺した犯人は』伊兼源太郎

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リンダを殺した犯人は [ 伊兼 源太郎 ]
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 警視庁捜査一課殺人犯捜査第二係に所属する女性刑事・志々目春香と後輩の男性刑事・藤堂遙の“ハルカ”コンビ。2023年冬、新宿・大久保のマンションで若いベトナム人女性「リンダ」の死体が発見された。彼女の足取りを追うため、二人のハルカは四国・松山へ向かうが、そこには外国人技能実習制度の深い闇が…。不法滞在者に労働をあっせんする謎の人物・Q、そして彼女を殺した真犯人は、一体誰なのか、たどり着いた驚きの真相とは!?

 本書は、技能実習生の闇から、日本の問題点や課題を浮き彫りにした作品。外国人技能実習生制度の問題を警察小説として描いていますが、闇の部分が強調しすぎで、エンタメとしてはイマイチな印象を受けました。

【満足度】 ★★☆
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2025年04月03日

『蘭医繚乱 洪庵と泰然』海堂 尊

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蘭医繚乱 洪庵と泰然 [ 海堂 尊 ]
価格:2,530円(税込、送料無料) (2025/4/3時点)




 「チーム・バチスタ」「ブラックペアン」の著者が挑む新境地!幕末、東西に私塾を創った二人の蘭方医が天然痘撲滅に挑む、著者渾身の歴史医療小説。

 江戸時代後期、医者に憧れを抱くひとりの青年が、大坂なにわ橋の上で佇んでいた。青年の名は田上惟章……のちに「緒方洪庵」と名乗る人物である。貧乏藩士の三男坊だった彼は、大坂で師・中天游と出会い、蘭学にのめり込んでいく。同じ頃、江戸で祝言を挙げるひとりの青年が、医者の道へ歩み出そうとしていた。彼の名は田辺昇太郎……のちの「佐藤泰然」である。知り合いの商人から異国の話を聞いた昇太郎は、蘭学がこの先の世に役立つと考え……。真面目な洪庵と、破天荒な泰然。長崎で同じ時期に蘭学を学んだ二人は、互いをライバル視しつつも、その歩みは蘭学を大きく発展させ、それぞれ立ち上げた私塾は「西の適塾、東の順天堂」として、若者にとっての憧れの学び舎となっていく。そして二人は、世間を脅かす「天然痘」の撲滅に挑むのだった……。

 本書は、江戸時代後期から幕末の二人の蘭方医、緒方洪庵と佐藤泰然を主人公とした歴史医療小説。「西の適塾、東の順天堂」と呼ばれ、当時の若者を魅了した名門塾の創始者である蘭方医、緒方洪庵と佐藤泰然を主人公に、明治維新に向かう激動の時代、後世に活躍する多くの人材をそれぞれ育成する一方、当時の人々が怖れた疫病「天然痘」の撲滅に挑み続けた半生をドラマチックに描いています。

【満足度】 ★★★★
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2025年04月02日

『遊廓島心中譚』霜月 流

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遊廓島心中譚 [ 霜月 流 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/4/2時点)




 第70回江戸川乱歩賞受賞作!アニバーサリーイヤー!ミステリ界の新たな歴史を作る期待の新人、満を持して登場!

 孤島と化した遊廓で、国境を越えた愛と死の謎を解け!幕末日本。幼いころから綺麗な石にしか興味のない町娘・伊佐のもとへ、父・繁蔵の訃報が伝えられた。さらに真面目一筋だった木挽き職人の父の遺骸には、横浜・港崎遊廓(通称:遊廓島)の遊女屋・岩亀楼と、そこの遊女と思しき「潮騒」という名の書かれた鑑札が添えられ、挙げ句、父には攘夷派の強盗に与した上に町娘を殺した容疑がかけられていた。伊佐は父の無実と死の真相を確かめるべく、かつての父の弟子・幸正の斡旋で、外国人の妾となって遊廓島に乗り込む。そこで出会ったのは、「遊女殺し」の異名を持つ英国海軍の将校・メイソン。初め
はメイソンを恐れていた伊佐だったが、彼の宝石のように美しい目と実直な人柄に惹かれていく。伊佐はメイソンの力を借りながら、次第に事件の真相に近づいていくが…。4時間半の選考会でもっとも激論となった、ミステリー史上最大級のスケールの衝撃作!

 本書は、幕末・横浜の遊廓を主な舞台に、外国人の妾になった2人の女性を通して描かれる真実の愛を巡る時代ミステリ。展開も面白く、謎解きも楽しめましたが、登場人物の背景が分かりにくいところが多く、それがミステリとしてはやや物足りなさを感じましたが、幕末の横浜の臨場感は良かったです。

【満足度】 ★★★☆
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2025年04月01日

『よむよむかたる』朝倉かすみ




 小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」には今日も老人たちが集まる。月に一度の読書会“坂の途中で本を読む会”のためだ。この会は最年長92歳、最年少78歳の超高齢読書サークル。それぞれに人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡が一度だけで伝わることもない。この会は発足20年を迎え、記念誌を作ろうとするが、すんなりと事が進むはずもなく…。

 小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」には今日も老人たちが集まる。月に一度の読書会〈坂の途中で本を読む会〉は今年で20年目を迎える。店長の安田松生は、28歳。小説の新人賞を受賞し、本を一冊出したが、それ以降は小説を書けないでいる。昨年叔母の美智留から店の運営を引き継いだばかりだ。その「引き継ぎ」の一つに〈坂の途中で本を読む会〉のお世話も含まれる。何しろこの会は最年長92歳、最年少78歳、平均年齢85歳の超高齢読書サークル。それぞれに人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡は一度だけで伝わることもない。持病の一つや二つは当たり前で、毎月集まれていることが奇跡的でもある。安田は店長の責務として世話係だけをするつもりだったが、「小説家」であることを見込まれて、この会の一員となる。安田は読書会に対しても斜に構えていた。二作目が書けない鬱屈がそうさせていたのかもしれない。しかし、読書会に参加し、自分でも老人たちと「語る」ことで心境に変化が訪れる……。

 本書は、北海道小樽市の古い民家を改造した喫茶シトロンという店を舞台とした読書会小説。80代、90代が中心の「坂の途中で本を読む会」の6人のメンバーが集い、課題本を音読し、意味や解釈を語り合う中で、亡くなった息子や小学校の教え子たちとの思い出など、さまざまなエピソードが蘇ります。小説家という夢に挫折し、「シトロン」の雇われ店長になった主人公の安田は、読書会に立ち会うたびに少しずつ心が揺り動かされていく…というストーリーですが、老人たちの読書会の会話がとてもリアルで、本の感想から昔語りへ移り、とりとめのない話に終始する様子は、いかにも高齢者が中心の物語らしく、読書会でのコニュニティがうまく作品で表現されています。

【満足度】 ★★★★☆
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2025年03月31日

『もうひとつの引退馬伝説 関係者が語るあの馬たちのその後』マイクロマガジン引退馬取材班




 著名な競走馬のセカンドキャリアを追った一冊。関係者への取材を基に「第二の馬生」の様子やエピソードなどを紹介していきます。

 ターフを沸かせて引退したあの競走馬は今どうしてる?有名競走馬28種の引退後をさまざまな関係者に直撃取材。種牡馬、繁殖牝馬、乗馬、誘導馬、伝統神事馬、功労馬などなど、新たなキャリアを歩む馬たちの実像に迫る!和田竜二騎手と角居勝彦元調教師のインタビューも収録。

 競走馬の引退後の行き先は、種牡馬や繁殖牝馬になる他、乗馬、馬術競技、伝統行事や農業で活躍したりなど多岐に渡りますが、本書はG1など重賞を勝った著名な馬の、繁殖生活だけに限らない余生(セカンドキャリア・サードキャリア)にアプローチし、繋養先でどのように過ごしているのか、現役時代との違いやエピソードなどを関係者へ直撃し、引退した著名な競走馬の現在の魅力をとことん掘り下げていきます。

【満足度】 ★★★★
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2025年03月29日

『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』森 功

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魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史 [ 森 功 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/3/29時点)




 大宅賞作家が「日本一のマンモス私大」の「権力と闇」に光を当てる。

 迷走する「林真理子体制」。裏切られた改革。大宅賞作家が「日本一のマンモス私大」の「権力と闇」に光を当て、現在進行形の「タブー」に迫る。2021年、田中英壽理事長(当時)が率いる日本大学を舞台に起こった一連の事件には、日本の私立大学が長らく抱えてきた共通の病が潜んでいた。日本一のマンモス私大「日本大学」の歴代トップが歩んできた日大の歴史を紐解きながら、転換期にある日本の私大問題を掘る。

 本書は、日本一のマンモス私大「日本大学」の歴代トップが歩んできた日大の歴史を紐解きながら、転換期にある日本の私大問題を掘り下げた一冊。アメフト部薬物事件、ならびに重量挙部・陸上部・スケート部における「被害額約1億1500万円超」もの金銭不祥事…など、日大で何が起こっているのか戦後の「日大」裏面史から、その原因を探り出しています。

【満足度】 ★★★★
ラベル:森 功 魔窟
posted by babiru_22 at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする