2025年03月28日

『沸騰大陸』三浦英之

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沸騰大陸 [ 三浦 英之 ]
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 「生け贄」として埋められる子ども。78歳の老人に嫁がされた9歳の少女。銃撃を逃れて毒ナタを振るう少年。特派員としてアフリカの最深部へ肉迫した3年間。生々しさゆえにお蔵入りとなった膨大な取材メモが残された…。ノンフィクション賞を次々と受賞した気鋭のルポライターが、閉塞感に包まれた現代日本に問う、むき出しの「生」と「死」の物語。

 本書は、朝日新聞記者でルポライターの著者が、アフリカ特派員時代の未発表メモをもとにした、アフリカの実情を伝える短編ルポ・エッセイ集。テロや紛争と背中あわせで生きる、市井の人々の日常、苛酷な運命に翻弄されつつも、逞しく生きる人々の笑顔、壮大な自然の美しさなど、バラエティに富んだ34編が収録されています。経済成長の裏側、内戦の実情など、報道の裏側ともいえる知られざるアフリカが書かれており、インパクトの強いルポでした。

【満足度】 ★★★★
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2025年03月27日

『冬に子供が生まれる』佐藤正午

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冬に子供が生まれる [ 佐藤 正午 ]
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 このメッセージは未来の予言。起こりうるはずのない未来の予言。だがこれは…今年の冬、彼女はおまえの子供を産む。その年の七月、丸田君はスマホに奇妙なメッセージを受け取った。現実に起こりうるはずのない言い掛かりのような予言で、彼にはまったく身におぼえがなかった。送信者名は不明、090から始まる電話番号だけが表示されている。一方で彼は、過去の記憶の断片がむこうから迫ってくるのを感じていた。記憶の足音が聴こえる、数奇な半生の物語が再生される。

 本書は、少年期にUFOを目撃した3人組の感情の機微を描いたその後の物語。ファンタジー的な作品で不思議な感じの作品で、ミステリーとしてもオカルトとしても中途半端な作品にも感じました。小学生の頃のUFO目撃が、その後の少年たちや周囲の人々の人生に色濃く影を落としますが、もう少しエンタメ色を出した方が良かったようには思います。

【満足度】 ★★
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2025年03月26日

『日比野豆腐店』小野寺史宜

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日比野豆腐店 [ 小野寺史宜 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/3/26時点)




 ベストセラー『ひと』の著者による、「日々の豆腐」という意味も込められた豆腐屋でひたむきに生きる人たちを描いた家族小説。

 東京の町なかに、ひっそりと佇む「日比野豆腐店」。店主の清道を亡くした日比野家は、厳しいながらも手を取り合って店を切り盛りしていた。店を終わらせようとしている祖母の初。亡くなった夫の代わりに店を続けたい母の咲子。店を継ぎたいのかどうか、将来に悩む令哉。そして、「ある人」と一緒に三人を見守る飼い猫の福。「日々の豆腐」という意味も込められた豆腐屋で、ひたむきに生きる人たちを描いた心揺さぶる家族小説。

 本書は、東京の下町の片隅にある日比野豆腐店を舞台に、経営は厳しいながらも家族の絆と豆腐を巡る物語。スーパーの安売り豆腐に押されながら、自慢の味を守って行こうとする家族と、美味しい豆腐を求めて、足繁く通って来るお客さん達とのやり取りがなんとも微笑ましく、お客さんとのコミュニケーションの大切さ、地域で頑張るお店を応援したくなる作品です。

【満足度】 ★★★★
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2025年03月25日

『潜入取材、全手法』横田増生




 潜入取材の技術はブラック企業対策にもなり、現代社会における強力な護身術となる。ユニクロ、アマゾン、ヤマト運輸、佐川急便からトランプ信者の団体まで数々の組織に潜入。世に知られていない実情を掘り起こし、名誉毀損裁判ではユニクロに完勝したプロ中のプロが、調査方法から裏取りの仕方、執筆、更に訴訟対策に至るまで全技法を公開。レポート作成からセクハラ・パワハラ対策にまで使える決定版!

 本書は、自らの体験を語りながら、実践で身に付けた潜入取材のノウハウを公開した一冊。著者は、日本に上陸してまもない頃のアマゾンの物流センターをはじめ、ユニクロやアメリカ大統領選のトランプ陣営など、さまざまな組織に潜入してその内実を告発してきたジャーナリストですが、取材とは告げず、その組織や人物を至近距離から観察し、外面の下に隠された本当の姿が浮き彫りにする潜入取材の手法はとても興味深かったです。

【満足度】 ★★★★☆
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『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』下村敦史

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全員犯人、だけど被害者、しかも探偵 [ 下村 敦史 ]
価格:2,090円(税込、送料無料) (2025/3/24時点)




 社長室で社長が殺された。それに「関わる」メンバーが7人ある廃墟に集められる。未亡人、記者、社員2人、運転手、清掃員、被害者遺族…。やがて密室のスピーカーからある音声が流れる。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」。犯人以外は全員毒ガスで殺す、と脅され、7人は命をかけた自供合戦を繰り広げるが…。

 本書は、一人の会社社長が殺害された事件が発端となり、それに関わるメンバーがある廃墟に集められることになり、密室のスピーカーから流れた「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」という脅しから、命を懸けたデスゲームが始まり、全員がそれぞれが「自分が犯人です!」と名乗る自供合戦が繰り広げられるミステリ。登場人物各々が犯人と名乗り自白し、矛盾点を指摘し合う推理合戦が繰り広げられる展開は面白く、ミステリ好きにはオススメの作品です。

【満足度】 ★★★★
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2025年03月22日

『セルフィの死』本谷有希子

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セルフィの死 [ 本谷 有希子 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2025/3/22時点)




 フォロワー獲得に死力を尽くすミクルは思う。「何故この世界は自分にフォロワーが増えないように作られているのだろう」。自撮りを繰り返すとイソギンチャクになる顔面。オート化された無人回転寿司。まさかのフォロワー爆増……狂った現象が次々とミクルを襲う、地獄展開に抱腹絶倒、気分は爽快。約十年ぶり、待望の長編!

 自意識と承認欲求から生まれた私達の姿をあぶり出す、地獄展開に気分は爽快。毎夜、フォロワーが欲しくてベッドで震えているミクルは、その数を増やそうと常に死力を尽くしている。老舗喫茶店でなりふり構わず自撮り、他人の投稿をパクって炎上、原宿系インフルエンサーからのフォローバックの提案…。何もかもうまくいかず七転八倒し、あらゆる希望が根絶やしになった時、ついに訪れた、バズりの先に見えた真実とは。

 本書は、フォロワー獲得に奔走する主人公ミクルの姿を通じて、現代社会におけるSNSの影響力と承認欲求の闇に鋭く切り込む作品。ユニークな心理描写が鋭く、どんな手を使ってでも自分のフォロワー数を増やしたいと思っている主人公の自意識と承認欲求がブラックユーモアを交えて、面白く描かれます。

【満足度】 ★★★★
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2025年03月21日

『地獄の底で見たものは』桂 望実

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地獄の底で見たものは [ 桂 望実 ]
価格:1,760円(税込、送料無料) (2025/3/21時点)




 長年夫を支えてきたつもりだったのに、急に離婚を切り出された専業主婦。新規事業を立ち上げて15年、働きぶりを否定された会社員。ともにオリンピックを目指した教え子に逃げられたコーチ。22年間続けたラジオ番組をクビになり、収入が途絶えたフリーアナウンサー。どん底に落ちた女たちの、新たな人生の切り開き方とは?

 本書は、離婚、全否定、教え子の移籍、クビ…と、今まで信じていた人に突然裏切られたアラフィフ女性達が「人生の底」を経験して、そこから這い上がる物語。それぞれに自らの意思で道を切り開いていく様子は、読み手も前向きになれるストーリーで、読後の印象も良かったです。

【満足度】 ★★★★
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2025年03月20日

『雫』寺地はるな

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雫 [ 寺地 はるな ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2025/3/20時点)




 新たに生まれ変わり、継がれるジュエリー。人から人へとつながっていく想い。変化しながら続いていく先に広がる、新たな始まりの物語。中学の卒業制作で出会った4人の同級生たち。恋人とも親友とも異なる距離感のまま時が巡ること30年、ビルの取り壊しに伴ってひとつのジュエリーリフォーム会社が営業を終え、4人は再会した。重ねてきた月日の過程で、不器用ながらもひたむきに生きる彼らに訪れる数々の選択と、人生のままならなさ、そして転機…。

 ビルの取り壊しに伴うリフォームジュエリー会社の廃業を起点に時間をさかのぼりながら、物から物へ、人から人へと、30年の月日のなかで巡る想いと“つながり”、そして新たなはじまりを描く、寺地はるなの真骨頂が光る、感動長篇。出会い、卒業、就職、結婚、親子、別れ……。中学の卒業制作づくりで出会った4人がそれぞれ直面する数々の選択と、その先にある転機、人生のままならなさ。不器用に、でもひたむきに向き合う彼らの姿を通して、日常のささいな不安や違和感を丁寧にすくい取って人の弱さにそっと寄り添いながら、いまを生きるあなたにエールを贈る大人の青春小説。

 本書は、男女4人の30年間を45歳から15歳までさかのぼっていく物語。中学の卒業制作づくりをきっかけに知り合った、親友とも恋人とも異なる距離感の同級生たち4人の30年の年月の中で訪れる様々な出来事を、遡りながら彼らの背景や心の移ろいを掘り下げていく展開と、大切な人から受け継いだ古い宝石が新しい姿に生まれ変わるということが彼らの人生にどのような意味を与えるのかは、共感と希望の物語でもありました。

【満足度】 ★★★★
ラベル:寺地はるな
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2025年03月19日

『罪名、一万年愛す』吉田修一

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罪名、一万年愛す [ 吉田 修一 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/3/19時点)




 横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。

 物語は、一代で、九州を中心にデパートを開業し、財をなした梅田壮吾の米寿の祝いに、梅田家の家族、探偵業を営む刈田、元警部の坂巻が招待されるが、祝いのパーティーの翌朝、孤島に建つ豪邸から壮吾が姿を消してしまうこととなりストーリーが進んでいきます。ミステリの展開でスタートするも、梅田壮吾にまつわる戦後の過酷な時代を生き抜いた戦争孤児の話や主婦失踪事件も絡み、読み応えある作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2025年03月18日

『その朝は、あっさりと』谷川直子

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その朝は、あっさりと [ 谷川直子 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2025/3/18時点)




 九十六歳の父を看取るまでの二十日間、家族と介護士、看護師はどうかかわるか。誰もが迎える最期には何が必要?一茶の句が持つ庶民のリズムと見捨てない温かさに包まれた「老衰介護看取り小説」。

 長寿社会という「最先端」の時代を生きる私たちに、道しるべとなる「老衰介護看取り小説」の誕生!老い、病、死にちかづくこと。じつはたっぷりした意味がある!中島京子さん推薦!老いとの闘い。死支度。「死下手」の一茶の俳句が、認知症のお父さんを支える。家族のじたばた、いらだち、せつなさも、どこか飄々とした俳諧のようだ。*元中学教師の恭輔は80代後半には認知症になり、骨折をきっかけに4年前からは在宅介護を受ける身の上だ。通称「かんたき」看護小規模多機能型居宅介護の看護師、介護士が自宅でのサポートをしているが、妻にとっては老老介護、かかわる子どもたちも還暦前後でらくではない。オムツとトイレの大惨事、認知症の薬などを試みるが、次第に出来なくなってくることが増えていく。万一の場合には救急車をどうする?96歳で息をひきとるまでの20日間、家族や介護者はどのように備えるのか。誰にとってもひとしく迎える最期はどのようなものなのか。死ぬときはどうなるのか。そしてその日は信じられないほど「あっさりと」やってきたのだ。

 本書は、96歳の父を自宅で看取るまでの20日間を、実体験に基いて描いた作品。寝たきりの父を看取る妻と2人の娘との20日間の様子はとてもリアルで、それぞれ死を受け入れていくまでの心の動きが見事に表現されています。笑いあり涙ありの家族小説でもあり、まさに『老衰介護看取り小説』として読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★
posted by babiru_22 at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする