大らかな性格で孫に優しい人間国宝の祖父。息子に無関心な轆轤の名手の父。物心つく前に母を亡くした城は、陽と陰のような二人の間で育ち、悩み苦しんで…。備前焼窯元一家の再生と継承を描く。『小説すばる』連載を単行本化。
大らかな性格で孫に優しい偉大な人間国宝の祖父・路傍。氷のように冷たく息子に無関心な轆轤の名手である父・天河。物心つく前に母親を亡くした城は、陽と陰のような二人の間で育ち、悩み苦しんでいた。父に認められたいのに自己韜晦に走る城。出口が見つからないまま、宿痾のように精神は蝕まれていき…。父子三世代の心の闇に斬り込み、愛と憎しみの狭間でもがく人間たちを描いた、焔の家族史。
本書は、日本の伝統芸能である「能楽(能)」の世界を舞台に描いた、人間の心の暗闇と、そこに灯る小さな光を描いた美しくも壮絶な愛憎劇。対照的な運命を背負った二人の能楽師が、能という芸術を通して激しくぶつかり合い、嫉妬、羨望、そして深い絆で結ばれていく様子が描かれますが、過去に刻まれたトラウマや後悔が、現在の行動や選択に影を落とし、その連鎖がさらにドラマを生んでいき、熱量のある作品でもありました。
【満足度】 ★★★★

