2026年01月07日

『アラート』真山 仁

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アラート [ 真山 仁 ]
価格:2,200円(税込、送料無料) (2026/1/7時点)




 防衛力はカネか人か? この未来はフィクションでは終わらない!防衛費倍増の財源を巡って政権は揺れていた。予算折衝は激しさを増した。その最中、台湾の潜水艦と日本の漁船の衝突事故が。北京滞在中の都倉響子総務会長の決断は? トランプ、台湾有事……今そこにある「リアルな危機」から、この国の未来を守るのは誰か。安全保障を経済から問う圧倒的長編ポリティカル・フィクション!

 トランプ2.0、台湾有事、「北」の挑発…リアルな危機から、この国を守るのは誰か?政権は5年間で防衛予算倍増を掲げたものの、財源問題の出口は見えなかった。防衛省はこの機に設備増強を主張し、財務省は財政規律を譲らない。政治家は選挙を恐れて増税に及び腰だ。頼みの在日米軍が対中国に重心を移そうとする最中、その事故は起きた。台湾軍の潜水艦と日本の漁船が衝突、沈没。現場に集結してきたのは中国海軍の艦船!この危機に、北京滞在中の与党総務会長・都倉響子の決断は?彼女の行動は、この国の未来と安全に、何をもたらすのか。安全保障を「税」から問う圧倒的長編ポリティカル・フィクション。

 本書は、現代社会の「情報と国家の危機管理」を鋭く描いた社会派サスペンス。物語は、感染症の再流行という国家的リスクに直面した日本を舞台に、官僚、政治家、医療従事者、そしてメディアがそれぞれの立場で奔走する姿が描かれ、危機にどう対応するか、誰が責任を負うのか、そのの裏で働く人々の葛藤や権力の思惑がリアルに浮き彫りになっています。現実に起こりうる警鐘として読む者に強い問題提起を投げかけ、パンデミック後の社会をどう生きるべきかを考えさせられる、重厚で読み応えのある一冊です。

【満足度】 ★★★★☆
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2026年01月06日

『青の純度』篠田節子

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青の純度 [ 篠田 節子 ]
価格:2,420円(税込、送料無料) (2026/1/6時点)




 煌びやかな「バブル絵画」の裏に潜んだ底知れぬ闇に迫る、渾身のアート×ミステリー大長編!

 その「青さ」は、本物か……? 最年少で管理職となり、仕事一筋で駆け抜けてきた編集者・有沢真由子。五十歳の誕生日を迎え、つかの間の息抜きに訪れたリゾートホテルで、彼女は一枚の絵画と出会う。ジャンピエール・ヴァレーズ……バブルの時代に煌びやかな海中画で大衆の心を掴み、一方で当時悪質商法が話題にもなった、“終わった画家”。かつて鼻で笑っていた彼の絵に、不覚にも安らぎを覚えた真由子だったが、ほどなくして都内の外資系ホテルでヴァレーズの原画展が行われるという情報を得る。なぜ今再び、ヴァレーズなのか? かつての熱狂的ブームの正体とは? 違和感を手繰り、真由子は単身ハワイの地を目指す……。

 本書は、華やかなアートブームの裏側にあった、人間の欲望と倫理の欠如を描き出すミステリ。美術的価値ではなく、投機対象やインテリアとして絵画が扱われたバブル期の特殊な空気感がリアルに描写され、ものづくりの純度やアートに関わる人々の倫理観が根底にあるテーマでもあります。バブル期のアートブームの光と影、そして創作の真価を問う、読み応えのあるミステリで、多くの欺瞞の果てに、ただ描くことに向き合い続けた一人の画家の作品が、すべてを浄化するかのような美しい余韻とともに幕を閉じますが、読み応えある作品でした。

【満足度】 ★★★★
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2026年01月05日

『運命の終い』奥田亜希子

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運命の終い [ 奥田 亜希子 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2026/1/5時点)




 生花店パート勤務の彩香は30代で未亡人となった。教師だった夫との恋を運命と信じていたがすべてを失い、『もう運命なんて信じない』と無味乾燥な毎日を送っていた。しかし突如、衝動的に「雑な大人の恋愛」をスタートすることに。程よい距離感、大人のルールを決めて始まった大人の恋の行方は。

 花屋でパート勤務をしている主人公の彩香は、30代で未亡人となった。高校生の頃恋焦がれた20歳以上年の離れた数学教師との出会いを運命と信じ、想い続け、卒業後に2人は結ばれた。娘も授かり幸せな生活を送っていたが、その最愛の夫はガンで他界。当時の彩香にとってすべてだった夫。喪失感を抱え「もう運命なんて信じない。ロマンも要らない」とすべてを諦めて暮らしていたが、ある日、自分が失ってきたものの大きさに気づく。そして、焦燥感にも近い熱い衝動から偶然出逢った男性・今井と「雑な大人の恋愛」をすることに。ほどよい距離感と大人のルールを決めて始まった二人の恋。だが、徐々にその関係性は歪に綻び始める。お互いを、「運命の果てに立ち尽くしていた者同士」と実感していたはずだったが、徐々に彩香の心には違和感が生じる。そして今井にも、打ち明けられずにいた「真実」があった……。

 本書は、若くして結ばれた夫を失った主人公・彩香が「運命」や「ロマン」を手放し、大人の「雑な恋愛」を通して自分の生き方を問い直す現代の大人向け恋愛小説。ロマンや劇的な情熱ではなく、距離・条件・合意といった現実的な側面を中心に据えた“雑で実利的な恋愛”の光と影が丁寧に掘り下げられ、主人公の内面の喪失感・焦燥・戸惑いが細やかに描かれます。

【満足度】 ★★★★
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2026年01月03日

『ワイルドサイド漂流記』國友公司




 歌舞伎町、西成、インド、モンゴル。行く先々で、衝撃的な出来事に次から次へと巻き込まれる。旅の途中で出会うのは、なぜか決まってラスボス級にパンチの効いた人間ばかり…。命知らずの取材に基づく危険な体験談を綴る。

 歌舞伎町、西成、インド、モンゴル……行く先々で、衝撃的な出来事に次から次へと巻き込まれる。旅の途中で出会うのは、なぜか決まってラスボス級にパンチの効いた人間ばかり。時に命すら危険に晒し、「こんなはずじゃなかったのに……」と愕然とすることもしばしば発生。しかし、カオスで制御不能な状況であればあるほど、面白がって最終的にはすべてを人生の糧にしてしまう。気づけばワイルドサイドを全力疾走している著者のタフな野次馬精神が生んだ、大いに笑えてパワーがみなぎるエクストリームなエッセイ集。

 本書は、歌舞伎町や西成、さらにインドやモンゴルなど海外も含めて、著者が足を運び、出会い、遭遇した激しくて濃い体験を綴ったエッセイ集。歌舞伎町・西成・インド・モンゴルといった場所が、単なる背景ではなく“活きた舞台”として描かれており、「この街ではこういうことが起きる」というリアル感覚が伝わってきます。危険な体験や過激な登場人物が次々と出てきますが、読み物として楽しめた一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2026年01月02日

『ルポ M&A仲介の罠』藤田知也

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ルポ M&A仲介の罠 [ 藤田知也 ]
価格:2,090円(税込、送料無料) (2026/1/2時点)




 日本経済の救世主か?稀代の詐欺師か?今日も中小企業は、喰いものにされる。朝日新聞デジタルの人気連載に大幅加筆、書籍化!外れない経営者保証、抜き取られた現預金、借金だけ残して音信不通に―知らないと危なすぎるM&A、そのトラブルの全貌。雇用を守るつもりが一転…あなたの会社は大丈夫?事業承継の闇をぜんぶ暴く!

 本書は、中小企業の事業承継ブームの裏で広がる“M&A仲介業者の不正やトラブル”を追ったノンフィクション。仲介手数料を優先して経営者を追い詰める実態や、情報の非対称性を悪用する業界の問題を具体的な事例で告発。M&Aの光と闇をリアルに描き、企業売却を考える経営者や関係者に警鐘を鳴らす一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2026年01月01日

『山でヒグマに遭わない・死なない観察力』稗田一俊/長谷智恵子




 自然写真カメラマン稗田一俊さんの撮影写真をメインにしたヒグマの生態解説本。

 北海道の森林深層部での豊富な踏査経験をもつ著者が、多数の写真を活用し、本来のヒグマの「素顔」と生態、そして地域の「ヒトとクマの日常」にまで迫ります。圧巻は「ヒグマのうんち」と「ウンチク」をかけたユニークな巻頭章。ヒグマのうんちには、さまざまな「情報」が詰まっており、それを読み取ることでヒグマの生態がわかるとともに、ヒグマとの不測の事態=ばったり遭遇を避けられるといいます。このほか、さまざまなヒグマのフシギな行動や生態、ヒグマを避けるためのヒント、身近にヒグマがいる人たちの日常、北海道行政のヒグマ対策についてなど、多角的な視点で構成された内容から「北海道のヒグマの現在」も見えてきます。フィールドワークではヒグマとの遭遇はつきものという著者が、「ニュースで報道されるヒグマの情報しか知る術のない人たち」に、「ヒグマは本来どんな動物なのか」を伝えたい思いを込めました。ヒグマの生態や行動、食性などを学び、ヒグマ遭遇のリスクを下げるための一冊です。

 本書は、北海道の森林奥地で豊富なフィールドワーク経験を持つ著者2人が、アウトドア愛好者(登山・釣り・キャンプなど)に向けて、ヒグマと 遭遇しない・命を守るための観察力を養うことを目的にした実用書。特に「ヒグマの糞(うんち)」を手掛かりにその生態や痕跡を読み取るユニークな章があり、そこからヒグマの動きや居場所・行動パターンを把握し、遭遇リスクを下げようというアプローチが取られています。登山・トレッキング・釣り・キャンプなど、北海道をはじめヒグマが出る可能性のある山域でのアウトドア活動者には、「山へ行く前に知っておきたい」情報源として価値ある一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月31日

『まちづくりを仕事にする 事業と人を支え、伝え、つなげるしくみ』全国タウンマネージャー協会・編著




 まちに活動の連鎖を生み出すタウンマネージャー。その苦悩と決断を通して、まちづくりのノウハウを提供するとともに、厳しい状況下でも人をつなぎ、活動や事業を増やす仕組みについて、その道のプロが実例とともに紹介する。

 まちに活動の連鎖を生み出すタウンマネージャーが各地で活躍している。事業の組み立て方やスタッフのモチベーション維持・向上、波及効果の検証まで、まちづくりのノウハウはもちろん、実践者たちの苦悩と決断を通して、人をつなぎ、まちに活動や事業を増やすしくみのつくり方を、その道のプロが実例とともに紹介する。

 本書は、少子高齢化や地域衰退という複雑な課題に直面する中で、「まちづくり」を単なるボランティアではなく、「仕事」として成立させ、持続させるための具体的な方法論を紹介した一冊です。特に、多様な関係者(行政、住民、事業者など)の間に立ち、事業・人・情報を「支え、伝え、つなげる」役割を担う、多種多様なタウンマネージャーや地域人材の活動事例を通じて、そのスキルと役割を浮き彫りにしています。情熱や善意だけでは続かないという現実を踏まえ、「まちづくり」を持続的な事業として成り立たせるための仕組みや収益性の視点を提示しており、社会の基本的なニーズに応えるという視点から、まちづくりの仕事の安定性や重要性を解説しており、キャリアを考える人にとって参考になる内容で、事例を通じて具体的に示しています。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月30日

『ミャンマー、優しい市民はなぜ武器を手にしたのか』西方ちひろ




 自由と人権を取り戻す!闘う人々の声を追った稀有な記録。

 ミャンマーの軍事クーデター後の1年間、目の当たりにした民主化闘争を、市民の声を丁寧に掬い上げ、リアルタイムで綴った稀有な記録。選挙で民主主義政党に大敗したミャンマー国軍は、2021年2月、軍事クーデターを起こし全ての国家権力を握った。民意で選ばれた議員たちは拘束され、ミャンマーの人々は数年前にようやく手にした民主主義と自由を奪われる。市民は最初、徹底した非暴力で抵抗を示した。しかし軍はそんな市民たちを虐殺し始める……。国際協力のためにヤンゴンに住んでいた著者は、ミャンマー市民の闘いぶりをSNSで発信した。自由と民主主義を取り戻そうと奮闘する人々のひたむきな想いを、一人でも多くの日本人に伝え、ミャンマー市民とともに立ち上がってくれる人を増やすために。闘いはまだ終わらない。終章には軍に抵抗する民主派の武装組織の兵士たち、日本で働く人たちの言葉なども掲載。ミャンマー市民たちの今を伝えている。

 本書は、2021年2月に起きたミャンマー軍事クーデター以降の約1年間を、著者が現地で目の当たりにし、市民たちの声を丁寧に拾い上げたルポルタージュで、民主主義政党の圧勝を受けていたはずの国軍が国家権力を掌握し、多くの市民の自由が奪われた現状が描かれています。最初、市民は徹底して非暴力で抗議し、「お金はいらない。僕らがほしいのは人権だ」などの言葉で抵抗を示しましたが、国軍側の弾圧・虐殺が強まる中、優しい市民がなぜ武器を手にするに至ったか、その変化の背景や葛藤が掘り下げられています。現地で暮らして発信を続けてきた著者だからこそできる、臨場感ある記録でもあります。

【満足度】 ★★★★☆
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2025年12月29日

『プロ視点の野球観戦術 戦略、攻撃、守備の新常識』宮本慎也




 送りバントと強打、戦術的に正しいのは? 最強打者は何番に置くべき? 打率とOPSでわかるもの。データで読み解く、野球の新常識。

 「日本野球の当たり前」を再定義。守備の名手が解く、野球進化論。名手・宮本慎也が、データと経験に裏打ちされた視点で「戦略としての野球」を徹底検証する。送りバントの是非、2番打者の最適解、打率信仰の落とし穴、得点と失点のバランス、さらには高校野球のルールや用具の問題まで。日本野球が抱える“思考停止”をあぶり出し、勝つための視座を提示する。技術論だけではなく、戦術と構造の議論へ…。観戦の視点が変わり、野球がもっと面白くなる、新時代の必読書。

 本書は、元プロ野球選手で守備の名手でもある父著者が、豊富な現場経験と最新データ分析を融合させ、「観戦者」「指導者」「選手」それぞれの視点から野球の常識を問い直す一冊で、送りバント、打順、得点と失点のバランス、守備技術など、従来当たり前とされてきた事柄をデータ・経験から再検証しています。試合の裏側・戦略的な読み、日本野球と海外野球の比較や、日本の野球文化の思考停止への問題提起にも触れていて、プロ野球ファンとして読み応えがありました。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月27日

『HIPS 機械仕掛けの箱舟』岡崎琢磨

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HIPS 機械仕掛けの箱舟 [ 岡崎琢磨 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/12/27時点)




 すべての会員を監視下に置き、経済活動と財産の所有を禁止するかわり、健康で文化的な最低限度の生活を保障する扶助団体HIPS。完璧に見えるAIの管理。待つのは成功か、それとも破滅か…。『ジャーロ』連載を単行本化。

 HIPS。それは、経済が停滞した日本に生まれた、前代未聞の扶助団体。すべての会員を監視下に置き、経済活動と財産の所有を禁止するかわり、健康で文化的な最低限度の生活を保障するというHIPSは、あらゆる会則をAIに委ねている。平和的な団体であるはずのHIPSだが、かつてない理念と道徳観は多くの市民に疑念や嫉妬、恐怖を抱かせる。人々を惑わせるHIPSの周囲では、数々の不穏な事件が巻き起こる。完璧に見えるAIの管理。待つのは成功か、それとも破滅か…。本格ミステリの注目株、全身全霊の意欲作。

 本書は、労働を禁止し一定の生活を保障する扶助システム・HIPSにまつわるミステリ集。システムが崩壊に向かってしまう過程や人間ドラマは興味深かかったですが、スケールの大きい近未来ミステリだったものの、粗い部分が多く、作品としては今一つでした。

【満足度】 ★★☆
ラベル:岡崎琢磨
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2025年12月26日

『ブレイクショットの軌跡』逢坂冬馬

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ブレイクショットの軌跡 [ 逢坂 冬馬 ]
価格:2,310円(税込、送料無料) (2025/12/26時点)




 自動車期間工の本田昴は、2年11カ月の寮生活を終えようとしていた。最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。見過ごせば明日からは自由の身だが…。

 底が抜けた社会の地獄で、あなたの夢は何ですか?自動車期間工の本田昴は、Twitterの140字だけが社会とのつながりだった2年11カ月の寮生活を終えようとしていた。最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。見過ごせば明日からは自由の身だが、さて…。以後、マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽、そしてSNSの混沌と「アフリカのホワイトハウス」…移り変わっていくブレイクショットの所有者を通して、現代日本社会の諸相と複雑なドラマが展開されていく。人間の多様性と不可解さをテーマに、8つの物語の「軌跡」を奇跡のような構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作。

 本書は、自動車工場の期間工、アフリカの若き兵士、タワマンに住む成功者、善良なる板金工、サッカーで夢を追う少年たち、追い詰められた会社員…など、何のかかわりもない全く別々の世界で生きる8人の登場人物たちが、ブレイクショットという一台のSUV車で繋がっていく物語。それぞれの背景も現代社会の問題点がしっかり描かれ、関係ないような展開が終盤に見事に繋がり、伏線が回収される様は見事な構成で、読み応えあるエンタメとして楽しめました。

【満足度】 ★★★★☆
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2025年12月25日

『地域戦略の考え方』宮崎雅人

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地域戦略の考え方 (ちくま新書 1880) [ 宮崎 雅人 ]
価格:990円(税込、送料無料) (2025/12/25時点)




 地域衰退の悪循環を断ち、幸せな暮らしを実現するにはどうしたらいいのか。観光立国や先端産業に夢を見ず、今後も地域に根付いていく産業のつくり方を提示する。

 本書は、少子高齢化や基盤産業の衰退によって悪循環に陥っている日本の地域経済の衰退を食い止めるための、持続可能な戦略を提示する経済学の視点に基づいた一冊です。インバウンド頼みの「観光立国」や、非現実的な「先端産業育成」といった路線を批判し、地域に根差した「みんなの豊かさ」を実現するための具体的な方策を理論と事例に基づいて解説しています。これまでの「地方創生」や「観光立国」といった政策が、低賃金労働や地域のリソース格差を無視した持続可能性のない戦略であることを明確に指摘し、「誰のための対策か?」という根本的な問いを投げかけ、目先の経済効果ではなく、地域住
民の豊かで幸せな暮らしを目的とするべきだと主張しています。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月24日

『最新 日本酒の科学 水・米・麹の伝統の技』和田美代子




 「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録! 水と米から造られ、かくもバラエティ豊かで芳醇な味を持つ日本酒。その科学に迫る。

 「國酒」として長く親しまれ、いまや“SAKE”として世界にも広がる日本酒。水・米・麹というシンプルな原料から生まれる味わいは、実に奥深く、多彩な表情を見せてくれます。その陰には、微生物たちの繊細な働きと、日本の伝統、自然の恵み、そして緻密な醸造技術があります。本書を読めば、「甘口か辛口か」だけでは語れない、日本酒の真の魅力に出会えるはずです。

 本書は、科学的な視点から、日本酒がどのように造られ、どのような魅力を持つのかを詳細に解説した一冊です。原料である水・米・麹の秘密から、微生物(麹菌、酵母など)の繊細な働き、そして伝統的な醸造技術の裏にある化学的なメカニズムを分かりやすく解き明かします。酒米と仕込み水の個性、麹と酵母の役割などの伝統技法の科学的な意味合いなど、日本酒の製造に関する専門的な内容が、平易な文章で解説されているため、初心者でもスムーズに読み進められ、「甘口か辛口か」だけでは語れない、日本酒の香り(吟醸香など)や味の複雑なバラエティが、どのような化学成分から生まれるのかを学べます。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月23日

『総合診療医が徹底解読 健康診断でここまでわかる』伊藤大介




 血圧、血糖値、コレステロール……健康診断を活かせていない人があまりに多い! 深刻な病気を防ぐための画期的な活用術を徹底紹介。

 ほとんどの人が活かしきれていない…。深刻な病気から生活上の悩みに至るまで、年間3万人の患者を診察する人気の総合診療医が、「がん」「心筋梗塞」「脳卒中」などを防ぐ画期的な健康診断の活用術をわかりやすく紹介する。

 本書は、多くの患者を診察する総合診療医である著者が、健康診断の結果を「宝の地図」として最大限に活用する方法を解説した一冊です。単にA〜E判定に一喜一憂するのではなく、各数値の本当の意味と、それを元に深刻な病気を防ぐための具体的なアクションを、最新のエビデンスに基づいて紹介しています。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月22日

『生成AI時代にこそ学びたい自分で文章を書く技術』松井謙介




 生成AIには書けない、“全人類執筆者時代”を生き抜くための文章作成ルールブック。

 生成AIの進化により、議事録やレポート、マニュアルといった事務的な文章は効率的に自動化できるようになりました。しかしビジネスの現場では、それだけでは不十分。企画書や提案書、人材募集文、オウンドメディアの記事など……人の感情を動かし、行動へとつなげる文章には、書き手自身の思考や意見、そして「相手にどう動いてほしいか」という意図が不可欠です。最新のAIは流麗な文章を生み出し、表現力も増しています。しかし、「誰に向けて、何を伝えるのか」という視点は、人間にしか持ち得ません。読み手を意識し、関係性を踏まえて言葉を選ぶことこそが、成果を生む文章の鍵なのです。本書では、生成AI時代にあっても欠かすことのできない「自分で書く力」を、実践的かつ最新のテクニックとともに解説。あなたの仕事に直結する「伝わる文章術」をお届けします。

 本書は、生成AIが急速に普及する今、人間がどのように自分の言葉で考え、伝える力を保つべきかを丁寧に解説した実践的な指南書で、著者は、AIが生み出す文章は一見うまく整っていても「自分の思考」や「感情」が欠けていると指摘し、人間が文章を書く意義を「自分の頭で考え抜き、相手に伝える行為」にあると説き、テーマ設定、構成、語彙の選び方、読者を意識した表現法など、具体的な文章術も多数紹介しています。さらに、AIを“書くための補助ツール”としてどう活かすかについても現実的に示されていて、参考になる一冊でした。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月20日

『相馬眼が見た夢』河村清明




 なぜダービーを勝てなかったのか。なぜこんなにも愛されたのか。“マイネル軍団総帥” 岡田繁幸の生涯に迫ったノンフィクション。

 マイネル軍団総帥、反骨の71年。競走馬に狂う人たちの魂に届くノンフィクション。なぜダービーを勝てなかったのか。なぜこんなにも愛されたのか。コスモバルク、ステイゴールド、ゴールドシップ、サイレンススズカ、マイネルラヴ、スーパークリーク、ウインブライト、ナリタブライアン、グランパズドリーム、ユーバーレーベン…名馬との秘話が明らかに!

 本書はサブタイトルに「岡田繁幸がサンデーサイレンスに刃向かった日々」とありますが、「マイネル軍団総帥」として知られ、独自の相馬眼で多くの活躍馬を送り出した競馬界の風雲児、岡田繁幸氏の波乱に満ちた生涯を描いたノンフィクション。特に、日本の競馬界を席巻した大種牡馬サンデーサイレンスに刃向かい、独自の路線で良血馬に挑み続けた反骨の生き様に焦点を当てています。競馬界の発展に心血を注ぎ、業界を盛り上げようとしたその生き様、ライバルである社台グループとの因縁、サイレンススズカやナリタブライアンを巡る秘話、ステイゴールドやゴールドシップを種牡馬として獲得した舞台裏など、競馬史に残る出来事の裏側が明かされています。他にも、日本ダービー2着のグランパズドリームの悲劇や、岡田兄弟の物語など、知られざる人間ドラマが胸を打つ感動の競馬ノンフィクションです。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月19日

『13月のカレンダー』宇佐美まこと

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13月のカレンダー [ 宇佐美 まこと ]
価格:2,200円(税込、送料無料) (2025/12/19時点)




 亡き祖父母の空き家相続を持ちかけられ、松山を訪れた侑平。祖父の書斎には13月まである不思議なカレンダーと、脳腫瘍を患った祖母の病状を綴ったノートが。侑平は祖母が広島出身だと知り…。『小説すばる』連載を単行本化。

 両親の離婚以来、疎遠だった父方の亡き祖父母の空き家相続を持ちかけられた侑平は、15年ぶりに松山の地を踏んだ。そして祖父の書斎にあった書類の中から、13月まである不思議なカレンダーと、脳腫瘍を患った祖母の病状を綴った大学ノートを見つける。読み進めるうち、侑平は祖父母のことを何も知らなかったという事実に消沈し、さらに祖母が広島出身で、その兄は原爆で亡くなっていたということを近所の人から初めて知らされる。2人を知る関係者に会うため広島へと赴いた侑平。そこで語られた、原爆投下前後の真実とは…。

 本書は、「存在しないはずの13月」をめぐって展開する、時間と記憶をテーマにした幻想的な作品。ある日、カレンダーに“13月”の記載を見つけたことから、主人公は現実とは少しずれた不思議な世界へと引き込まれていきます。そこでは過去に失われた人々や、置き去りにした感情が再び現れ、時間の流れや人生の意味を静かに問いかけてきます。物語はミステリーの要素を含みながらも、焦点は「人の記憶と喪失」「再生の可能性」にあり、美しい筆致と静謐な世界観で、読者に“もし時間をやり直せたら”という想像を促しつつ、最終的には「今をどう生きるか」という普遍的なテーマへと導きます。幻想文学としても、人生の物語としても心に残る一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月18日

『飼い犬に腹を噛まれる』彬子女王/ほしよりこ

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飼い犬に腹を噛まれる [ 彬子女王 ]
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 私は自他共に認める事件体質である。ささいなことから、めまいがするような大事件まで、日常的にいろいろ起こる−。彬子女王殿下のエッセイ集。ほしよりことのスペシャル対談も収録。『京都新聞』連載他を加筆・補整。

 本書は、皇族という特別な立場に生まれた著者が、信頼していた人に裏切られた経験をきっかけに、「人を信じること」「公と私のはざまで生きること」を深く見つめ直したエッセイ。身近で信頼していた人物からの裏切りによる心の痛みを率直に語りつつも、単なる告白や批判ではなく、人間関係の難しさや誠実であることの意味を静かに問いかけており。皇族としての務めや日常、研究者としての姿勢、そして一人の人間としての悩みや孤独も丁寧に描かれています。華やかさの裏にある人間らしい苦悩と誠実な言葉が響く一冊です。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月16日

『コロナ後遺症 治らない“慢性不調”の正体』平畑光一




 動けないほどの疲労、いつまでも残る体の痛み…。コロナ後遺症患者を診続けた医師が、コロナ後遺症の概要、考えられる原因、行っている検査、日常生活での注意点、東洋医学を含む治療法、セルフケアを分かりやすく解説する。

 医者に行ってもはっきりしないこんな症状、ありませんか?「動けないほどの疲労」「気持ちの落ち込み」「いつまでも残る体の痛み」…。コロナ後遺症患者を診続けた医師からの最新報告!劇的に回復を見せたセルフケア法も紹介!

 本書は、は、コロナ感染後に続く「倦怠感」「息苦しさ」「脳のもや」などの原因と治療の実態を、医師の臨床データと患者の声を交えて解き明かす一冊。ウイルス後遺症だけでなく、自律神経や免疫の乱れなど複合的な要因を丁寧に説明し、「見えない不調」に苦しむ人への理解と希望を与えてくれます。

【満足度】 ★★★★
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2025年12月15日

『教養としてのコーヒー』井崎英典

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教養としてのコーヒー (SB新書) [ 井崎英典 ]
価格:1,045円(税込、送料無料) (2025/12/15時点)




 アジア人で初めてワールド・バリスタ・チャンピオンシップで優勝した、世界一のバリスタ(第15代ワールド・バリスタ・チャンピオン)が歴史、地理から時事問題、嗜み方まで、コーヒーの教養を1冊に詰め込みました。

 読むほど深いコーヒーのめくるめく世界。人はなぜこんなにもコーヒーを愛してやまないのか。秘密を解き明かすべく、アジア人初のバリスタ世界チャンピオンの著者が歴史から現代コーヒービジネスの最前線まで案内。100円台で買えるコンビニコーヒーもあれば、至高のスペシャルティコーヒーもある。マスターのこだわりの一杯もあれば、家で思い思いに楽しむ一杯もある。世界第4位の消費量を誇るコーヒー大国日本の深みを知る一冊。

 本書は、世界的なバリスタとして活躍する著者が、「コーヒーとは何か」を歴史・地理・文化・ビジネス・抽出技術など多角的に捉え、「一杯のコーヒーをもっと味わい深くするための教養」に位置づけた一冊。「なぜ日本ではドリップが主流か」「気候変動でコーヒー栽培に危機が迫る」など、身近な飲み物であるコーヒーを通じて世界が見えてくる構成で、コーヒーを「嗜好品」だけでなく、「世界史」「産業構造」「地政学」といった教養の視点で捉え直し、コーヒー文化の時代的な変遷、日本独自の喫茶文化など、豆知識としても楽しめました。

【満足度】 ★★★★
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